“じゃあ、君の解答をみんなに聞かせてごらん”先生が彼に言った。



“こんなことになるなんて・・みんな優秀だから僕が答えたらズルしたのがバレちゃうじゃないかぁ”



模範解答と一言一句、違わずに答えてしまったら完全にバレると思い、彼は必死にアドリブで自分の言葉に変えて答えた。



彼は運良く、その能力に長けていた。



なんとか、教室の優等生たちに気付かれずに済んだ。



“危ないとこだった・・”



しかし、このことによって、彼は難問の模範解答とほぼ同じ解答をした秀才ということになってしまった。



休み時間になると生徒たちが“秀才”の周りに集まってきた。彼らは彼に対して興味津々であった。



“いつもどんな勉強をしているの?”だとか、“どんな参考書を使っているの?”やら、短い休み時間の間に彼は質問攻めにあった。



心の中では穏やかではなかったが、辻褄を合わせるために彼は背中に冷や汗を感じながら、“当然でしょ 私ですから”という態度をなんとか貫き通した。



このとき彼は時間を知らせるチャイムに心から感謝した。



最後の3時間目の講義では先生が自分に何か振ってくるのではないかと彼は内心ハラハラしていた。何より周りの生徒の目が気になった。