「ひとつの灯から」
この作品は「時間を超えて生き続ける繋がり」をテーマにしている。
鏡の中に映る手とうっすら映る顔は、過去の記憶「写真の中の両親」に手を伸ばす現在の自分だ。鏡という媒体は、現実を反射しながら、同時に「届かない世界」も表現できる。
また蝋燭の炎は、「生命の灯」を象徴とした。
炎は時間の流れの中でゆらめき。やがて消える運命である。自分の命もまた同じでいつか消える運命である。その儚さの空気感を表現したく蝋燭に火をつけた。
両親の結婚式の写真。「自分の命が始まる前」の前史である。鏡に映る老いた「現在の自分」と並べて写すことで「自分が生まれる以前の光景」と「今、ここに生きている自分」が一枚の画面で出会っている。
特に母親は、自分にとって女性としての起点である。手前に置かれた口紅というモチーフは女としての系譜を示している。単なる化粧道具ではなく、母も自分も女性として生きた証、女としての時間の連なりを象徴する小さな記憶装置でもあるのだ。
鏡の前の枯れたには綿毛の種があり、テーブルの上にもうっすらと綿毛は落ちている。枯れた花は「死」や「終焉」を思わせるが、同時に「生の痕跡」でもあり、命の始まりの種でもある事を表現したつもりだ。
この写真は、老いた自分を感じる今、命の灯が受け継がれ、喪失は悲しみだけでなく「時間を超えて生き続ける繋がり」が続く事への祈りの写真である。
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