mebiusu6
「そうか・・・」井戸を覗いた時強かに酔った幸太郎
は早瀬と、もつれるように井戸の中に落ちた後頭
部の傷はどうやらその時に付けたようだ
「早瀬さん?!」早瀬の姿を探す
「いて~な~くそ」後ろから声がした
「大丈夫ですか」
「ああ、くそ~頭がガンガンする・・何処だここ?」
周りを見渡す、遠くにそびえる山々の尾根、青々
と茂る草原、何処までも澄みきった紺碧の空に深
い緑の森が見える、暫し呆然とする二人の前に突
然数人の男達が現れた、楯に剣、槍を油断なく構
えていた、鎧らしき物を身につけ、頭には兜?
図書館で読んだ歴史の本に出てくるような
幸太郎は息を飲んだ「まさか?!」
「こいつら?・・・俺たち其れじゃ」早瀬にも解った
ようだ
「1500年を飛んだ・・・・・・てか?」
するとその中の一人リーダー格らしい男が前に出
「お前達は何者か?どうやってあの空から出てき
た」そう言いながらその手を上に向けた
男の言った言葉をとっさに理解できなかった
「空から出て来たァ?」上を見上げながら早瀬が
「お前達のその奇妙な、いでたちカヤトの兵では
無さそうだが・・」
「カヤト?其れじゃ貴方達はクマイの人達では」幸
太郎が男の話しを遮り聞き返した
「何故知っている!?」この奇妙ないで達の大男
の口からクマイの名が出た事で驚きの声をあげ
た
「其れじゃ、ヲネさんやスサも貴方達と一緒に?」
「お前達はいったい・・・・む~~!」男は他の男た
ちと何やら相談を始めた
「大丈夫か・・んな事喋って」早瀬が耳打ちした
「解りません」あっさりと返事をする幸太郎に
「おいおい解らないってお前」
「賭けですよ、元の世界に戻るには彼女ヲネさん
達の力を借りないと・・です」
「痛ッ!」幸太郎が後頭部をおさえた
「どうした?」早瀬が幸太郎の頭を見た
「怪我をしているのか?」先ほどの男が言った
「此れを付けると良い」と言いながら腰の袋から
薬草らしき物を差し出した
「すみません、有難う御座います」それを受け取り
傷口にすり込んだ、痛みが嘘のように治まってい
く
「一緒に来い、ただ未だお前達を信じた訳ではな
い少しでもおかしな真似をしたら」そこまで言うと、
男達の剣と槍が、幸太郎と早瀬の鼻先に突き付
けられた、鬱蒼とした森の中、獣道を周りを警戒
しながら進む、巨木があちら此方に聳え立つ樹齢
にしてどの位なのか大人7~8人が手を回しても
とどくかどうか
「すごいな~~」「なんだ?」後から付いて来てい
た早瀬が幸太郎のその言葉に前方に目を遣る
其処には巨木の中でもひときは大きな木がそ
びえていた
「どの位有るんでしょうね?」見上げた、まるで天
にまでとどいているのではと思わせるほどだ、巨
木を回り込むと断崖の壁にポッカリと大きな穴が
空いていたその穴の中から人が出てきた。
は早瀬と、もつれるように井戸の中に落ちた後頭
部の傷はどうやらその時に付けたようだ
「早瀬さん?!」早瀬の姿を探す
「いて~な~くそ」後ろから声がした
「大丈夫ですか」
「ああ、くそ~頭がガンガンする・・何処だここ?」
周りを見渡す、遠くにそびえる山々の尾根、青々
と茂る草原、何処までも澄みきった紺碧の空に深
い緑の森が見える、暫し呆然とする二人の前に突
然数人の男達が現れた、楯に剣、槍を油断なく構
えていた、鎧らしき物を身につけ、頭には兜?
図書館で読んだ歴史の本に出てくるような
幸太郎は息を飲んだ「まさか?!」
「こいつら?・・・俺たち其れじゃ」早瀬にも解った
ようだ
「1500年を飛んだ・・・・・・てか?」
するとその中の一人リーダー格らしい男が前に出
「お前達は何者か?どうやってあの空から出てき
た」そう言いながらその手を上に向けた
男の言った言葉をとっさに理解できなかった
「空から出て来たァ?」上を見上げながら早瀬が
「お前達のその奇妙な、いでたちカヤトの兵では
無さそうだが・・」
「カヤト?其れじゃ貴方達はクマイの人達では」幸
太郎が男の話しを遮り聞き返した
「何故知っている!?」この奇妙ないで達の大男
の口からクマイの名が出た事で驚きの声をあげ
た
「其れじゃ、ヲネさんやスサも貴方達と一緒に?」
「お前達はいったい・・・・む~~!」男は他の男た
ちと何やら相談を始めた
「大丈夫か・・んな事喋って」早瀬が耳打ちした
「解りません」あっさりと返事をする幸太郎に
「おいおい解らないってお前」
「賭けですよ、元の世界に戻るには彼女ヲネさん
達の力を借りないと・・です」
「痛ッ!」幸太郎が後頭部をおさえた
「どうした?」早瀬が幸太郎の頭を見た
「怪我をしているのか?」先ほどの男が言った
「此れを付けると良い」と言いながら腰の袋から
薬草らしき物を差し出した
「すみません、有難う御座います」それを受け取り
傷口にすり込んだ、痛みが嘘のように治まってい
く
「一緒に来い、ただ未だお前達を信じた訳ではな
い少しでもおかしな真似をしたら」そこまで言うと、
男達の剣と槍が、幸太郎と早瀬の鼻先に突き付
けられた、鬱蒼とした森の中、獣道を周りを警戒
しながら進む、巨木があちら此方に聳え立つ樹齢
にしてどの位なのか大人7~8人が手を回しても
とどくかどうか
「すごいな~~」「なんだ?」後から付いて来てい
た早瀬が幸太郎のその言葉に前方に目を遣る
其処には巨木の中でもひときは大きな木がそ
びえていた
「どの位有るんでしょうね?」見上げた、まるで天
にまでとどいているのではと思わせるほどだ、巨
木を回り込むと断崖の壁にポッカリと大きな穴が
空いていたその穴の中から人が出てきた。
mebiusu
見渡す限りの草原、蒸せ返るような草の中
まるで女の子宮の中の赤子の様に蹲る
気が付いた、のっそりとおきあがる「痛ッ!」
激痛が後頭部に走った無意識に押さえた手に
べっとりと血がついていた
「少し呑み過ぎた」苦笑いしながら辺りを見まわす
「ここは何処だ?」自分の中で、途切れ途切れに
なっている記憶の糸を手繰り寄せる・・・・・
「行ってきま~す」「ああ、気をつけてな」山門の前
を掃除していた宗義がその手を休めこちらを見た
初夏の太陽がまぶしい、若葉から日増しに濃
くなっていく銀杏並木を凸凹コンビが、慌ただしく
出掛けていく、商店街の雑踏の中「おはよう、義
兄さん、幸ちゃん」ナナが後ろから駆け寄ってきた
「おう、早いな今日は」「おはよう御座います」
ナナの頭の上から子供のような無邪気な顔が
満面の笑顔で見下ろしてきた
「バイバイ、課長さんに叱られない様に今日も
しっかりガンバといで」と言って左の路地に消えて
行った「言ってろ!」早瀬がナナの消えた路地に
向かって毒付いた
階段を上りドアのノブに手をかけるドアを開けると
慌ただしく動き回る署員、近くの男に、「おはよう」
「やー」此方を振り向く事も無く、返事が返ってくる
相変わらずの光景である
「早瀬ちょっと来い」荒木が書類から目を離さず
手招きをしている
「何んすか?」付いて来ようとする幸太郎を
手で制して荒木の前に行く
荒木と早瀬が話して居るのを自分の机で暫く観て
いたが「お茶どうぞ」婦警のゆかりの声に振り返っ
た、「早瀬さん今度栄転ね、でもちょっぴり寂しくな
るわ西署名物の凸凹コンビが見れなくなるの」
この春の人事異動で早瀬は、東京本庁に行く事
になった、ゆかりの言う通り栄転である
幸太郎の前から又一人居なくなってしまう
ぼんやりと荒木と話す早瀬を観ながら
今までの事を思い出していた
「千歳さんさが一番さびしくなるわね」
ゆかりも又早瀬の後ろ姿を見ながら呟いた
そんな二人のもとに帰って来た早瀬が
「幸太郎、今日仕事の後なにか用事があるか?」
「いえ、今の所さしあたって」幸太郎がこたえる
「そうか、久しぶりにどうだ」早瀬が口の前を親指
と一指し指を結び切った
「いいですね、自分も今日はそんな気分です」
「ゆかりお前もどうだ」ニコニコしながら二人の
会話を聞いていたゆかりに早瀬が話しかけた
「ざ~~んねん、今日は先約があるの
其れに今日は凸凹コンビ解散式でしょう、積もる
話しをゆっくりどうぞ」ゆかりが笑いながら自分の
席に戻っていった
「あら、いらっしゃい」ドアを開けると楓の和服姿が
目に入った、相変わらず良い女だ、その楓が
「ごめんねー今日はカウンターしか空いてないけ
ど」珍しく万席に近い盛況だ
「きょうはどうしたんですか?」幸太郎が聞いた
「クラス会の2次会だって」奥からナナの声がした
二人がカウンターに座り呑み始めた
「早瀬さん、わかりますか?あけみはね~行ちゃ
ったんですよ~」幸太郎である「其れなのに早瀬さ
んまで・・づ~~と一緒だったのに~冷たいじゃあ
りませんか~~」
「解った解った,参ったね如何にも、ママ幸太郎の
酒癖こんなだったけか?」
「幸ちゃん、もう止しましょう」楓が飲み干そうとし
たグラスを取り上げた
この男が自分を見失うほど、飲んだのを見るのは
始めてである、「幸太郎帰るぞ」
早瀬と幸太郎千鳥足で商店街を抜けやたら大き
な山門へ・・・・・・
まるで女の子宮の中の赤子の様に蹲る
気が付いた、のっそりとおきあがる「痛ッ!」
激痛が後頭部に走った無意識に押さえた手に
べっとりと血がついていた
「少し呑み過ぎた」苦笑いしながら辺りを見まわす
「ここは何処だ?」自分の中で、途切れ途切れに
なっている記憶の糸を手繰り寄せる・・・・・
「行ってきま~す」「ああ、気をつけてな」山門の前
を掃除していた宗義がその手を休めこちらを見た
初夏の太陽がまぶしい、若葉から日増しに濃
くなっていく銀杏並木を凸凹コンビが、慌ただしく
出掛けていく、商店街の雑踏の中「おはよう、義
兄さん、幸ちゃん」ナナが後ろから駆け寄ってきた
「おう、早いな今日は」「おはよう御座います」
ナナの頭の上から子供のような無邪気な顔が
満面の笑顔で見下ろしてきた
「バイバイ、課長さんに叱られない様に今日も
しっかりガンバといで」と言って左の路地に消えて
行った「言ってろ!」早瀬がナナの消えた路地に
向かって毒付いた
階段を上りドアのノブに手をかけるドアを開けると
慌ただしく動き回る署員、近くの男に、「おはよう」
「やー」此方を振り向く事も無く、返事が返ってくる
相変わらずの光景である
「早瀬ちょっと来い」荒木が書類から目を離さず
手招きをしている
「何んすか?」付いて来ようとする幸太郎を
手で制して荒木の前に行く
荒木と早瀬が話して居るのを自分の机で暫く観て
いたが「お茶どうぞ」婦警のゆかりの声に振り返っ
た、「早瀬さん今度栄転ね、でもちょっぴり寂しくな
るわ西署名物の凸凹コンビが見れなくなるの」
この春の人事異動で早瀬は、東京本庁に行く事
になった、ゆかりの言う通り栄転である
幸太郎の前から又一人居なくなってしまう
ぼんやりと荒木と話す早瀬を観ながら
今までの事を思い出していた
「千歳さんさが一番さびしくなるわね」
ゆかりも又早瀬の後ろ姿を見ながら呟いた
そんな二人のもとに帰って来た早瀬が
「幸太郎、今日仕事の後なにか用事があるか?」
「いえ、今の所さしあたって」幸太郎がこたえる
「そうか、久しぶりにどうだ」早瀬が口の前を親指
と一指し指を結び切った
「いいですね、自分も今日はそんな気分です」
「ゆかりお前もどうだ」ニコニコしながら二人の
会話を聞いていたゆかりに早瀬が話しかけた
「ざ~~んねん、今日は先約があるの
其れに今日は凸凹コンビ解散式でしょう、積もる
話しをゆっくりどうぞ」ゆかりが笑いながら自分の
席に戻っていった
「あら、いらっしゃい」ドアを開けると楓の和服姿が
目に入った、相変わらず良い女だ、その楓が
「ごめんねー今日はカウンターしか空いてないけ
ど」珍しく万席に近い盛況だ
「きょうはどうしたんですか?」幸太郎が聞いた
「クラス会の2次会だって」奥からナナの声がした
二人がカウンターに座り呑み始めた
「早瀬さん、わかりますか?あけみはね~行ちゃ
ったんですよ~」幸太郎である「其れなのに早瀬さ
んまで・・づ~~と一緒だったのに~冷たいじゃあ
りませんか~~」
「解った解った,参ったね如何にも、ママ幸太郎の
酒癖こんなだったけか?」
「幸ちゃん、もう止しましょう」楓が飲み干そうとし
たグラスを取り上げた
この男が自分を見失うほど、飲んだのを見るのは
始めてである、「幸太郎帰るぞ」
早瀬と幸太郎千鳥足で商店街を抜けやたら大き
な山門へ・・・・・・
mebiusu4
カヤトの民はザキの存在を知らない、ましてや彼の背後でうごめく者達のことなど
知る由も無かった、
カヤト王の武官、マズミが気づいたが、時すでに遅く、カヤト王はザキの手の者に
命を奪われた
マズミは、王妃とさくや姫を連れ、城を抜け辛うじて落ち延びたが、王妃は執拗に
迫る敵の矢に倒れた、マズミも又、深傷を負っていた、そして今又幾重にも敵の兵
達に、囲まれていた、幼いさくやを連れ逃げ延びるのは至難の業だった
「もはや、此れまでか」マズミは覚悟を決めた、さくやの顔を見た、
澄んだ大きな瞳がマズミの顔を真直ぐ見上げていた、{強い子だ」父を殺され
母も又敵の放った矢に目の前で倒れた、この様な所に追いこまれ、其れでも
涙も見せずじっと耐えている、「もうよい」そう言いながら、そっと抱き上げた
さくやを片手に抱き、大きく構えた、時の声を上げ一斉に襲いかかってきた
・・・・風が起きた、其の風は見る間に大風となり、マズミ、さくやを中心におき
渦を巻き始めた、木々はなぎ倒され、今まさに襲い掛かろうとした、兵達は
其の渦に巻き込まれ、地面に叩き付けられる者、谷底に落ちていく者
総崩れとなった
「こちらへ」声のする方を振り向くと、其処だけが風が割れて、巫女が立っていた
先に立つ巫女の後に続いた、崖が迫っていた、その岩と岩の間に人一人が辛うじて
通れる隙間があり、其処を抜けると広場にでた、巫女がマズミ達の足元にかしずいた
「かたじけない」マズミが声を掛けた、巫女の作る薬草のお陰で、敵に受けた傷も
見る間に癒えていった、そして、長い逃亡の旅の末、彼れはクマイの里に現れた
井戸の側に、明美とヲネがそして父宗義、幸太郎、早瀬、スナック夢のママ楓がいた
「和ねえちやん、早瀬おじちゃん、ありがとう、さようなら」
「ああ、向こうに行ったら、トンチンカン遣るんじゃねえぞ」早瀬がいった
「お父さん、お兄ちゃん」明美の大きな瞳から大粒の涙がこぼれた
「明美元気でな」幸太郎も泣いていた
「明美頑張る!!」おどけて見せた「そっか、頑張るか」父、宗義が
明美の頭に手を置いた、「明美ちゃん」ヲネが促した・・・コクリと明美が頷いた
二人が縄梯子を降りた。
知る由も無かった、
カヤト王の武官、マズミが気づいたが、時すでに遅く、カヤト王はザキの手の者に
命を奪われた
マズミは、王妃とさくや姫を連れ、城を抜け辛うじて落ち延びたが、王妃は執拗に
迫る敵の矢に倒れた、マズミも又、深傷を負っていた、そして今又幾重にも敵の兵
達に、囲まれていた、幼いさくやを連れ逃げ延びるのは至難の業だった
「もはや、此れまでか」マズミは覚悟を決めた、さくやの顔を見た、
澄んだ大きな瞳がマズミの顔を真直ぐ見上げていた、{強い子だ」父を殺され
母も又敵の放った矢に目の前で倒れた、この様な所に追いこまれ、其れでも
涙も見せずじっと耐えている、「もうよい」そう言いながら、そっと抱き上げた
さくやを片手に抱き、大きく構えた、時の声を上げ一斉に襲いかかってきた
・・・・風が起きた、其の風は見る間に大風となり、マズミ、さくやを中心におき
渦を巻き始めた、木々はなぎ倒され、今まさに襲い掛かろうとした、兵達は
其の渦に巻き込まれ、地面に叩き付けられる者、谷底に落ちていく者
総崩れとなった
「こちらへ」声のする方を振り向くと、其処だけが風が割れて、巫女が立っていた
先に立つ巫女の後に続いた、崖が迫っていた、その岩と岩の間に人一人が辛うじて
通れる隙間があり、其処を抜けると広場にでた、巫女がマズミ達の足元にかしずいた
「かたじけない」マズミが声を掛けた、巫女の作る薬草のお陰で、敵に受けた傷も
見る間に癒えていった、そして、長い逃亡の旅の末、彼れはクマイの里に現れた
井戸の側に、明美とヲネがそして父宗義、幸太郎、早瀬、スナック夢のママ楓がいた
「和ねえちやん、早瀬おじちゃん、ありがとう、さようなら」
「ああ、向こうに行ったら、トンチンカン遣るんじゃねえぞ」早瀬がいった
「お父さん、お兄ちゃん」明美の大きな瞳から大粒の涙がこぼれた
「明美元気でな」幸太郎も泣いていた
「明美頑張る!!」おどけて見せた「そっか、頑張るか」父、宗義が
明美の頭に手を置いた、「明美ちゃん」ヲネが促した・・・コクリと明美が頷いた
二人が縄梯子を降りた。