- 魅惑の恋泥棒 (リンクスロマンス)/幻冬舎
- ￥940
- Amazon.co.jp
自身の容姿も含め、美しいものを
こよなく愛する美貌の泥棒・柳井将宗は、
ある美しい弥勒菩薩像に目をつける。
像を盗み出すため、
その像がおかれている
「海上の美術館」とも呼ばれる
フランスの豪華客船へと
乗り込んだ柳井は完璧に女装し、
菩薩の偵察にいそしんでいたが、
女装を見破り
忌々しくちょっかいをかけてくる男がいた。
医者という肩書きを持つその男は、
沖孝久と名乗るが、実は彼も
弥勒菩薩像をねらっている同業者だった。
しかし沖からは、柳井のキス一つで
菩薩の権利を譲ると提案され…。
*:..｡o○☆ﾟ･:,｡*:..｡o○☆*:..｡o○☆ﾟ･:,｡*:..｡o○☆*:..｡o○☆ﾟ･:,｡*:..｡o○☆
どこからどう見ても完璧っ
という人の、
さらに上を行く人がいるんだな～と。(笑)
柳井将宗くんは、旧華族の柳井伯爵家の末裔です。
「美」に関するもの全般に造詣が深く
元学芸員さんでもありましたが
当時の上司からパワハラやセクハラを受け
退職を余儀なくされたうえに、濡れ衣をきせられ
学芸員関係で再就職の道を断たれるという
とても可哀想な過去を持っています。
現在は大学の講師として働いてますが
没落貴族であるという柳井家の家計は
お世辞にも潤沢とは言い難く
アンティークの販売を副業にしています。
亡くなった祖父も父も、お坊ちゃまなので
お金に困るたびに悪い人に騙されては
価値ある美術品を安く買い叩かれて
巻き上げられていたそうで、
それを取り戻したいというのも
泥棒をやっている理由です。
あとは「美」を成金趣味などで不要に飾って
持ち主はご満悦だけど美的センスは皆無の場合
それが許せなくて盗む場合もあります。
一方、沖孝久さんは形成外科のお医者さんです。
ちゃんと開業医としてお仕事しています。
泥棒としての、柳井くんのさらに上を行くスキルは
義賊として活躍した祖父の技を受け継いだそう。
祖父は義賊が必要な時代は終わったのだとわかっていて
でも技術は残しておきたかったということのようです。
「魅惑の恋泥棒」では柳井くんと沖さんの出会いと
弥勒菩薩をめぐる２人の駆け引きが書かれ、
一生懸命うまく騙したつもりの柳井さんの前に
沖さんが先回りしてリードするという
「お釈迦様の手のひら」的な展開になり
柳井さんは流れで沖さんの協力を
受けることになります。
続く「街灯ピカレスク」で柳井くんは
ひとりで危ない橋を渡ってでも
過去の屈辱を晴らそうとします。
柳井くんは自分で行動できる
頭脳も行動力も泥棒スキルもあるし
「家族もとっくにいないし
天職と思えた学芸員の仕事もないし
失うものはないから」と
外国の怖い犯罪組織と個人で接触し - どう考えても危険なことをやろうとしますが 取引の最中に沖さんが乗り込んできて
- オオカミの言い分 (リンクスロマンス)/幻冬舎
- ￥940
- Amazon.co.jp
「オオカミの言い分」は、中堅のやり手弁護士・末國と
まだ新人に近いピュアな弁護士・高岸のお話です。
こちらも末國先生が高岸先生のことを
「かわいい」と気に入って
違う事務所なのにアドバイスしたり
しょっちゅうご飯に誘ったり
一緒に開業しようと口説いたり
何かとかまっています。
ご破算になってしまいした。
「復讐のための、１回の取引」として考えれば
完璧だと思った計画も
沖さんから見れば、やはり素人の考えでした。
「１回だけで済むわけがない」とのこと。
１度でもああいう連中と繋がってしまったら
お金、家族、職場、薬、なんでも使って脅して
闇ブローカーの手先に使われてしまうだろう…と。
最初の弥勒菩薩の件では
キス一つ…では済まなかったけど
弥勒菩薩は譲ってもらえて、
学芸員のときの上司の悪事を暴いて失脚させ、
有能な医療秘書として雇われて、
流出した盗難品や、柳井家が買い叩かれた美術品を
取り戻していこうとしています。
沖さんには、柳井くんのやること全部お見通しで
「広いお庭で放し飼いされてる」的な感じもしますが
柳井くん自体がとてもハイスペックなので
守られるだけじゃなく、ちゃんと頼りにされてます。
片方だけが包容力や経済力が大きいと
最初は賢い子の設定だったもう片方が
いつの間にか、素直で優しい性格が取り柄の
「おバカな天然ちゃん」に退化して
残念な展開になる場合もあるのですが
（そのほうが片方を持ち上げやすいから？）
かわい有美子さんの作品では
そういうことはあまり記憶にないので
安心して読めます。
ちなみに、弁護士ものの
「オオカミの言い分」という作品の
末國先生がちょこっと出てきます。
沖さんの従兄弟なのだそうです。
顔が似てるもんねっ
…ってイラストレーターさんが同じなだけですが。