日本郵政は2017年6月22日に株主総会を開いた。もちろん株主の一番の興味は前期の連結最終赤字についてだろう。日本郵政は買収したオーストラリアのトールホールディングスという物流会社の収益が当初の見込みよりも小さいことから、減損損失を計上した。その額なんと4,000億円。買収額が6,000億円ほどだったことから、約2/3を損失計上したことになる。
企業買収のほとんどが失敗するとは言われるものの、失敗の額があまりに大きいのは、買値が高すぎたのだと推測される。日本郵政は上場する以前、上場後の成長戦略を描けないことが問題視されていた。日本国内は少子高齢化が進み人口も減少していることに加え、年賀状離れやヤマトや佐川など宅配企業との競合が表面化しており、国内の郵便事業だけでは先細りになることは明らかだった。もちろんそんな会社が上場したところで誰も日本郵政の株を買ってくれないというわけだ。
そこで、当時の社長が考案したのが、海外への事業展開だ。海外企業を買収し、日本郵便が長年培った物流ノウハウを取り入れることで、シナジー効果を発揮できるということだった。
そして、選ばれたのがオーストラリアの物流会社トール・ホールディングスである。この会社の買収により、アジア・オセアニアの物流を一気に取り込む計画だったのだろうが、買収を行った時期は原油価格が100ドルを超える(現在45ドル程度)原油バブルだった。オーストラリアなどの資源国は原油価格が高いと経済成長は高まり、物流も増える。そんな時に、買収提案をすれば、トール側の経営陣は強気な買収価格を提示できたのだろう。
原油価格が一定であればよかったが、そんなわけにはいかない。アメリカのシェール革命の影響を受け、原油価格は一時25ドルまで下落し、そのあとを追うようにオーストラリアの景気も落ち込んだ。そして、経済が萎めば、物流も萎み、トールの利益も萎んでしまったという結末だ。
トール・ホールディングスの買収により、海外事業を伸ばしグローバル企業の仲間入りをすることに期待していた投資は少なからずいただろうが、期待と予想は別だ。
日本郵政自身も原油バブル崩壊後のオーストラリア経済を予想することができたはずだ。今回の損失4,000億円は日本郵政の見通しの甘さが招いた予想できた結末であり、一番の被害者は期待を込めて日本郵政株買った株主だろう。
