僕らは“現場”に到着し、早速彼らに会った。


話を聞いてみると、彼らは世間で言われているニートやフリーター、引きこもりであることがわかった。




彼らは人がいなくなった今の状況のほうがいいと口を揃えて言った。こうなる前は自分のやることがなかったり、あったとしても、競争して他人を蹴落として取らなければならなかったため嫌気が差していたそうだ。また、彼らはこの生活を始めて自分の居場所とは自分のやるべきことがある場所だと気付いたと言った。




僕は今まで人生において表面的にはほとんど“傷”を負ったことはない。つまり、経歴上はクリーンだということだ。僕は中学受験もし、私立の進学校に通い、現役で入った一流私立大学を卒業し、現在はいわゆる人気企業に勤めている。




今まで、自分が“ポジション”を獲得することだけを考えてきたためか、他の人たちのことなど考えている余裕なんてなかった。さっきの若者の話を聞き、僕は少しだけショックを受けていた。




ポジションが出来た今、彼らは本来、別の人間がついているポジションにつき、生き生きと活動していたのだ。世間のイメージとはまるで違う現実がここにはあった。




初めはあまりわからなかった彼らの活動が月日が経つごとに活気を帯びるようになってきていた。




“場所さえあればか・・”




僕は小さい頃からあまりそういうことは考えずに生きいくことができた。場所というのは限られていて、“競争”を通して獲得するものらしい。小さいときから彼らはそういうことを意識して生きてきたのだろうか。




この街が僕らだけになってもう何ヶ月以上も経っていた。街には当初思っていた以上の人間がいた。




場所とはいつも十分な数が揃えられているわけではないのだが、社会が成熟し、始めから住みやすいことが当たり前のところで育つとなかなか気付きにくい。