レポート試験 | 65歳の芸大生

65歳の芸大生

定年退職後、新しいことにチャレンジしたいと考えて、今まで縁がなかった芸術について学ぼうと思い、京都芸術大学通信教育部芸術教養学科に入学しました。このブログは学習記録としてレポート等の成果を載せています。複製、転載はご遠慮ください。

講義内で紹介された中国及び日本の文物、美術品、文化財を蒐集するコレクターの1人を取り上げて、その人物のコレクションの特徴及び時代背景などについて、調べて論述しなさい。
根津嘉一郎は、日本の明治から昭和初期にかけて活躍した実業家であり、美術品蒐集家としても知られる人物である。彼は東武鉄道の発展に寄与し、多くの企業経営に携わる中で、豊かな財力を背景に日本の伝統美術品や文化財の蒐集に力を注いだ。この活動は後に「根津美術館」の設立へと結実した。


1.コレクションの特徴
根津嘉一郎のコレクションは、日本の古美術品を中心に構成されているが、その範囲は中国や朝鮮の美術品にも及ぶ。彼の収集品には、絵画、書、陶磁器、漆器、茶道具、彫刻などが含まれており、質の高さと多様性において際立っている。
2.絵画と書
根津のコレクションには、鎌倉時代から江戸時代にかけての仏画や水墨画、さらには狩野派や琳派の作品が多く含まれている。これらの作品は、日本の美術史における重要な位置を占めており、根津の審美眼と収集力の高さを示している。
3.陶磁器と漆器
根津はまた、陶磁器や漆器の収集にも力を入れていた。彼のコレクションには、奈良時代や平安時代の漆器、中国の宋、元、明、清時代の陶磁器などが含まれている。特に、茶道具として使用される陶磁器や漆器は、茶の湯の歴史と文化を理解するための貴重な資料である。
4.茶道具
茶道具も根津嘉一郎の重要な収集品の一つである。彼は自らも茶人として活動し、多くの名品を蒐集した。茶道具には、茶碗、花入れ、水指、釜などがあり、これらは茶の湯の実践と美学を深く理解するための重要な資料である。根津は、千利休や古田織部などの歴史的な茶人に関連する道具を特に重視し、それらを大切に保存した。
5.時代背景
根津嘉一郎が活躍した時代は、明治維新以降の日本が急速な近代化を遂げていた時期である。西洋文化の流入とそれに伴う社会の変革の中で、日本の伝統文化は一時的に軽視される傾向にあった。しかし、一方で伝統文化の価値を再認識し、それを保存・継承しようとする動きも生まれていた。
 根津嘉一郎は、このような時代背景の中で、伝統文化の保存と普及に尽力した人物である。彼は、日本の美術品や文化財が失われることを危惧し、それを後世に伝えるための活動を積極的に行った。彼のコレクションは、単なる個人的趣味の域を超え、日本の文化遺産を守るための重要な活動の一環であったと言える。
6.根津美術館の設立とその意義
根津嘉一郎は、収集した美術品を広く公開するために、1941年に東京・青山に「根津美術館」を設立した。この美術館は、彼の蒐集品を展示するだけでなく、文化財の保存と研究を推進する役割を果たした。根津美術館は、彼の死後もその遺志を継ぎ、現在も多くの美術品を所蔵している。
7.文化的影響
根津嘉一郎のコレクションと根津美術館の設立は、日本の伝統文化の保存と普及に大きな影響を与えた。彼の収集品は、学術研究においても重要な資料となり、多くの研究者や美術愛好家に影響を与えた。また、根津美術館は、一般市民が日本の伝統美術に触れる機会を提供し、文化の理解と継承を促進した。