“今日は塾がある日だ”

 

 

彼の名はみのる。小学校6年生である。学校が終わったので、これから新横浜にある教室に向かうところである。

 

 

彼は塾に着き、教室に入った。

 

 

今日は国語の授業で、1時間目はテストであった。

 

 

休憩時間が終わり、2時間目はそのテストの解説から始まる。

 

 

“結構、難しかったなぁ”

 

 

このテストの採点は自己採点なので、先生の解説を聞きながら彼は自分の点数を付けていった。

 

 

自己採点が済んだ彼の点数はなんと96点だった。

 

 

しかし、残念なことに彼は自己採点をいいことに点数を上乗せしてしまったのである。

 

 

“まぁ、いいかぁ・・ 提出するわけでもないし・・”

 

 

彼はその点数を見ながら、しばらく自己満足に浸っていた。

 

 

“では、この問題ができた人は手を挙げて”と先生。

 

 

彼はそのとき、反射的に手を挙げてしまったのだが、周りを見てみると手を挙げているのは彼だけであった。

 

 

この教室は成績が優秀な生徒が集まるクラスであったため、彼はプレッシャーを感じ、嫌な汗をかいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“じゃあ、君の解答をみんなに聞かせてごらん”先生が彼に言った。



“こんなことになるなんて・・みんな優秀だから僕が答えたらズルしたのがバレちゃうじゃないかぁ”



模範解答と一言一句、違わずに答えてしまったら完全にバレると思い、彼は必死にアドリブで自分の言葉に変えて答えた。



彼は運良く、その能力に長けていた。



なんとか、教室の優等生たちに気付かれずに済んだ。



“危ないとこだった・・”



しかし、このことによって、彼は難問の模範解答とほぼ同じ解答をした秀才ということになってしまった。



休み時間になると生徒たちが“秀才”の周りに集まってきた。彼らは彼に対して興味津々であった。



“いつもどんな勉強をしているの?”だとか、“どんな参考書を使っているの?”やら、短い休み時間の間に彼は質問攻めにあった。



心の中では穏やかではなかったが、辻褄を合わせるために彼は背中に冷や汗を感じながら、“当然でしょ 私ですから”という態度をなんとか貫き通した。



このとき彼は時間を知らせるチャイムに心から感謝した。



最後の3時間目の講義では先生が自分に何か振ってくるのではないかと彼は内心ハラハラしていた。何より周りの生徒の目が気になった。












彼はこの教室の優等生が誰も答えることができなかった難問に正解した“ヒーロー”にすっかりなってしまっていた。



彼らのテンションが上がっているのを彼は手に取るようにわかった。それと同時にそれを


裏切ることが自分にとって何を意味しているのかも・・。



3時間目の授業は、彼は最初から緊張しっぱなしだった。



ちょっとした動作にも気を遣うような感じだった。



そのとき彼はたまたま消しゴムを机から落としてしまった。



それを拾おうと彼は手を伸ばした。



そのとき、特殊な緊張感の中、反射的に彼はこう思った。



“頭のいいヤツの落ちた消しゴムの拾い方”



彼は念仏のようにそのフレーズを頭の中で口にした。



彼は机の下にある消しゴムを拾おうと思ったが、一旦、止めた。



そして、皆が見守る中、静かに教室を出た。



“どうやったら納得のいく拾い方ができるんだ?”



彼はしばらく考えた。



“頭のいいヤツは何かしらのギャップを持っている人かな”



“てことは、消しゴムを拾うまではゆっくりで、拾ったあとは素早く・・スローアンドクイックだ”















彼はこれでいこうと思い、再び教室に戻った。



皆の注目を集めながら彼は静かに椅子に座った。



みんなが注目している中、彼はゆっくりと消しゴムに手を伸ばした。



時間をかけてやっと消しゴムを手に取った。



“スローアンドクイック”



彼はギャップをつけようと頭を思い切り上げた。



しかし、頭を勢い良く上げた瞬間・・。



“ガンッ”



机の下の平らな部分に頭をぶつけてしまった。



張り詰めた緊張感が破られ、教室は笑いに包まれた。



このときから彼は、“秀才”から“面白い人”に変わったのであった。











「アメリカン」


靴を履いていることを忘れてしまうくらい軽いため、靴を脱ぐ所でうっかり土足で上がってしまうことから

“夢”それは まるでブラックボックス


“夢”それは まるで暗黒空間


夢という形の中に 何かを入れれば


どんなものでも跡形もなく 消え去ってしまう

時間軸が錯綜する


いつもの見慣れた景色が 次第に別の顔を見せ始める


こんなとき 時計は無力だ


秒針の音が ただ虚しく音を立てている