「不倫する女」 マサミの悩み。

激情と自制。ともすればいってしまいそうになる気持ちを、いろんな説得材料で自分を自制する。でもわからないのです。後悔したくない、失敗したくない。

不倫という甘い時間とせつなくつらい時間。せつなさと未来のなさと道徳観が勝ったあのとき。選択を後悔はしていないけれど、違う選択をしたらどうなっていたのかと考える。すべてをうけいれ、納得できないでいる。一緒になることができたら違う自分がいる、と想像してしまう。

ついつい、といつめたくなる。確認したくなる。今、ではなく、将来の約束。

未来の確約がほしい。しかも、幸せになる。幸せになるのはどちらなの。どの選択が正しいのか。教えてほしいと、何かに頼りたい。そんな自分にダメだしをだす。

だから自分の足でたちたいと思う。外側にふりまわされない自分になりたいと思う。

どんなときも心の奥は平穏で柔らかなみずみずしい自分でいたいと思う。

いつまでも大事にされ、愛されるかわいい女性でいたい。

社会的に成功し、認められる女性でいたい。

好きな人に一緒にいたいと思い続けられる自分でいたい。


平凡な一日。小さなできごとはあっても、大きな変化や心震わすような出来事のない私の日常。

そう思っていたころ、私は自分の心に鈍感だったのかもしれない。ドラマティックな恋や贅沢な日常。欲しい現実を手に入れるのは一部の人と、映画やテレビの中の虚構と思っていた。でもそうではなかった。

ドラマや映画は、誰の心にもある欲望やかたちにしたい日常を、見せてくれているだけ。自分の心と対話する。きちんと見つめることを始めた日から、私たちの日常は、ドラマティックに動き始める。

誰のものでもない。自分の人生。思うとおりに、望むままに、夢をかたちにできるのだ。

人の数だけドラマがある。あの日、何を感じたのか。あの日、何を決めたのか。その先に、明るい光がまっていることを信じて。

生きる、ということは、何かを決め、動く、ということ。そこにドラマが生まれる。

日常の中に、わたしの心が映し出されるドラマが現れる。どんなドラマも自分でつくりだせる。どんな自分であっても、人生において、まぎれもない“主役”。