在日コリアン2世は、1世や3世以降と違って複雑な思いを抱えて生きてきたらしい。1950年生まれの母の幼少期は、まだ差別も露骨で、自分が日本で生まれ育つことになった経緯を親は話してくれなかったそうだ。1世の祖父母は自らの足で日本に渡って来たし、故郷を知っている。3世の私はほとんど日本社会に同化してしまっていて、目立った差別もない。2世だけが、望んでもいないのに異国の地で生まれ、日本社会に同化しきることもできずに苦しんだ世代なのかもしれない。
母はキリスト教徒になった時、「国籍が天にある」という聖書の言葉に感動したそうだ。母が若い頃に書いていた児童文学にはどこか影があったが、晩年に書いた詩は明るいものが多い。私と母には、キリスト教信仰に対する思いの温度差がかなりあったが、母が自らの存在を前向きな気持ちで受け入れることができた背景にはキリスト教があったのだろう。
「アイデンティティ」
故郷を尋ねて
私は歩いた
時には迷い
時には出口のない
トンネルの中で
ひとりで
淋しくって
泣いた
あの頃
旅に出るように
音楽を聞き
故郷を探して
曲に聴き入った
バッハ
モーツァルト
シューベルト
ベートーベン
あの頃
旅路で出会った
詩集の本
文学書
故郷を探して
読みあさった
ゲーテ
マルクス
ヘッセ
リルケ
あなたを探して
私は歩いた
時には迷い
時には出口のない
トンネルの中で
ひとりで
淋しくって
泣いた
あの頃
言葉と音楽
思想と心
真理を探して
心に貯えた
感傷にふける
落ち葉を見ても
涙が溢れた
一枚の葉は
私の生命そのもの
多くの思想に
多くの教え
風が吹き
飛ばされそうに
なりながら
耐えた
あなたを探して
歩いた道で
何度も転んだ
故郷を尋ねて
私は歩いた
時には迷い
時には出口のない
トンネルの中で
ひとりで
淋しくって
泣いた
あの頃
故郷が
天国にあると
知った驚き
傷つき
薄汚れた
私を照らす
イエス・キリストの
光
キリストのいのち
風が吹き
雨が降り
嵐に見舞われ
雪に閉じこめられ
助けを求めて
泣き
叫んだ
あの頃
出会えてよかった