この『天然生活』

もう五年くらいになるでしょうか

母が緩和ケア病棟に入院していた時
病棟の談話室の本棚で出会いました

派手ではないけれど 
ページをめくるたびに
ゆったりとした時間が流れ

母の付き添いと
違う病院に入院中の父の事とで
体がふたつあっても足りないような生活をしていた私を
一瞬、違う世界へ連れて行ってくれたのを覚えています

たまに行く書店で目にしながら
今まで買うことはありませんでした

この雑誌が連れて行ってくれたようなゆったりとした生活への憧れ

憧れが現実になる事の難しさ

その狭間の中で


手に取る事で心が揺さぶられる事をあえて拒否していたのかもしれません





ふつふつと湯気の上がる台所

冬は畑から取ってきた大根の土を洗い落とし
トントンと銀杏切りにし
おあげさんとのお味噌汁にしようか


夜は温かなみぞれ鍋にしようか

冬のひだまりの中で
手仕事をし

ゆったりとお茶を飲む





なんにもないようで
実はすべてがそこにあるゆったりとした時間


May さんのブログを読んで

私が欲しいと願うそんな時間を
そんな空間を
そんな世界を

思い出しました

たまたまスーパーの本売り場で見つけた時

これは神様からのご褒美ではないかと思うくらい喜ぶ私がいました


欲しいと願う気持ちを捨てなくていいよというMay さんからの
エールのような気がして


『天然生活』を手にした私は
まるで小さな子どもが
おもちゃを買ってもらったかのように
大切に大切に抱き抱え
家に帰りました


『天然生活』は台所のテーブルの上

私に忘れかけていたものを
思い出させる瞬間を



今か今かと待っていてくれています


足早に過ぎ去る日々が

恨めしいと
思ったあの日

秋桜咲き乱れた野原を横目に

いつの日かと
思ったあの日


待てば海路の日和あり



必ず巡る春夏秋冬

冬もまた楽し


きっと

楽し