創作怪談
『吸血』
鬼塚さん、川﨑さん、こんばんわ。
初めてお便りいたします。
これは私が高校の夏休み、祖母の家に妹と泊まりで遊びに行った時の話です。
祖母の家は静岡の田舎の山の奥にありました。
祖母の他には誰も暮らさない限界集落。
祖母が若い頃、明治の終わり、村の娘が次々と神隠しにあい、世継ぎを産むものがいなくなり、自然と村は廃れたそうです。
当時、祖母が女中として働いていた村の庄屋が怪しいと、祖母は語っていました。
下男が庄屋から「若い血液が手に入らないか?」と言われ困惑したという話しを、下男が祖母に話したのだそうです。
庄屋は当時結核を患っており、余命いくばくもない状態だったとか。
庄屋の屋敷は廃墟となって祖母の家の裏手の高台にありました。
決して近付くなと祖母にキツく言われました。
初日の夜、夢を見ました。
隣で眠る妹が、古めかしい出で立ちの男に連れられて庄屋の屋敷へと向かう夢。
翌朝、妹は行方不明となりました。
警察や消防の方達が必死で捜索してくれました。
妹は庄屋の屋敷跡の廃墟の屋根裏部屋で遺体となって見つかりました。
首を鋭利な刃物のような物で真一文字に切られ、全身の血を抜かれていました。
妹の遺体は、近隣で行方不明になり、捜索願いの出ていた他の女性達の遺体の上に乱暴に積み上げられていたそうです。
そして、屋敷の浴槽には並々とたたえられた血液。
これが50年前、実際に私が経験したお話しです。
追伸
祖母が他界した後、集落に暮らす者は未だにありません。
庄屋の廃墟は、朽ち果てながらも未だに存在しているそうです。
山菜やキノコ採りで近隣を訪れた女性が神隠しにあうという話しを、今でも耳にします。
RN エリザベート・バートゥリと小野不由美先生へ愛を込めて。