暮れてゆく空を見ながら
母は
何を思っていたのだろう
茜色に染まる夕暮れも
母の目には
悲しい色でしか
なかったのだろう
できるだけの
ことをしたつもりだった
けれど
母の寂しさや不安を
埋めてあげることは
できなかった
何も言わずに
ただ一筋の涙を残し
母は逝った
どれたけ
悔やんでも
悔やみきれない思いを
私に残して
私を置いて
母は
逝った
その母が残してくれたもの
輝く石に
心惹かれた
母が集めたもの
オパール
アメジスト
ガーネット
妖しいほどの
輝きを放つダイヤモンド
そのひとつひとつに
母の歓びがあり
そのひとつひとつが
私に
母の笑顔を
思い出させてくれる
この石たちを
私は
手放そうかと
思っている
迷いもしている
母を捨てるようで
母に捨てられるようで
まるで
小さなこどものように
一人では
何も決められない私が
ここにいる
幾ばくかの金額になれば
私は
そのお金で
これからの人生の
最後の勉強をしようと
やりたい事を
やりたいと
夢を見る事を
あきらめていない
私に
戻るために
ただ
ひとつ
母がくれた
真珠の指輪
静かな
穏やかな
凛とした美しさを秘めた
この指輪だけは
いつまでも
私とともに
いつまでも
いつまでも