まずは渡辺満里奈さんが書かれた、本書の

解説をご紹介します。少し長いですが、とても中途半端に

抜粋することはできないと思い、全文を掲載させていただきました。



「くぅ~、やられたっ・・・・」

仕事終わりの楽屋。何気なく読み始めた本の第1章を読み終わり、

私は期せずして喉を詰まらせた。

うっかりすると、涙まで流れちゃいそうだった。

「おいしいお店とか載ってるかな」などと軽い気持ちで読み始めた

ものだから、完全にノックアウトされ、頭の中にはこの一言が。


ノックアウトの衝撃から立ち直った後、俄然火がついた。

これは最後まで一気読みだ!と勇んだがしかし、これがなかなか

先に進まないのだった。

ひとつ読むとまた深く横たわる。それの繰り返し。



それというのも、静かで落ち着いた心地よい場所に座り、

食の現場に立つ人たちからこれまであった物語を、

実際にじっくりと聞かせてもらったような感触があったから。

そのひとつひとつを噛みしめて、

「生きるってこういうことだよなぁ」と感慨に浸り、

じんわりと熱い気持ちになる。

そんな調子なものだから、1日に何人もの話を聞ける(読める)わけが

ない。物語の人物像がとても厚く、ずっしりと重厚な読後感があったのだ。

こんなにも優しく無駄のない、簡潔な文体なのに。



外での食事の楽しみを作る要素は、雰囲気、サービス、一緒に

過ごす人など様々あるとはいっても、やはりまずは料理。

その料理が作り置きしてたんだろうなとか、形だけだなとか、

なんだか元気がない料理、と感じるときはがっくりくる。

では何が嬉しいかといったら、食べるほうもそのエネルギーを

もらえるような、勢いがあるひと皿。



飽くまで主観なので、「勢いがある」を説明するのは難しいのだが、

それは、これを食べてほしい、という気持ちだったり、確固たる誇り、

情熱だったりするのではないかと思っている。

店の支柱になる人物のそういう思いは、料理にはもちろん店全体、

細かいところにまで反映する。その人にしか出せない味。空気。

それは、まさしくその人の人生そのものなのだろう。

そんな店に出会えたら、この上なく幸せ。



しかし私は、真っ赤なトマトソースの絶妙な塩気と甘み、

子羊の絶妙な火の通し方と手練れのソース。

ゆらゆらと澄み切って深く複雑な味のコンソメなどなどを

五感を使って味わい、ただ感じるだけで、その勢いがどこから

来るのかはっきりと知る術がない。

いきなり訪れた客が訊いたとしても、自分の生きてきた過程、

いかにしてこうなたかなどという話をする人はいないだろうし、

逆に、もし延々とされたら二度とその店には行かないだろう。



野地秩嘉 さんは、それをひもとく。

かくも温かき視線を通し、彼らの人生に光を当てる。

そしてそれを読んだ私は、今日も皿の上の人生を食べつくすべく、

温かい灯がともる店へと足を運ぶ。



渡辺満里奈さんのこの解説が、本書のすべてを語っています。




   もじゃにゃあのごろごろ日記





この本は、私の尊敬する浅野屋の社長:浅野まきさん

ブログでご紹介されていたのを読み、すぐに丸善へ買いに走った本流れ星



  浅野さんのご紹介されているブログはこちら→☆☆☆



ストーリーは、料理に関わるお仕事をされている方16名

スポットをあて、インタビューや生い立ちを紹介する内容なのですが、

とにかく内容が濃く、そして、とてもとても深いキラキラのです。


私はこれを電車の中で読んで、降りる駅が来ても降りたくなくなるほど

ハマりました。と同時に、電車の中なのに何度も泣きそうになり、

どれだけ涙をこらえたか知れません。



苦労して這い上がった者には、到底自分は敵わないと思いました。

深い経験が、その人を造り出すのだと思いました。

大昔の偉人の話でもないのに、人の人生で久々に感動しましたキラキラ



食べることが好きな方には、ぜひ読んでいただきたいです。

食べることにさほど興味がない方でも、プロジェクトXや、

プロフェッショナルなどの番組が好きな方には、

絶対にオススメしたい本ですドキドキ