アビガンの臨床試験は、恐らく『カイ2乗検定』という統計的仮説検定から有意差なしという結果を導き出したはず。
カイはアルファベットのxに似たギリシャ文字のχのことである。
仮説検定なので、「◯◯しない」という仮説を立て、それを棄却するというダブルネガティブな方法を取る。
アビガンの臨床試験の場合、『アビガンを投与してもウイルス量は減少しない』という仮説となる。
この仮説のことを『無に帰する仮説』なので、帰無仮説という。
実際に投与した患者さんと投与しなかった患者さんのウイルス量を調べて、先のカイ2乗検定という統計的手法を用い、両者のウイルス量の差が誤差ではなく薬の効果があった場合を『有意差あり』とし、誤差と効果の区別がつかなかった場合を『有意差なし』と判定する。
有意差ありの場合には、『アビガンを投与してもウイルス量は減少しない』という帰無仮説が間違っていた(統計的には、棄却するという)ので、『アビガンを投与してもウイルス量は減少しないことはない』すなわち、『アビガンを投与したらウイルス量が減少する』ということになる。
有意差なしの場合には、『アビガンを投与してもウイルス量は減少しない』という帰無仮説が正しい訳ではなく、ただ単に効果がなかったのか、データ(研究対象者)が少なかったなのかは分からない。
だから、『アビガンの効果がなかった』と断定することは間違いなのである。