レポート試験 | 65歳の芸大生

65歳の芸大生

定年退職後、新しいことにチャレンジしたいと考えて、今まで縁がなかった芸術について学ぼうと思い、京都芸術大学通信教育部芸術教養学科に入学しました。このブログは学習記録としてレポート等の成果を載せています。複製、転載はご遠慮ください。

ロマン主義という傾向がどのように形成されたか、各章の議論を踏まえながら、簡潔に要約しなさい。

 18世紀後半のヨーロッパでは、理性と科学的な思考を重視する啓蒙主義が支配的であった。しかし、この理性至上主義に対する反動として、感情や想像力の重要性を説くロマン主義の思潮が台頭してきた。ロマン主義の形成には、いくつかの背景がある。まず、啓蒙主義が推し進めた合理性と客観性への過度の偏重に対する反発があり、個人の主観的な経験や内面世界の表現が軽視されていたことに不満が高まっていた点である。

  さらに、自然に対する関心の高まりも特徴的であった。啓蒙主義が自然を合理的に分析する対象としていたのに対し、ロマン主義者たちは自然を神秘的で崇高なものと捉え直し、自然への畏敬の念と一体感を表現することが、ロマン主義の重要なテーマの一つとなった。 以下、ドイツ、イギリス、フランスの代的な作品や作家を紹介し、それぞれのロマン主義の特徴を明らかにする。

ドイツ・ロマン主義

  ドイツ・ロマン主義の中心的な作家の一人がゲーテである。代表作『若きウェルテルの悩み』は、ロマン主義文学の傑作で、この作品は、主人公ウェルテルの内面に深く寄り添いながら、自然への深い共感を描いている。ウェルテルは、理性的な思考に満ち足りない自分の心の奥底にある感情を表現し、自然の中で癒しを見出そうとし、荘厳な自然風景の描写は、ウェルテルの孤独で憂鬱な心情を象徴的に表している。 

イギリス・ロマン主義

  ワーズワースの「抒情歌集」は、イギリス・ロマン主義を代表する作品の一つである。この詩集は、単なる自然描写に留まらず、自然への深い共感と畏敬の念を表現している。ワーズワースは、自然の中に人間の原初的な純真さを見出し、それを讃えている。また、子供の視点から捉えた自然の風景が描かれ、大人の理性的な観察とは異なる、心の奥底に響く感動が表現されている。

  さらに、メアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』は、ロマン主義の影響を強く受けた小説の傑作である。この作品は、科学的な合理性に基づいて人工的に創造された存在が、感情と想像力の欠如から生じる悲劇を描いている。人間の理性的な営みだけでは、生命の神秘を完全に解明できないことを示唆しており、ロマン主義的な世界観を色濃く反映している。 

フランス・ロマン主義

  フランス・ロマン主義の代表的な作品の一つが、ヴィクトル・ユゴーの小説『Notre-Dame de Paris』(『ノートルダム大聖堂』)である。  この作品は中世の建築物であるノートルダム大聖堂を舞台とし、そこに集う人々の運命を描いている。ユゴーは、中世の神秘的な雰囲気と荘厳なゴシック様式の建築美を詳細に描写することで、読者の想像力を掻き立てており、中世への憧れと懐古主義は、フランス・ロマン主義の重要な特徴の一つである。

  このように、フランス・ロマン主義は、中世への憧れとゴシック的な要素、個人の感情の解放、そして抒情詩の隆盛といった特徴を持っていた。『Notre-Dame de Paris』やランボー、ヴェルレーヌらの作品は、後の文学に大きな影響を与えることになった。