解説

『ゆれる』『永い言い訳』などの西川美和が脚本と監督を手掛け、佐木隆三の小説「身分帳」を原案に描く人間ドラマ。原案の舞台を約35年後の現代に設定し、13年の刑期を終えた元殺人犯の出所後の日々を描く。『孤狼の血』などの役所広司が主演を務め、テレビディレクターを『静かな雨』などの仲野太賀、テレビプロデューサーを『MOTHER マザー』などの長澤まさみが演じている。橋爪功、梶芽衣子、六角精児らも名を連ねる。

あらすじ

下町で暮らす短気な性格の三上(役所広司)は、強面の外見とは裏腹に、困っている人を放っておけない優しい一面も持っていた。過去に殺人を犯し、人生のほとんどを刑務所の中で過ごしてきた彼は、何とかまっとうに生きようともがき苦しむ。そんな三上に目をつけた、テレビマンの津乃田(仲野太賀)とプロデューサーの吉澤(長澤まさみ)は、彼に取り入って彼をネタにしようと考えていた。

西川美和監督の最新作公開だということで、どうしてもこれは観たいと思った。

主役は役所広司。役者としては文句なし。

今回は佐木隆三氏の「身分帳」というのが元ネタになっている。

人生の大半を刑務所で過ごした三上(役所広司)は身元引受人の庄司弁護士(橋爪功)と奥さん(梶芽衣子)に出所祝いをしてもらい、今後の生活について考えていく。どこかで仕事を探そうにも、まずは住所。

住処だ。これは弁護士家族に斡旋してもらったアパートを借りることにした。

出所して、社会にカムバックするドキュメントを作ろうとテレビ番組のスタッフ津乃田(仲野太賀)や

吉澤遙(長澤まさみ)らは三上に密着取材をしていく。最初は興味本位で取材をしていた津乃田だったが、

三上の一途な性格に惹かれていく。出所後の三上は、きちんとゴミの分別をしない若者らに苛立ち、トラブルに発展しそうになったり、ヤクザをしていたときにお世話になっていた組長の家にパトカーがとまっていることで行動を起こそうとしたり、周囲の支援者らに「ここは我慢だ、人生は我慢の連続だ」と

なだめられ、ぐっと堪える日々が続く。

仕事に必要である車の免許取得と仕事探しに奔走する三上。

出所後の社会は、三上にとっては生きづらい社会だった。

庄司弁護士の紹介で、介護施設のパートタイムの仕事につくが、そこで、知り合った同僚が、障がいがあるため、他の同僚から仕事の失敗で酷いいじめを受ける。その現場を見て見ぬふりをしたときに、発作が起き、持病の高血圧をおさえる薬を飲んで我慢した。

いじめられていた同僚からもらったコスモスの花をもって、うれしそうに帰って行く三上。そして元妻からの

電話もあり、人生、これからだというときに、三上は死ぬ。

その後、映し出される大空とタイトル。

三上にとって「人生はすばらしかったのだろうか?」と考えさえられてしまった。