狛江駅からほど近く、静かな住宅街のマンション敷地内にあるホール、エプタザール。
地下へ階段を降りていくとそこが入口になっていて、ホールは地下一階から地上一階の吹き抜け。
初めての訪問ですが、開演直前の到着になるので座るのはホール二階の席と決めて向かいました。
上ってみると、二階の席は前がベンチ様式。
そしてその後ろ、一段高い最後列は‥な、なんと丸テーブルが並んどる!
「これすごいね〜」と、同行の兄と2人で向かい合う形で座ると、んまぁなんと優雅な空間
天井は高いし、遮る物無しに奏者の方々を全身見下ろす視線で、まるでホール全体に包まれる様な贅沢感。
「ブランデーグラスを傾けながら聞きたいね〜」と、飲めない2人が何を言っているのやら
そんな空間の中で演奏が始まると、ふくよかでエネルギッシュな音の波が現れ、包容力のある深い響きに包まれて、ホールに吹き抜ける風さえも全身で感じる様な。
皆さんの楽器が心身と一体化している様な感覚に陥る程に音が迷いなく煌めいて、音楽を聴いているのに何か美しいものを見ている様にも思え、『ガチガチ』の『ガ』も無い心で、時間があっという間に過ぎていきました。
「『ピアノ三重奏というのは亡き芸術家の追悼音楽として作られる』というロシアの伝統に基づく作品なんですが‥アレンスキーっていうのは、根本的に陽気な人だったんでしょうねぇ。
楽譜にも“ダヴィトフに捧ぐ”と書いてはあるのですが、追悼なのに途中でどこか楽しくなっちゃっていて‥」
このアンサンブルを組んで下さったピアノの松本和将さんのナビは、この世界にとんと疎くてカタカナが苦手な私も「ヘぇ〜」「ほぉ〜」と聞ける素朴な語りで、とても楽しかったです。
そして、今回名前も初めて聴くアレンスキーさんのピアノ三重奏が、この日の私の一番の『好き』でした。
好きと思える音楽は、まだまだ世の中にいっぱいあるのだなぁ。
KENTAさん。
途中途中でそっと目を閉じ、天に耳を傾けるようにして、何を思っていたのでしょうか。
そしてアンサンブルに再び入って行く瞬間の静かなオーラ。
やっぱり大好きだな、と思いました。
そうそう、私達がいた階には最初の出番を終えた上里さんと坂口さんが上がって来て、すぐ隣のテーブルで聴かれていきました
そして、SUGURUさんの登場も。
上里さん達と同じくピアノ三重奏が始まる前にそっと上がって来て、私達とは反対の下手寄りのテーブルで、一人静かに聴かれていました。
休憩時に中央の階段を降りて行かれる所に、思わず小声で『SUGURUさーん』と囁き小さく手を振ったら、(うん?)と顔を上げ、「あっ!」と笑顔で手を振り返してくれました。
兄「すごいね、認識してもらってるの?」
私「うーん‥もしもそうなら、たぶん要注意人物として、かな」
終演後の懇親会は、
ホールオーナーであるヒノキ新薬の社長様がスパイスの香り豊かな手作りホットワインを自ら振舞って下さり(豊かな香りのみ堪能〜)併せてクラッカーやサンドイッチをつまみながら、演奏者の皆さんと自由に語り合える、サロンの様な空間。
ご挨拶によると、ここのマンションは音大生用で、いつでも練習ができたり演奏会ができる様にと考えて会社で造られたとか。
ホールがマンション敷地内というのもそれで納得。
(そういえばSUGURUさん、以前狛江に住んでいた事あるってどこかで見たような‥?もしかしてここ‥?←まるっきり勝手な妄想です)
懇親会では、思い切って松本さんにお話を。
この時代の音楽を、今の音で今のエネルギーで聞けるライブ感、とても幸せでした!って伝えることができて(ど素人丸出し言葉でも、優しく微笑んで聞いてくださった)
それから、「これからはこういう小さなホールでの演奏会が増えていく流れが‥」とか、社長が買われた珍しい木目の素晴らしいベーゼンドルファーの裏話(ちょっと書けない)とか‥お疲れの所にもかかわらずいろいろお話しいただけて。
そして、
「この皆さんと演奏された事には、どんな思いをお持ちですか?」と聞いてみると、
「そうですねえ‥練習ももちろんきっちりやり込んではきたんですが、本番が一番良かったですね」
「『練習の発表』じゃぁね、意味がないので。
このメンバーだからこそ、今日の本番の空気や、いろんなものを混ざり合わせて、すごく気合の入ったエネルギーのある演奏ができたかな、と」
‥あぁ、ライブ感を感じたいって思ったのもあながち間違いじゃなかったのかも‥と、なんだか嬉しかったです、はい
もう一つ嬉しかったのは、近くにいらっしゃったステキな佇まいのご婦人と目が合い微笑んで下さった(気がした)ので、思わず話しかけたら、優しく答えていただけた事。
「素敵な演奏会でしたね」
「本当に。いい時間でしたね」
そこから、このホールのお話やヴァイオリンの上里さんの演奏会にも良く来られる事など、柔らかな微笑みと共に聞かせていただきました。
その方は、その後上里さんと楽しげに話されて、帰る際にはお隣にこれまた素敵な旦那様が寄り添われ、目が合うとお二人でそっと会釈をして下さいました。
私もいつかはあんな風に‥(←兄、苦笑)
演奏、そして懇親会。
大きなホールではおそらくなかなか感じることのできない、でももしかしたら室内楽の始まりはこんな空間だったのでは?と思える様な空気の中で、細胞にまで染み入る素敵な時間を過ごさせていただきました。
ただ、ごめんなさい。
ほんの少しだけ心がカサっとしたのは、KENTAさんの周りを囲んだ皆さんに向けて、懇親会の終わりを促すスタッフの方の丁重な呼びかけが幾度も聞こえた事。
渾身の演奏の後に更に長時間立ちっぱなしで応じて下さった演奏者の皆さんと、一期一会の出会いのお客様方。最後まで気持ち良く過ごしていただけたかなぁ‥
そんな事を心の隅っこで思いながら、更に最後のお見送りまで本当に感謝感謝の時間でした
松本さん、上里さん、KENTAさん、坂口さん、小川さん、そしてスタッフの皆様。
本当にありがとうございました