今朝、目覚めると夢の残像がボンヤリと頭の中に残っていた。
昨夜、眠りにつけたのは恐らく朝の5時過ぎ
まだ2時間程しか経っていない
9月10日から夢の中に母が毎日現れる。
いつも何かを伝えたそうにしているが、その何かが分からないのだ。
だが、昨夜はいつもよりは進歩しているように感じた。
いつもは言葉で話そうとする素振りは見せるが、それが出来なく歯がゆい様子だった
夢の中で母は伝える手法を考えたようで
携帯の画面だったか?
紙に文字を書いていたか?
何か物を通して伝えようとしていた。
夢の中で私は『うんうん』と伝わったシーンまでは記憶しているが肝心な内容がどうしても思い出せない。
書いてる文字を読みながら、頷いていたのに
昨夜、ベッドに入りいつもの曲を流しながら寝ようと目を閉じた
30分も経たない中、真っ暗な部屋の片隅で『カタンッ…』
何かの音がする
暗闇の中曲が流れていく
私はずっと目を閉じたまま意識だけはしっかりとしていた
あまり考えたくは無いが、母が来たんだな…そう直感していた
お願いだから発見された時の姿では現れないで。
心の中で強く強く願った。
しばらく時間が過ぎた頃、突然左耳にぼわんとした言葉にならない音が鼓膜スレスレで聞こえた
何か言いたそうに…
とっさに耳を下に向けた。
さすがに怖い気持ちが湧き上がる。
その頃から私は後悔し始めていた
寝る直前に高校2年生の息子に『一緒に寝ようよ。』とお願いしたがあっさりと断れてしまったのだ。
無理矢理でも一緒に寝て貰えば良かった…
目も開けられない
家族が寝ている部屋に移動も出来ない
固まったまま身体の中が鉛のように重く沈む感覚に襲われた
どの位経過したのか、意を決して私はようやく頭から布団を被り、しばらくそのままで辺りの様子を伺っていたが、いつの間にか夢の中へ落ちていた
目が覚め起き上がり、部屋の窓を開ける。
見上げた空は今にも雨が降り出しそうなグレーの空だった。
警察から母の死を聞いた時、気が遠くなる中で見上げた空もグレーで埋め尽くされ、白い雲が浮かび上がっていた
明日、9/19は長年悩まされた母の家から大量のゴミを撤去する日なのだ。
汚くおびただしい量のゴミで埋め尽くされた母の家は私達の実家でもある
母の火葬を行ったその日の夜から私と姉は特殊清掃業者探しに翻弄された。
気持ちがとっくに限界を超えていても、一刻も早くゴミを処分し原状回復を終わらせ、大家さんに物件を引き渡さなければならない。
あの場所には幼い頃、母と一緒に撮った写真も埋もれている。
孫との写真も子供達のオモチャや想い出の品もそして母が書き留めたメモや新聞の切り抜きも何もかもがゴミと混ざり合い、ゴミの一部として明日処分されてしまうのだ
明日の朝8時から専門の業者が10名で現場に入り作業を開始する。
私は今夜の夜勤が終われば明日の朝、勤務終了後すぐに母の家へ向かう。
作業は1日がかりの予定である事、物が多いとかのレベルのゴミ撤去では無いという事を会社の上司に事情を伝え、明日は急遽有給を取らせて頂く事にした。
最後にこの目で母の生きた証を見届けよう。
目を背けずしっかりと現実を受け止めよう。
そう思ったからだ。
ねぇ母さん
一体何を伝えたいの?
明日は母さんの荷物が何もかも消えて無くなってしまうよ。