ご一緒していいですか?
Sは振り返り、自分とおっつかっつのガタイの、最近転役したとかで、テレビでよく見かける、東方神起の片割れ、チェガンチャンミンの礼儀正しい笑みを見つける。
同じ場所で飲んでたのか?
ユノユノと?
プライベートの宴席のようなのに。
まあ、そんなことはどうでもいい、
30越えたアイドルが、仲がよかろうが、
悪かろうが、
どうでもいい。
そんなことより、ユイを庇うように肩を抱いている英雄気取りの優男を睨み付けてやろう、と思って、振り返ると、
想定とはちがって、
もうユイからは離れて、
椅子から立ち上がって、
目上の自分に席を勧める身振りのユノユノを見つけて、酔いに濁った目を見開き、
改めて、
6時のニュースでとりあげられていた、日焼けした軍服姿の敬礼姿勢の逞しい男の顔を、
目の前の男に重ね合わせようとするが、
うまくいかない。
白い、小さい、うりざね顔、
グレーのトレーナーを着て、
長い細い首が子供のようなのに、
こんな場所でメイクをしてるわけでもないだろうに、
ぬめるような艶のある肌。
ユイと上手く連絡がつかなくなった頃、浮気かと気にした男が数人いたが、その中の一人で、
そのなかで一番大物だったからずいぶん疑ったものだったが、
特級兵士になったとかなんとか言われていたのに驚いて、
兵役にはいっているおとこに奪われることもないだろうと思い返して、
なんだか、
不思議な印象の男だ。
アイドル歌手で、ここまで息の長いグループも珍しく、韓流ドラマの大市場である日本で韓国よりも大きな人気を誇ることで、逆輸入的に評価されていることは知っている。
俳優仲間に評判がいいことはちょっとうさんくさく感じていた。
こないだ一緒にドラマをとっていたユンテヨン氏が、ユノユノの話題が前室で出たときに、妙に入れ込んだ様子で、いい子だ素直だと、褒めあげる。
適当に相槌を打っていたものの、途中で馬鹿馬鹿しくなって、タバコのふりをして席をはずすと、次のシーンに呼ばれた年配の大御所俳優と一緒に廊下を歩くことになり、
なんなんですかね、あれ、
テヨンさんて、あっちの人ですか?
と笑うと、
味のある演技で毎クールドラマにでずっぱりの、オフでは気難しくて業界では有名な俳優が真顔で、
会ったら分かるよいい子なんだ、
義理固くってな、と言い出してびっくりして、あわてて適当に話を合わせて、その場を離れたことがあった。
どうやって取り入ったんだ?
アルコールに犯された脳は不都合な、不愉快な記憶は遠ざけて、考えて楽しい思考だけを追う。
ユイとは、また、始まりそうな予感があった。
共通の友人のパーティで久しぶりに会ったときには、普通に会話もできて、ケータイを変えたとパーティホストに番号を教えていたのを横で聞いて、そのあと電話をしたら驚いていたけど、許してくれた。
マンションは変わってないようだったから、遊びに行ったら部屋にあげてくれて、
半年前、別れたときもこれといった理由もなく、他の男が出来たのか、と聞いても笑って、またどこかで会うかもしれない、狭い業界だから、喧嘩しないで別れましょうと、言われた。
だから、よりが戻せると思った。
なのに、部屋に入ったというのに、
飲み物も出さず、ずっとケータイをいじってて、
もう帰って欲しいと言い出し、
急な打ち合わせが入ったというから
車で送ってやるというとさっきお酒飲んだじゃない、うちの駐車場に車おいてっていいわよ、気にしないで私はタクシー使うわと、優しいことをいう。
それなら事務所の近くで待っていて、迎えにいってやろうと、ユイのタクシーをタクシーで追いかけたら、
こんな場所で、
カトクしたら、
遅くなるから迎えなんて悪いからいい、と
嘘をついた。
嘘をつかれるのが、一番嫌いだ。
「何か飲まれますか?」
目の前の紅唇が、ぽってりと俺を誘った。