☆CHERRY TREE ☆ -9ページ目

☆CHERRY TREE ☆

~Cut it out you natural-born coward~

消火器がダンディで気が利く場合


「ただいま」と私は言う
「おかえり」と君は言う
テーブルには角砂糖二つ入りの
私のためのコーヒー

ドラマは録画済
洗濯物は片付いて
カレンダーには私の
明日のto doリスト

私が眠れなければ
枕元でそっと贈ってくれる
バリトンの子守唄
私が弱音を吐くと
「お前を撫でる手が欲しい」と
君はため息をついた


「おはよう」と私は言う
「おはよう」と君も言う
テーブルにはホットミルクたっぷりの
私のためのアッサム

私のリズムも
私の好みも
私の気分も
知り尽くした私の消火器

君は約束をした
中身を出し切って死ぬ時まで
お前を守り続けると
私も約束をした
いざという時はこの手で
君を使い切るからと

ある夜誰かの悲鳴で目覚めた
いつのまにか焦げ臭い部屋
何が起きたのかもわからないままに
燃えるタンスが倒れてきた


君がつっかえ棒になって
倒れ切れなかったタンスの下で
背中に穴の空いた君の姿を
無傷の私は見ていた

「穴から漏れた粉末で
周囲の火は消えただろう
俺を動かせばタンスが倒れる
早く独りで逃げるんだ」

「勝手に守って居なくなるな!」
私の叫びは炎に溶けて
駆けつけた消防隊に
攫われて独り救われた


私も約束も守った君と
君も約束も守れなかった私
ごめんね
とても不公平だけど
ダンディで気が利く君の場合は
許してくれるんだろうな