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エピローグ「黒い雄鳥」

危険性が問題視され、次世代型のエッグは破棄された。
その後、旧式のエッグにも、あまりにも危険が伴うゲームということで、数年後には全てサービス停止してしまった…残念だけど…あの黒い卵からは、良い雛鳥は産まれて来ない。卵の中にこもりきり、仮想空間という夢を見続け、現実という空を生涯飛べない鳥しか産まれないのだ。
 学園長こと、黒井鳳凰子は責任をとって辞任…でも本人はすっきりしたようだ。
 日本を離れ、どこか旅をしているらしい。黒い卵から出た黒い雌鳥はあまりにも飛ぶのが下手で、餌の取り方もわからない…けどいつか同じようにぎこちなく、でも一生懸命に羽ばたいている黒い雄鳥と出会える日が来るはずだ。
 科学部の部長こと、黒井烏子(くろいからすこ)さんは学園長になって多忙な日々を過ごしている。あの人ならきっと大丈夫だろう。器量も度胸もある。この学園のいい指導者になれるはずだ。
 僕は泣きながら復縁を懇願してきた黒井鳩子と仲直りした……実は烏子さんを手当てしたのは、鳩子だったのだ。
やっぱりこの子は見捨てられない。口うるさいけど、可愛い幼馴染だからな。
烏子さんにも鳩子のことをよろしくと頼まれた。皮肉にもそれは、僕の初めての失恋だった。
でも泣かなかった。
 そして蓮さんは…
 ガチャガチャ!
 ガチャガチャ!
 ダン!
 ガチャッ!
「甘い甘い!そこはカウンターだぜ!」
「蓮さん、コマンド入力がめちゃくちゃですね!」
 僕たちは、ゲームセンターで格闘ゲームを対戦していた。
 蓮さんは、新人の声優さんとして活躍するオガサワラさんのマネージャー兼恋人未満として、ゲームセンターでプロゲーマーを目指して入り浸っていたのだ。
「しかし、なぜ蓮さんは飛び降りたのに平気だったんですか?」
「……下がプールなんだよ…あそこ」
「それにしたって…」
「高飛び込みの世界記録は60メートルくらいらしいぜ。」
「あれは水泳のプロがやるものでしょう!」
「俺は元々、水泳部だぜ?小学生二年生から。留年して挫折したけど。あの程度の高さから飛び降りたってなんともないんだよ、ああ、良い子も悪い子も、絶対に真似しちゃダメだぞ!」
「そうだったんですかあ」
「それに…寝ている俺の身体がなまらないようにリハビリしてくれてる幼なじみがいたしな…」
「…本当は?」
「着水前に、オガサワラちゃんが起こしてくれたよ。」
「やっぱりね・・・」
僕は蓮さんの操るキャラクターを軽く捻りつぶした。
蓮さんはゲーム歴は長いけれど、悲しいほど弱いのだ。
なぜなら、ガチャプレイヤー、つまるところ、コマンド入力を適当に行う、素人同然のプレイヤーなのだ。
「かーーっ、負けたあ!」
「蓮さん…」
「ああ?」
「蓮さんにとってゲームってなんでしょうか…」
「思いをぶつける場所かな…格ゲーであれ、ダンスゲームであれ、メダルゲームであれ、プレイヤーの気持ちが無いと、ゲームは楽しめない。」
蓮さんらしい答えだった。
この人は、僕なんかよりもずっと昔からゲームセンターにいる。ゲームそのものの歴史を見てきたようだった。
「ねえ蓮さん…エッグって一体なんだったんでしょうね…」
蓮さんは、うーんと少しだけ考えて、目を細めて呟いた。
「俺はさ…エッグは、悪いゲームじゃあなかったと思うぜ…そりゃあ、エッグには逆に遊ばれたという感じもしないでもないが……でもそれはエッグだけじゃあないんだ。俺たちは、ゲームで遊んでいる反面、ゲームに遊ばれているんだからな…結局のところ、どんなゲームでも良いところも悪いところもあるんだよ…それを生かすも殺すも、それはプレーヤー次第だろう」

「とにもかくにも、ゲームっていうのはさ!楽しんでプレー出来れば、それが一番じゃあねえかな…!」
「そうですよね!」
蓮さんらしい言葉に僕は笑って答えた。
もう主人公代理は、僕は降りたよ…蓮さんの言葉にすべてが集約されているのだから…僕が語る必要はないのだ。
今回、僕らはゲームによって多くを学んだ。
危険なこともあったが、ゲームだって悪いもんじゃない。その魅力は無限大なのだ。
僕は蓮さんの肩にもたれかかった…
「ああっ!!!また負けた!きたねえな!ハメ技ばっかり!」
「蓮さんはあまりにも技コマンドを知らなすぎるんですよ…それじゃプロゲーマーなんて難しいです!」
「どんなスタイルでも勝てばいいんだよ!●メハラだって目じゃあねえ!」
「ところで、いつからガチャプレーヤーなんですか?」
「初代●狼からずっと!」
「あちゃー……」
僕らは日が暮れるまで格ゲーで戦った。
蓮さんがプロゲーマーになる日は、あまりにも遠く感じた。