プレス行脚、最後の香港から帰国して、久しぶりのアルコールだった。
正確に言うと、お酌されてグラスに口をつけなければならない機会はあったけど、飲み干して酔っぱらうわけにいかなかったから、心置きなく飲めるのが、久しぶり、というべきか。

本気のダイエットを敢行して、糖質制限中にビールは禁止だったし、毎日飲みたいわけじゃない俺にとって禁酒はそれほど苦痛なものではなかったけど、
とにかく、久しぶりで、脂肪率が下がれば下がるほど、回りやすい回りやすくなる、てのは俗説じゃなくて、事実だったらしい。

ううっ
とか
ぶおっ
とか、
文字に表現出来ない呻き声を出して、チャンミンがドサッとベッドに、抱えていた俺を容赦なく落とした。
胃が苦しくて眠ってはいなかったから、
筋肉重いって聞こえてるぞ、
チャンミンめ。








最近のチャンミンは、のりがいいというか、大人になったというか、再始動に向けて俺たちの結束をアピールしなくては、と
兵役中にちょこちょこ会っては確認しあってたのがここまでやってくれるとは思わなかった。

あの照れ屋だったチャンミンが。
あの、俺がチャンミン大好きだよ、と一言、公の場で言おうものなら、こっちが目を白黒させていても構わずに(もしくは気づいていても言葉の勢いが止まらずに)落ち着けとしか返せない状態までいきり立つのが常だったチャンミンが。


何かにつけて恭しく、兄弟愛を口にして、頭の回転の早い男だから、俺には思い付けないような表現で絆を表現してくるから、俺もつい嬉しくなって思い付くかぎりのチャンミンへの気持ちも言葉にする。
お互いに話し合っていたワードだから、チャンミンが白い目を向けてくることはないと、思う存分最大級の友情をメディアに向けてしゃべると、また重ねてチャンミンが。

お互いがお互いに応えようとするから、倍々ゲームで、俺たちのやり取りに事務所スタッフが舞台裏で大ウケしてるのはわかっているが、
ステージからはけてくると、チャンミンが目を赤くしているときもあって、胸が熱くなって、嘘じゃないんだ、お前しか俺にはいないんだ、と、次はもっと過剰なことを言ってしまう。

演出の連中、ジェウォニヒョンやマネージメントが大喜びで近く開催予定のソウルファンミでの、「二人の友情を確かめあう」企画を立ててるらしいが、内容を聞くのが怖いような、どんとこいというような。




そんなこんなで、チャンミンが俺をたてよう、たててくれようという気持ちが高まりすぎると、まるで自分が女性になってエスコートされてるような気持ちになることがあるが、
今回もそれはままあるのだが、

こないだはトレーニングのあとふらふらになった俺に、
ヒョンがこんなに頑張ってるのはオレが頼んだから?と聞くから、
もちろんそれだけじゃないけど、
チャンミンに太ってることを指摘されて本気になったのは確かだから、そうだよ、お前のせいだよ、と返したら、満面の笑顔で、じゃあオレが責任をもってユノを送るよ、と送迎をかって出てくれて、
ばーかいいよ、と遠慮しても、
なにいってんだよ、弟のいうことをきいてよと、目の前にしゃがみこんで、背中を見せる。
は?背負うつもりか?
と笑うと、後ろでトレーナーも笑ってるのが鏡越しに見えて、恥ずかしくなる。

オレだって鍛えてんだよ、ほら早く、
と言い張るが、
バカ、潰しちゃうよといいながらふらふらとジムのベンチから立ち上がると、
なんだよ、もう、と、ぶつぶついいながら、
俺の荷物を持ってついてくる。

ユノなんか、羽のように軽いんだから。










て、言ってたんじゃないのかよ、
痛いじゃん、チャンミン、

と思ったけど、

口に出したのは
ありがと。


起きた?

眠ってない、
(起きるだろ今ので)

苦しくない?

ううん、
大丈夫、

チャンミンがベッドに横座りして、反対側にごろんと体を反転させて、
おやすみ、といいかけた俺の体のわきに手をついてベッドのスプリングが少したわんで、

ん?


何か言いたげに、

ユノ。



うん?

眠い。

いろいろあっても、思い悩んで眠れないなんて時期は通りすぎた。






うん?






ともう一度返したつもりだったけど、
声が出てなかったかもしれない。



几帳面な弟は、
大理石の、乳白色のカメオのようにすべらかに彫り込まれた、端正で小さな、片手に収まってしまいそうな、誰のものでもないと思っていた、兄の顔を、
もう眠ってしまったから安心して、心置きなくじっと見つめながら、上掛けをかける。

兄の眠りが深いことはよく知っている。




触れても気づかないことは、
もう、10年も前から、知っている。