恋するオタク 34
指が肌の少し上を滑るように動き、慣れた仕草で、俺の身体を計っていくメジャーの少し硬くて冷たい感触と、大野さんの指先が、胸や肩にそれとなく触れて・・「・・・っ、ぅ・・」思わず漏れ出た声を、大野さんは聞き逃さず、照れ臭げに笑った。「服・・着たらだめですか」駄目だよ、とあっさり返された。俺は今、パンツ一丁でこの人の前に立っている。「服作り・・続けてたんですね」俺はまた、服のモデルをやることになった。初めてこの家に来た時と同じ。ただ違うのは、あの時この家には既に服が沢山あって、俺がファッションショーをやったってこと。「・・作りたいものが無くなった時は、やめてたよ。でも・・ニノ、痩せたね・・」ウエスト周りを計りながら言われた。添えられた手が・・優しく、労わるように撫でてくれた。実を言えば、仕事が忙しくて、食べれなかっただけなんだけど・・得したかも、なんて思えた。こんな風に扱ってもらえるなら、さ。・・ナイス。俺の腹。その気がある時より、明らかに無いと分かっている時の方が落ち着かない・・のは、なんでだろう始まるのがいつか、分からないから?それとも・・この人が、変わるところを見たいのか・・我慢できないくらい、自分のことが好きなことを、確かめたいのか・・「すげえ、きれい・・」そんな俺の邪な心も知らず、脇腹を撫でてくる。だから、その触り方が・・駄目なんだって。あなたの指の方が、よっぽど綺麗なのに・・「綺麗」ってワードが浮かんだら、邪な考えまで頭をもたげてきた。・・舐めたいな舐めたら、だめかな・・「ニノ。ちゃんと立ってて」笑いながら、ぺしっと、軽くお尻を叩かれた。思わず、別のとこが立ちそうになった。別にさ。俺が変なんじゃないよ。変なのはこの人の方。あの夜。俺は再び恋に落ち、めでたくお付き合い再開となったのに・・・まぁ、しない。キスがたまにあるのと、手を繋ぐくらいはある。でも、後はなんにもないなさ過ぎて、泣ける。まさか不能になったんじゃ、と心配にもなったけど、どうやら違った。大野さんは、俺の作ったゲームをやってみて、正しいお付き合いを学んだ・・らしい。直ぐに抱くのはナシ。エロく誘うのもナシ。「ニノのこと、大事にしたいから。ゆっくり、また始めよう?」始めからちゃんとやり直したいっていうのは、そういうのも、含めてってことだった。しかも、頑固。こうと決めたら譲らない。真面目っていうか、突き詰める性質っつうか・・オタク気質の為せる技だよなぁ・・おかげで俺は禁欲生活真っ只中。しかも、この人無駄にエロいから、すごい我慢大会をさせられてる気分。今だってそうだ。油断してたら、うっかり前を濡らしたり、立たせたりしそうで・・でも、それはそれで悔しい気がして、耐えている。仕事のこととか考えたり、ご飯何食べようかとか考えたり・・・・仕事・・か・・お休みシリーズの次のネタも考えないとな・・「・・・!」天からの啓示かまさしく、降りてきた。決まりだ。次のお休みシリーズは、エロゲー仕様だ。R18だ。ロマンチック路線は外さず、やることはやってやる・・!・・うん。いいじゃん。最近マンネリ化とか言われてたから、いい刺激になるかもしれない。もし上が文句を言うなら、ノーマルとエロゲーと分けて作ったっていいし・・そうとなれば、プロット作って、イラスト担当の悠さんに連絡して・・やる事だらけだ。「ニノ。嬉しそうだね」「ちょっとね。仕事の事だけど、いいネタが降りてきたから・・大野さんのおかげ。」「俺の?」なんで、って大野さんが嬉しそうに笑う。その笑顔が、俺を内側からじんわりと満たしていくのを感じながら俺も同じように笑い返した。…fin