先日、青山にあるBROOKS BROTHERSの二階で開催されていた新しい合同展示会「AND. SHOWROOM」に出展されていた_NAPE(ネープ)のメンズを見にいって来ました。
デザイナーの山下達磨氏は数年前からお仕事させて頂いたり、いろいろなことを語らったりしたことがあり、ご本人の性格通り、遊び心ありながらも真面目で美しいコレクションになってました。
今回はAND. SHOWROOMに出展する為にメンズオンリーのコレクションでしたが、実はレディースも充実しており、10月にはフルコレクションで単独展示会を行うとのこと。なので、その時にブランド自体をきちんとご紹介できればとおもいますが、せっかくなのでメンズラインの中で面白いアイテムをピックしました。
こちらはMETALLICAのパロディーTシャツです。その昔はコレクションブランドが作るパロディーTシャツをよく見かけましたが、最近はめっきり減ってしまっています。海外ではスタイリングの中にパロディーTなどの遊び心のあるアイテムをいれて、上級なおしゃれを楽しむ方がまた増えていますが、日本ではまだそこまでのおしゃれを着こなせる人が少ないからでしょうか?
さて、なぜ私が数多くある作品の中でこのパロディーTシャツを選んでご紹介しようと思ったのか、皆様お分かりでしょうか?
こちらのパロディーTシャツ、ものすごくプリントにこだわっています。プリントって一般的には大きく分けてざっくり2種類あります:インクジェットプリントとシルクスクリーンプリント
インクジェットは版が必要無いので、何色も一気にプリントできます。白インクの出力が可能なので濃色のボディにもフルカラープリントが可能です。
シルクスクリーンは名前の通り、 一色につき1版つくってインクをのせてプリントします。基本は手作業が多いです。単色のプリントやグリッタープリントなど特殊プリントが可能です。
ご覧の通り、こちらのTシャツはシルクスクリーンプリントなのですが、なんと一色なのにもかかわらずグラフィックに立体感を持たすように、合計で6版使っています!
まずわかりやすいところで、パロディー部分「METALLICA→MATSULICA」をジェルプリント(1)になっています。ジェルの様な質感で透明な為、生地の色目を活かしたり、プリントの上にのせて立体的な仕上がりにします。
次に手や雲部分。こちらはシルクプリントの中でも本当に珍しいグラデーションプリント(2)になります。グラデーションプリントはとてもむずかしく、シルクプリントでは不可能と言われていました。グラデーションを表現する時は、単色でもインクジェットプリントをするのが当たり前でしたが、_NAPEはあえてシルクスクリーンプリントにしております。
そして、十字架のクラックプリント(3)。その後ろのラメ(4)や草部分(5)のプリントで構成さらています。
では、6枚めの版はなにかわかりますか?一番はじめにインクジェットは白インクの出力が可能なので濃色の生地にプリントできるとお伝えしたとおもいます。でも、シルクスクリーンプリントではできません。白は黒にプリントすると、黒に吸収されてしまい、白という色がでません。その為、どうしたらいいのか。
以上の5版をプリントする為の抜染用の版を起こします。
その版があって、初めて完成されるこのパロディーTシャツ。
BLACKに至っては、ブリーチ材を飛ばし、スポットで色を落とし、穴まであけているので、その手間暇はただただ「パロディーTシャツ」というのは勿体ないくらいです。
ここまでこだわりを持ったプリントをしたパロディーTシャツは、ただの遊び心あるものではなく、「アルチザン系パロT」と言っても過言ではないとおもいます。
ぜひ、こういったプリント技術なども今後注目してもらえたら、またTシャツを見る楽しさも変わるとおもいます。
では、最後までお読みいただき、ありがとうございます!




