あの日、私は娘の腕や足に激しいリスカ跡を見つけてしまい
無知だった私は激しく怒り娘の頬を叩いてしまった。
目を丸くしてしばらくしてボロボロ泣き出す娘に私は更に追い打ちをかけた。
「あんたは自分の命を粗末にするほどバカなの?心底ガッカリするわ!」と。
いきなり怒鳴られ叩かれ娘はパニックだったに違いない。
黙って泣き続け、一人で部屋にこもり、夜に何とも言えない顔で
「さっきはごめんねもうしないから」と言った。
目が笑っていないのに口が笑ってる不思議な顔、今思うと最悪な顔だった。
その後私がお手洗いに行った一瞬で娘はいなくなった。
静かなので部屋に入ってみると誰もいなかった。
他の部屋にもいない。
呼んでも返事がない。
なのに、スマホもお財布も机に置いてあった。
スマホの下に走り書きの紙があり、そこに
「迷惑かけてごめんね、大好きだよお母さん、心配させてごめんね」
と書かれていた。
もう何年かたつのに、いまだに思い出したくない。
バカなのは私の方だ。
街灯の無い裏道から手あたり次第30分ほど探し回ったけど娘の姿を見つけることは
できなかった。
家に戻り警察に電話し捜索願を出し、スマホを提出しSNSの開示要請をした。
その日は警察犬も出してもらったけど、駅の前で臭いは途切れていたと聞いた。
夜中まで駅の近くの公園やコンビニを泣きながらウロウロ出て行く私の姿はきっと
誰が見ても異様だったと思う。