別に、
「ほぼ何もない」
ってのはわかっている。
何も特別なことは起こらない。
フツーの毎日が通り過ぎていくだけだ。
でも、
「春」になると、
どうしてもウキウキしてしまう。
期待してしまっている自分がいるのだ。
経験上、
頭では十分承知している。
「いや、もしかしたら・・・もしかしたらすごいことがあるかもしれないよ?とてつもない出会いや出来事があるかもしれない・・・・1パーセントくらいの可能性はあるかもしれない・・・・まあ、でも・・・・まあ、まず、ないけどね・・・まあ、いつも通りの毎日だよね・・・・」
と。
だが、
「春」のヤローは、扇動するのが天才的にうまい。
「おいおい~(笑)それは去年までのことだろう?今年の春はすごいぞ!すごい出会いあるぞ!すごい奴に会えるぞ!すごいかわいい子がやってくるぞ!すごい出来事が待ってるぞ!ほらぁ!用意はいいかぁ!?」
この時期、
この煽り文句に完全にあやつられたまま、
俺は「うおおおおお~!」とテンションを極限に高めて、
世間に飛び出していく。
そして、
必ず大失態をやらかす。
今日は、
あるレストランの「ランチ・バイキング」にて、大きく転倒。
アイスコーナーの全域に、
カレーをぶちまけてしまった。
静まりかえり、白ける店内。
せめて素直にあやまれば良いものを、
「春」の魔術に憑りつかれていた俺は、
店内の静寂はお構いなしに、
「『すしざんまい』でマグロの解体ショーがあるように、ここではカレーのぶっかけショーを流行らせるしかないですなあ!ガハハ!」
と、
不快極まりないジュークを放出。
どんな客に対しても、
丁寧・丁重に接してくれる、我が日本の外食産業とはいえ、
さすがに堪忍袋の緒が切れたのだろう、
店長から、大声で、
「お客様、お帰りくださぁぁぁぁい!」
と言われる始末だった。
「春」のせいなんだ、悪いのは俺じゃない・・・・・
そう自分を慰めながらの、
帰りの中央線は、
真冬よりよっぽど厳しかった。