ペナルティーエリアで(1罰打のもと)救済を受ける場合

2019年3月20日

(2024年5月13日加筆)

規則17 ペナルティーエリア

1 球がペナルティーエリアにある場合に限定して整理します。

球がペナルティーエリアにある場合,プレーヤーはそのペナルティーエリアの外からプレーするために1罰打で特定の救済の選択肢を使用することができる。

  1罰打で救済を受けるか,ペナルティーエリアにあるがままに無罰でプレーするかはプレーヤーの選択です(17.1b)。

  ペナルティーエリアにあるが,見つからない球,例えば水没してしまった球などに対する救済(17.1d)について,規則はペナルティーエリアに止まったことが「分かっている,または事実上確実」という要件を必要としています。この要件がない場合は17.1d⑵ の救済は受けられず,紛失球となり18.2,14.6に従って,ストロークと距離の救済を受けることになります。

 

2 ペナルティーエリアの球に対する救済(要件)

  ゴルフ規則17.1dは,「プレーヤーの球がペナルティーエリアにある場合(分かっている,または事実上確実な場合を含む),プレーヤーには次の救済の選択肢がある。」と規定しているのです。

⑴  ストロークと距離の救済

⑵  後方線上の救済

⑶  レッドペナルティエリアにおけるラテラル救済

  この規定は,体系的に妥当な規定であると言えるでしょうか。

  三つの救済のうち⑴の救済は,球がペナルティーエリアにあることを理由として認められた規則ではありません。ましてや,「プレーヤーの球がペナルティーエリアにある場合(分かっている,または事実上確実な場合を含む)」である必要など全くありません。ストロークと距離の救済は,規則18.1を見れば明らかなとおり,「ストロークと距離の罰に基づく救済はいつでも認められる」とされており,これが根拠です。もちろん,「プレーヤーの球がペナルティーエリアにある場合」にも認められますが,球がペナルティーエリアにないことが明白でも,あるいは紛失していることが明白でも,球がジェネラルエリアにあることが分かっていても,気に入らない球筋であったという理由だけでも,常に認められる救済です。

  前記 ⑴の規定は全く必要ありません。というより,17.1dに,「プレーヤーの球がペナルティーエリアにある場合」と如何にもそれが要件であると誤解されるような規定の仕方で,⑴の救済の選択肢があると規定しているのは,規則制定者の思い付き以外の何物でもなく,間違いという他ありません。

  ゴルフ規則はプレーヤーに対し,17.1d⑵ のペナルティーエリアの球に対する救済の他に,全く別の根拠に基づくストロークと距離の救済もありますよと,如何にも親切に規定したつもりなのです。もし,そのつもりなら,この規定だけを読んでも,誰にでも理解できる,もっと分かり易い規定の仕方があるはずです。多くのプレーヤーを混乱させているだけです。

 

3 ペナルティーエリアの球に対する救済方法(その1 イエローペナルティーエリア,及びレッドペナルティーエリアに共通)

  ゴルフ規則17.1d⑵ 後方線上の救済

  プレーヤーは元の球か別の球を救済エリアにドロップすることができる。この場合の救済エリアは,次のとおりです。

 ・基点

  17.1d⑵ のペナルティーエリアの球に対する救済エリアは,ホールと元の球がそのペナルティーエリアの縁を最後に横切ったと推定される地点とを結んだ後方線上となる基準線に基づくとされています。

ゴルフ規則は,この基準線について定義しておくべきだったと思います。後方線上の救済は,その線上の後方であれば距離に制限がなくプレーヤーが選択したコース上の地点です。従って5つのコースエリア(規則2.2)のどこでもよいのです。同じペナルティーエリア以外であるなら(17.1d⑵,同⑶),他のペナルティーエリア,バンカーなど,どのコースエリアでもよいということを明確にしておくべきです。

  そして基点は,前記基準線上で,(球が縁を最後に横切ったと)推定した地点よりホールから後方で,プレーヤーが選択したコース上の地点と規定し,その地点をティーなどで示すべきであるとしています。

 

 ・基点から計測する救済エリアのサイズ

   1クラブレングス。レッドペナルティーエリアの救済にある2クラブレングスと混同しないようにしてください。

 ・救済エリアの場所に関する制限

   基点よりホールに近づいてはならない。この規定があるために,基点を選択したらその地点をティーなどで示すべきであるとしているのです。

  先ほども申し上げましたが,後方基準線とは,ホールとある一点を結んだ直線で,その一点よりホールから遠い線をいうものと思います。しかし,プレーヤーが基点として選択できる基点は,後方基準線上であればどこでもよい場合と,選択できる基点に制限がある場合があります。プレーヤーが基点として選択できる範囲(救済エリアの場所に関する制限)を明確にしておくべきです。

 

追記

  以上解説した2019年の後方線上の救済規則は,2023年の規則で変更されています。2023年の変更は,極めて妥当性を欠く変更で,次回の改定時に再び2019年の規則に戻すのではないかと推測しています。本ブログ内の(後方線上の救済が受けられる場合)を参照してください。

 

4 ペナルティーエリアの球に対する救済方法(その2 レッドペナルティーエリアの球にのみに適用されるラテラル救済)

  ラテラル救済については詳細な定義がされておりません。

「ホールとある一点(基点)を結んだ線に対し,ホールに近づかないために,その基点で直角に交差する線(正確には曲線である)を求め,且つ基点から2クラブレングス以内の範囲に球をドロップする救済」とでもしましょうか。

 ・基点

   元の球がそのペナルティーエリアの縁を最後に横切ったと推定した地点。

 ・基点から計測する救済エリアのサイズ

   2クラブレングス。17.1d⑵ 後方線上の救済の1クラブレングスと異なるので注意してください。

 ・救済エリアの場所に関する制限

   基点よりホールに近づいてはならない。

   同じペナルティーエリアは17.1d⑵,同⑶で許されませんが,他のペナルティーエリア,バンカーなど,どのコースエリアでもよいとされています。

   もう一つ注意すべきは,ドロップした球が救済範囲に止まっていればプレーヤーのスタンスがペナルティーエリア内に掛かっても,ドロップは正しく完了しています。つまり,完全な救済のニヤレストポインント(定義参照)のように障害がなくなる所という要件はないので,再ドロップはできません。再ドロップをすると誤所からのプレーとなります。

 

5 以上,球をドロップする場合の具体的救済エリア(1罰打のもとの場合)で,一番問題の多いペナルティーエリアの球に対する救済について整理しました。もちろんこれ以外にも,罰ありで球をドロップする場合がたくさんあります。ペナルティーエリアの球に対する救済において必要ないのではと指摘したストロークと距離の救済,そして紛失級,アウトオブバウンズ,暫定球(規則18)。さらにアンプレヤブル(規則19)などです。

  それらの救済を受ける場合,球をドロップする場合の具体的救済エリアについては,それぞれの項目で説明した方が分かり易いと思います。ここでの説明は省略します。

以上