こぼれた しづく -10ページ目

こぼれた しづく

平坦な毎日からこぼれる感情。

手が生み出した絵

心が生み出した感情; 疑問,怒り,悲しみ,それから喜び。

それらはここに残しておこう。

それらはきっと,どんどん離れてゆく「こども」と「おとな」をつなぎとめる

一筋の架け橋に。

無視をされたから殺した…。
16歳の男の子が殺される。
殺したのは高校の同級生。
きちんと,自分の意見に耳をかたむけてほしかったにちがいなかった。



むかつくっていってるだろ,つらいっていってるだろ



自分のサインに誰も反応しないとき,

もしかして自分ってもとからいなかったんじゃないかと感じる。

そういうのが,風みたいにふうっと首元をふきぬける。

その瞬間,その風にのって自分の体が砂になって消えていくのがわかる。

風は,そこにいる友人とは反対方向にふく。

だからこの砂で誰かがくしゃみをすることもない。

彼らが笑いあってキラキラしている間,自分の体はふかれて消えていった。



むかつくっていってるだろ,つらいっていってるだろ,きづいてくれって言ってるだろ!



一番近い誰かに向けられた殺意は,自分が消えてしまう前にふりしぼった最後のヒトフリなのだ。

本当はその人の肩にそっとふれたかった。

―ぼくもまぜて!

そう言いたかったけど,また誰も反応してくれなかったら?

それなら,必ず誰かが見てくれる方法を選ぼう。

そうすればみんな,ぼくのほうを向かざるをえないだろう。






―やっと見つけてくれた!

消えかけた体を返り血で染めて,世間(みんな)に笑顔を投げかけるのだ。









―あなたが生きているだけで,幸せよ。

もし,腕の中に抱かれているときから,そんなふうに言われていたら,その人生はどう変わっただろう。

―お母さん,こんなことがあったの。

もし,きちんと座って,その言葉に耳を傾けてくれていたら,その体は砂に変わったのだろうか。



きらきらと輝く人を見るのが大嫌いだ。

その人たちは「注がれて」きたにちがいなかった。

そうして「豊かな」者が,「乾いた」者を軽蔑する。

母,友人,同僚という心の潤いの源を,泉を,豊かな者がすべて独占し,乾いた者は砂になるまで軽蔑され,やがては忘れられる。

次に豊かな者が彼らを思い出すのは,彼らが自殺や殺人という手段を選んだときなのだ。

―やっと世間(みんな)が見てくれた…!

愛を勝ち取る彼の戦争はここで終わり,返り血をふくんだ砂はどろだんごとなった。

もう消えずに済むのだ。




―学生時代から変わった子でした。
―死んだ人がかわいそう。



豊かな者は,乾いた者の心の核心にふれることはなく

どろだんごは乾き,また砂にかえっていった。





生きていることが,砂漠を旅するのと同じに思える。

今ふみしめている砂漠の砂も,きっとだれかの体の一部だったのだろうと思う。