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 平成27年の採点実感の中で,今後の答案作成に役立ちそうな部分をピックアップしていきましょう。

 原文はこちら:http://www.moj.go.jp/content/001166215.pdf

 

【民法】

・複数の論点に表面的に言及する答案よりも,特に深い考察が求められている問題点について緻密な検討をし,それらの問題点の相互関係に意を払う答案が,優れた法的思考能力を示していると考えられることが多い。

 →問題によると思いますが,基本的には自らの立てた法律構成に即して,具体的に検討する必要があります。思いついた法律構成を羅列すれば良いというわけではないのですね。例えば,債務不履行,瑕疵担保責任,不法行為,不当利得の4つの法律構成を思いついたからといって,これをただ横並びに書いても仕方ないといえます。

 

・材木①の所有権の帰属を検討する際に,加工について言及する答案は必ずしも多くなかった。それらの答案の多くは,AB間における売買契約の目的物を丸太ではなく,材木①であると記しているのに対して,AB間における売買契約の目的物を丸太であると正確に理解している答案の多くは,加工にも言及していることからすると,問題文を注意深く読み,問題となる事実を正確に理解することができていないところに不十分な点があったものと推察される。

 →事案を正確に把握すること,問題文をよく読むことの重要性が分かる指摘です。この点を落としてしまうと,試験委員の要求の半分しか満たしていないということになってしまいます。こういうところに気づくかどうか,という意識で,普段の過去問演習を行ってもらえればと思います。

 

・本問では,AがDに対して請求することができる額について,AB間の関係を考慮に入れた検討をすることも期待されていた。材木②の価額は200万円であるから,材木②の所有者であるAは,Dに対して,200万円を請求することができるはずである。他方,材木②の材料に当たる丸太の価額は150万円であるため,Aが受けた損失を勘案するならば,AがDに対して請求できる額は150万円にとどまると考える余地もある。そこまで考察の及んでいる答案は少数であったが,正確な分析がされている答案も散見された。

 →法律構成を考えつつ,具体的な請求金額を検討する問題です。このような問題意識は,平成26年の設問2でも問われています。考察が十分でなくても,合格答案になりますが,普段の演習から,このようなところに気をつけてもらえればと思います。

 

・寄託契約に基づく保管料債権を被担保債権とする民事留置権の成否について正確に検討することができるかどうかが問われている。

 →留置権の成否を検討する際には,「被担保債権が何であるか」と,被担保債権の発生原因を具体的に指摘する必要があるわけですね。相殺や債務不履行,その他の問題でも同様に,対象となる債務を具体的に考察する必要があります。

 点数が伸びない答案は,そういうところを具体的に確定せず,ぼやっとした答案を書いてしまうものです。

 

・まず,留置権の制度趣旨等を援用して,本問において留置権の成立を否定すべきであるという結論は示しているものの,留置権の成立要件のうち,いずれが否定されることによりそのような結論が導かれるかが明らかでないものが一定数見られた。制度趣旨等に遡った検討をすることは重要であるが,それを法律論として主張するためには,問題となる規範を示し,その要件の解釈及び適用を通して結論を基礎付ける必要があることを忘れてはならない。

 →「趣旨から書く」とはどういうことか,という問題です。これについては,ブログでも言及しています。趣旨を書けば結論が出る,というわけではありません。

 

・留置権の成立を肯定する場合に,例えば,牽連性の要件のみを検討し,他の要件について検討しないまま,結論を導くものもみられた。ある者が主張する法律効果の発生を認めるためには,その要件の全てが充たされることが必要であり,一部の要件が充たされるだけでは法律効果の発生を認めることができない。これは,法の解釈・適用に関する基本であり,おろそかにしてはならない点である。

 →肯定の結論を出すためには,主要な争点となるもの以外の要件も検討する必要があります。

 なお,出題趣旨に,以下の記述があります。「なお,民事留置権の主張を認めるためには,その全ての要件が充足されていることを確認する必要があるのに対し,例えば,(i)や(ii)の要件について必要十分な検討を経てその充足が否定される場合には,民事留置権の成立を否定する結論を出すために,他の要件について検討する必要はない。そのような場合,他の要件について検討していないことを理由に不利に扱われることはない。

 この出題趣旨をどこまで一般化するかは,悩ましいところです。例えば,平成27年司法試験刑法で,窃盗罪の不法領得の意思が否定されることを理由に,窃盗罪の成立を否定するとします。その場合,客観的構成要件を検討せず,不法領得の意思だけ検討して,窃盗罪の成立を否定しても良いのでしょうか。

 もし,客観的構成要件を検討しないとすると,占有に関する大量の事実を落とすことになります。一方,論理的に考えれば,主観的構成要件で否定されるのだから,客観的構成要件を検討するまでもない,ということにもなりそうです。

 1つの説明としては,上記のような場合には,主観的構成要件は,客観的構成要件の後に検討するのだから,まずは客観的構成要件を検討すべきだということが考えられると思います。後は,配点割合や事実の分量から,ここを書いてほしいと出題者が考えているのかを,個別具体的に考えることになりそうです。

 

 

【商法】

・競業取引について取締役会の承認がないため競業取引規制違反が成立する場合には,その取引によって取締役又は第三者が得た利益の額が,甲社の損害の額と推定される(会社法第423条第2項)。本件では,このように推定される損害の額(以下「推定損害額」という。)は幾らなのか,すなわち,第三者である乙社が得た利益の額とすべきか,又は取締役Bが得た利益の額とすべきかについて,「自己又は第三者のために」という要件の当てはめとの論理的な整合性を意識しつつ,論ずることが求められる。

・さらに,本件では,Bの競業行為の結果,推定損害額とは別に,現に甲社に損害が生じているとして,会社法第423条第1項に基づく損害賠償請求が可能かどうかについても,検討する必要がある。

 →損害額の推定規定がある場合でも,具体的に何を損害と見るか,損害額はいくらなのかは,詰めて考える必要があるようです。

 


・この点について,問題意識を持ち,具体的な事実から結論を導いた答案は高く評価した。例えば,形式的な売買契約の個数や,それぞれにつき甲社の取締役会の決議があったことを指摘した上で,これらの時間的近接性,甲社の洋菓子事業部門の従業員の全員が引き続き丙社に雇用されたこと,甲社の取引先の全部が実質的に丙社に引き継がれたこと等を述べた答案がこれに当たる。加えて,洋菓子事業部門の売却に向けた甲社と丙社の交渉の経緯や,両当事者の合理的意思,株主であるS社が同部門の売却に反対する可能性が高いため,甲社の代表取締役Aが株主総会の特別決議を潜脱する意図で本件の取引を行ったと推測されること等の事情に触れた答案も見られたが,僅かであった。上記のうち,形式的な売買契約の個数や取締役会決議の個数に関する意識が希薄なまま,具体的な事実を丁寧に指摘せずに,漫然と実質的に一つの取引と見て,事業譲渡の該当性を論ずる答案も多かった。

 →この点は,現場思考問題だったと思います。このような一体性の有無については,刑法でも2つの実行行為を一体と見られるか,というような場面で論じる機会がある問題点です。そういった議論を応用すれば良いでしょう。「この部分は現場思考だ」と見切りをつけたら,後は一体性を肯定するための事情として何を使えそうかに留意しながら,一定の規範を定立できれば良さそうです。

 また,形式的には2つの売買契約だ,という形式論をしっかりと挙げておくことが,実質論を述べる際には重要だということも,意識できると良いでしょう。

 

 

【民訴法】

・民事訴訟法科目では,例年と同様,受験者が,……抽象論に終始せず,設問の事例に即して具体的に,かつ,掘り下げた考察をしているか,といった点を評価することを狙いとしており,このことは本年も同様である。

・単にYの合理的意思に合致するとのみ抽象的に論じる答案が多かった。やはり,なぜYの合理的意思に合致するといえるのか,どのような当事者の意思を尊重すべきなのかといったことを検討してこそ,上記課題につき具体的な検討がされたものというべきであって,このような答案が高い評価を受けることは困難であろう。

 →いつ一般論を書くかについては,このブログで指摘していますが,一般論だけでは答案としては当然不十分です。そして,具体的な言葉で説明することが必要です。「既判力が生じるのは,本件ではどの部分についてか?」,「既判力の矛盾,抵触が生じるのは,本件で何と何なのか?」,「当事者の合理的意思は,本件では何なのか?」,「本件では,何について自白が成立しているのか?」,そういう点に気を配って論述していきます。

 「矛盾」,「合理的意思」,「相当」,「正当」,「必要」などなどの言葉は,法的評価を伴ったものです。そういう言葉を使う際には,必ずその判断に至った理由を説明しましょう。これができるかどうかが試されています。

 

 

・問題文において,第一審判決取消し・請求棄却という結論の控訴審判決が確定した場合と相殺の抗弁を認めて請求を棄却した第一審判決が控訴棄却によりそのまま確定した場合とを比較して検討することが求められているにもかかわらず,比較検討をしない答案……がある程度存在した。

 →比較が求められている問題では,両者の話をした上で,どのように違うのか(どちらが妥当なのか)を明らかにしていく作業が必要だといえます。

 

・ほとんどの答案が,既判力制度の趣旨及び正当化根拠,既判力の積極的作用・消極的作用,当該作用がある場面の説明(前訴と後訴の訴訟物が同一である場合,前訴の訴訟物が後訴の訴訟物の先決関係である場合,前訴と後訴の訴訟物が矛盾関係である場合)といったことをまず,一般論として記載していた。しかし,そのような前提となる事項はおおむね正しく理解していると見られる一方で,結論として,「利得,損失及び因果関係についてのYの主張は認められない」とか,「Yが利得,損失及び因果関係としてその言い分にあるような主張をすることは許されない」といった抽象的な記載にとどまるものが極めて多数存在し,ほぼ全ての答案において既判力に関する一般論として展開されている積極的作用・消極的作用との関係を意識して具体的な論述を行っているものは,少なかった。

 →一般論は書くが,具体的検討ができていない,という話ですね。一般論は,具体的検討「なぜ,そのような主張が認められないのか」が問われているのですから,そこを掘り下げないと始まらないのですね。いくら既判力の一般論が正しくても,点数が伸びないのです。

 

・前訴の確定判決が甲に対する100万円の支払いを乙に命じたもので,これに基づき,乙が甲に支払った100万円について,これを不当利得として,後訴において乙が甲に対してその返還を請求したという事案を例にとると,民事訴訟法の授業では,往々にして,これを矛盾関係だから既判力が及ぶのだと説明して済ましてしまいがちではないかと思われる。しかし,受講者は,要件事実の授業において,不当利得返還請求の要件事実は,利得,損失,両者の因果関係及び利得に法律上の原因がないこと,であることを思考の出発点に置くよう訓練されているのであるから,民事訴訟法の授業としても,前訴確定判決の既判力はそれらの要件事実のうちどの事実の主張を遮断するのかについて説明をしなければ,実務家の卵に対する教育として不十分であると考えられる。

 →ロースクールの民訴法の授業の痛烈批判です。せっかく,ロースクールは実務家と連携して教育に当たっているのですから,その強みを生かしてもらえればと思います。

 平成27年の採点実感の中で,今後の答案作成に役立ちそうな部分をピックアップしていきましょう。

 原文はこちら:http://www.moj.go.jp/content/001166218.pdf

 

【刑法】

・甲乙丙の罪責を論ずるに当たって検討すべき論点には,重要性の点において軽重があり,重要度に応じて論ずる必要があったが,そのような重要度を考慮することなく,本問において必ずしも重要とはいえない論点に多くを費やすなどしている答案も見受けられた。

 →重要度を選別した,メリハリのある答案を書く練習というのが重要です。思いついたから書く,という姿勢では良くありません。事案上,争点になるのはどこか,という意識が大事でしょう。挙げられている事実がどれくらいあるか,というのも1つの目安です。また,刑法では複数の問題点を検討しなければならない以上,理由付けを書く場合にも,主要なものを1つ簡潔に書く,という意識が重要だと思います。

 

・法的三段論法を意識せず,事実を抜き出して,いきなり当てはめるという答案が散見され,法的三段論法の重要性についての意識が乏しいのではないかと思われた。もとより,前記のように重要度に応じて記述する必要があるから,全ての論述について形式的にも法的三段論法を踏む必要はないが,少なくとも,規範定立を意識した答案が望まれる。

 →原則形態としては,規範→事実摘示→当てはめ→結論の順で書くということになると思います。少なくとも,重要な論点については,このように書くべきです。しかし,全ての部分で,法的三段論法を厳守するのは,ほとんど不可能です。「規範定立を意識した答案」というのは,規範定立を省略して,当てはめの部分で規範に対応する文言を入れるという書き方を指していると思われます。ただ,そのような書き方でも,ある程度時間がかかりますから,全く争いない罪責については,「甲は,Aに対して◯◯という暴行を加え,よって,Aに全治◯週間を要する◯◯の傷害を負わせたから,Aに対する傷害罪が成立する。」というようなごく簡潔な書き方で触れれば良いと思います。

 

・「住居」侵入罪の成否として論じているものも見受けられ,法的概念についての理解が不十分なのではないかと考えられた。

 →建造物侵入罪と住居侵入罪は,同一法条でも別物だ,ということのようです。やりがちなものとしては,略取と誘拐,強盗致傷と強盗傷害,強盗致死と強盗殺人の混同などでしょうか。

 

・A罪が成立しないから当然B罪が成立するわけではなく,B罪が成立するためには同罪の構成要件に該当することが必要なのであって,その検討が必要であるとの意識が乏しい受験者もいると思われた。

 →このような書き方をする人は,意外と多いようです。「業務上横領罪が成立しないから,窃盗罪が成立する。」という答案ですね。窃盗罪が成立するには,窃盗罪の要件を検討する必要があります。要件の中には,実質的にかぶる部分もあると思いますが,その場合には,「上述のように」というような表現をうまく使っていく必要があるでしょう。

 

 

【刑訴法】

・強制処分と任意処分の区別の基準について,多くの答案が,「個人の意思を制圧し,身体,住居,財産等に制約を加え」るかどうかという最高裁判例……の示す基準や,「相手方の意思に反して,重要な権利・利益を制約する処分かどうか」という現在の有力な学説の示す基準を挙げて検討していた。

 →受験生が日頃悩んでいると思われる,強制処分の意義の書き方について,採点実感が言及しています。有力な学説によって書いてもいいが,理由付けは必要だ,ということのようです。採点実感の記載を読んで,本番でさっと書けるように(長々と展開する論点ではないでしょう。),自分なりに準備しておくと良いと思います。

 なお,強制処分法定主義と令状主義を混同している人が意外と多いのですが,この際に区別できると良いでしょう。例えば,現行犯逮捕は令状主義の例外ですが,強制処分法定主義の例外ではありません。


・比較的多くの答案は,【捜査①】及び【捜査②】のいずれについても,被制約利益の内容としては抽象的に「プライバシーの利益」とするのみで,その具体的内容を踏み込んで明らかにすることなく,……重要性の評価に関する検討も十分にはなされていなかった。

 →このような点を,ちゃんと面倒がらずに具体的に書けるか,というのが合否を分けます。例えば「どう重要なのか」,「何と何がどう矛盾するのか」,ということを書かない答案が多いのです。そこを省いて,「◯◯は重要であるから」,「◯◯は矛盾するから」と書く答案は,「自分の中では分かっていても,人に説明しようという意識がないのかな?」という捉え方をされてしまいます。「重要」,「矛盾」というのは,評価を経た言葉ですから,評価の過程を示す必要があります。どの科目でも同じです。

 

・前記最高裁判例の判示に表れる「必要性」,「緊急性」,「相当性」というキーワードを平面的に羅列するにとどまり,「具体的状況のもとで相当と認められる」かどうかの判断構造の理解が十分とはいえない答案も見られた。

 →必要性の程度に応じて,具体的に許される捜査の範囲が変わってくるわけです。当該捜査を行う必要性が低いのに,強度の行為を行うのは,任意捜査の限界を超えていると判断されます。

 ですから,相当性を認める場合には,当該捜査を行う必要性を具体的に検討した上で,その必要性との比較で,当該行為が必要やむを得ない限度といえるか,ということを考えることになります。単に,「捜査①は,プライバシー侵害の程度が低いので,相当である。」と書くのでは足りないということです。

 

・【捜査①】について,強制処分か任意処分かを検討するに当たっては,「プライバシーの利益は放棄されており,重要な権利・利益の侵害はない」としつつ,任意捜査の許容限度を論じる段階では,「プライバシー権の侵害を伴う」などと論理的に矛盾するかのような記述をしている答案も見られた。

 →強制処分該当性を否定して,任意処分を検討する場合に,よく起こしがちな記載です。表現上,矛盾しないように,言い方に気をつける必要があります。

 

・強制処分である場合,強制処分法定主義(刑訴法第197条第1項ただし書)からは,【捜査②】のような捜査手段を直接定めた明文規定は存在しないことから,法定の根拠規定を欠くため違法となるのではないかが問題となる。そして,法定の根拠規定の有無に関して,【捜査②】が強制処分たる「検証」に当たるといえるかを検討し,「検証」に当たらないとすれば,根拠規定を欠くため違法となり,「検証」に当たるとすれば,本件では令状(検証許可状)を得ることなく行ったため違法となるとの結論が導かれることとなる。

 →強制処分が違法であると結論づける場合には,このような検討を経ることが多いので,このような処理手順をマスターすると良いと思われます。

 

・伝聞証拠の定義を示すに当たり,内容の真実性の証明に用いられるのは「原供述」,信用性を吟味できないのも「原供述」,伝聞証拠として排除されるのは原供述を含む「公判供述」「書面」という関係が正確に表現できていない答案は殊の外多かった。

 →伝聞証拠と供述証拠の関係について,整理しておく必要があります。例えば,公判廷における通常の目撃証言は,供述証拠です(知覚・記憶・叙述の各過程に誤りが混入している危険はあります。)が,伝聞証拠ではありません。

 伝聞法則の意義及び趣旨を,冷静にもう一度よく見直してみると,意外な発見があるかもしれません。

 

・内容の真実性が問題となるか否かについて,丙と乙との共謀を立証するための証拠として用いられる場合の具体的な要証事実を検討して当てはめる段階では,これを適切に行えた答案とそうでない答案とに大きく分かれた。具体的には,本件文書及び本件メモの体裁や記載内容,設問の事例の具体的事実関係を踏まえて,本件文書及び本件メモのそれぞれについて,丙と乙との共謀を立証するために,各証拠によってどのような事実を立証しようとするのかを具体的に考察し,その事実を立証するためには,各書面に記載された記載内容が真実であることが問題となるかどうかを検討して,適切に結論を導いた答案が見られた一方で,抽象的に「丙と乙との共謀」が要証事実であるとするのみで,それ以上具体的な検討を行わなかった結果,伝聞証拠該当性についても十分な検討を尽くせなかった答案が見られた。

 →点数が伸びた答案と,そうでない答案とを分ける部分だったと思います。「検察官は,当該証拠から,どのような過程を経て共謀の事実を認定させる意図があるのか」という判断過程が,丁寧に示される必要があります。証拠と「共謀」との間には,相当の「距離」があります。その間に,うまくハシゴをかけていき,ハシゴをかける過程で,文書の記載内容の真実性が問題となるといえるのかを考える必要があるわけです。

 そのような過程を経ずに,証拠と「共謀」とを直接結びつけようとすると,無理な答案になってしまうのですね。

 平成27年の採点実感の中で,今後の答案作成に役立ちそうな部分をピックアップしていきましょう。

 原文はこちら:http://www.moj.go.jp/content/001166214.pdf

 

【憲法】

・中には,「平等」の問題と「自由」の問題との違いを踏まえつつ,「平等」の問題が「表現」(ないし「思想良心」……)の問題と連動している点を見抜き,両者を密接に関連付けて論じる答案

 →平等の問題は,他の憲法上の権利と連動して問題となる場合があります。この場合に,平等権侵害の主張をするか,他の権利の侵害の主張をするかは,当事者が「他者との比較」を問題にしようとしているかによって変わってくるでしょう。平等権侵害を問題とする場合には,当該他の権利の性質を踏まえて,審査基準や規範の定立,事実の評価等をすることになると思います。ちなみに,平成25年の問題では,学問の自由と連動する平等権侵害が問われています。

 

・A市の反論について,「区別・取扱いには合理的理由がある」とか「裁量の逸脱・濫用はない」という,いわば結論部分だけを記載し,その理由を明示できていない答案が相当数あった。しかし,いかに「ポイントを簡潔に述べ」るとしても,反論である以上,A市としてその結論につながる積極的・直接的・根本的な理由を簡潔かつ端的に明示する必要がある。

 →この点については,前回の記事で紹介した通りです。反論であっても,理由の概要を示す必要があるわけです。逆に言うと,ここでは長々と理由を書きまくる必要はありません。

 

・被告となるA市の反論が妥当でないことを論じるだけでは自己の見解を論じたことにはならないにもかかわらず,A市の反論に対する再反論のみを記載している答案も見られた。

 →この点も,前回の記事で紹介しました。いずれの主張がより妥当なのかを書く必要があります。

 

・憲法上の主張や見解について問われているにもかかわらず,A市の反論や「あなた自身の見解」において裁量論に迷い込み,憲法論から離れてA市側の行為の当・不当を長々と論じている答案が散見された。A市側に一定の裁量があり,また,問題文から拾い上げる要素にも大きな違いはないかもしれないとしても,飽くまでも憲法上の主張や見解について論じていることを意識して答案を作成してほしかった。

 →この点の指摘は,それなりに答案練習を積んだ方に妥当する指摘でしょう。「憲法の答案が行政法化している」人の特徴ということになります。この採点実感は,憲法の科目で裁量(上記の「裁量」は,行政裁量のことを指すと思われます。)の問題に言及することは否定していません。ただ,裁量論で書く場合にも,憲法上の権利を考慮した判断ができているかが問われるわけです。書き方は色々あると思いますが,「裁量権の行使に際しては,憲法上の権利を不当に制限しないように配慮しなければならない。」というような,憲法の縛りをかけていくのは,1つの方法かと思います。

 

・「法の下」の意義(法適用の平等に尽きるか,法内容の平等も含むのか)については,本問では論じる必要がないと考えられるにもかかわらず,これを論じているものが散見された。マニュアル的,パターン的に準備してきたものをそのまま書くのではなく,なぜその点を論じる必要があるのかを事案に即して考え,準備してきたものの中から取捨選択して論じていくべきである。なお,現在の実務では,必要のないことに言及するのは無益ではなく有害と評価される場合もあることに留意してほしい。

 →「法の下」の意義は,論じる必要がないと書かれています。この論点については,受験生は必ず勉強するところです。ただ,今回は法内容の平等というよりも,法適用の平等の話であると考えられますから,論じる必要はそもそもなかったということでしょう。なお,法内容の平等が問題となっている事案でも,1~2行程度で一言触れれば十分ではないかと思います。

 

・Bは,……「自分の意見・評価を甲市シンポジウムで述べたことが正式採用されなかった理由の一つとされていることには,憲法上問題があると考えている」のであるから,……ここでは自分の意見・評価を述べたこと,すなわち,憲法第21条の表現の自由の問題についてまず論じてもらいたかった。

 →受験生には,思想良心の自由の問題として書いた人が多かったようです。どうも,出題者側は,問題文の書きぶりから,書くべき権利を考えてもらいたいようですので,今後は問題文の書きぶりに注意して,素直に捉えることが必要そうです。

 

・甲市シンポジウムでの意見表明を理由として不採用になった点につき,表現の自由の問題であるとしつつも,安易に「表現の自由が制約されている」と記載している答案が目に付いた。しかし,本問の場合,表現行為そのものが制約されているわけではないから,それにもかかわらずなぜ表現の自由の制約に当たるのかを論じてほしかった。

 →行為そのものが禁止されているわけではない事案というのも,割と出題されるようです(平成26年司法試験も,タクシー事業そのものは禁止されていないものの,自然保護地域における運行ができないという事案でした)。このような出題にも対処できるように,冷静に事案を分析する必要があります。

 

・問題文で与えられた事実に憲法的な評価を加えることなく,問題文の単なる引き写しや単に羅列するだけの答案が一定数見られた。

 →この点については,以前の記事で触れたところです。司法試験である以上は,法律論を組み立てないといけないわけです。単に主張をそのまま投げるのでは足りないということです。

 

【行政法】

・結論を提示するだけで,理由付けがほとんどない答案,問題文中の事実関係を引き写したにとどまり,法的な考察がされていない答案が多く見られた。また,根拠となる関係法令の規定を引き写しただけで結論を提示するにとどまり,法律の解釈論を展開していない答案が少なからず見られた。論理の展開とその根拠を丁寧に示さなければ説得力のある答案にはならない。

 →この点が,合否を分ける致命的なポイントです。


・本件のように対立利益の相互の調整が問題となる事案では,抽象的な関係法令の趣旨・目的を踏まえて,一方当事者の立場のみに偏することなく,関係者の相互の利益状況を多面的に考慮した上で結論を導き出すことが求められる。

 →ここは,合否以上のレベルの話です。ここを詰められれば優秀答案になります。「一律な規制を行う本件基準は,事業者に過度の負担をもたらすので,合理的ではない。」という答案よりも,事業者のみならず,行政側が守ろうとする公益などにも目を配って論述すると,より説得力が増すということでしょう。

 

・裁量権濫用論の一般的な定式を挙げた上,関係法令の趣旨を十分踏まえずに,「考慮すべき事情を考慮していないから違法」,あるいは「考慮すべきでない事情を考慮しているから違法」と平板に論じる答案が相当数見られた。過去の採点実感でも指摘した点であるが,論点単位での論述の型を形式的に覚えているだけではないかと疑わざるを得ない。

 →それなりに勉強が進んでいる方でも,やってしまいがちなところです。裁量権濫用の一般論が長く続くな,と思う一方で,本論である「何が逸脱・濫用なのか?」を法の趣旨に照らして具体的に論じられていない答案には,点数がほとんどつかないものです。

 行政法の点数がイマイチ,という人は,ここに問題を抱えている可能性があります。

 

・裁量基準に従ってされる行政処分の適法性の審査においては,法令の趣旨・目的に照らした裁量基準の合理性の有無,裁量基準に合理性があることを前提とした個別事情審査義務の有無が問題となるが,これらを十分に踏まえた検討ができていた答案は少数であった。

 →裁量基準の合理性を考える際にも,しっかりと条文と共に,法の目的や趣旨を挙げて論じる必要があります。基準の合理性ということで,条文を顧みずに,自由作文で論述してしまう人も多いのですが,「こういうところで条文に戻れるかどうか」が,行政法の得点にそのまま作用します。

 主張・反論・私見型の問題(そのうちの一部を論じさせる問題も含めます。)の書き方は,なかなか悩ましいと思います。 分量の問題,法律構成をどうするかの問題,どう書き分ければいいのかの問題が待ち受けているからです。

 

 まずは,形式面です。注意すべきことは,設問の問い方です。

 行政法などで,「◯◯は適法か。違法となる法律論と適法となる法律論を示して答えなさい。」という問題文がよくあります。このような場合には,違法・適法となる法律論を示しただけでは足りません。「適法か?」と問われているわけですから,私見まで示す必要があります。

 また,「◯◯の主張は認められるか。」と問われている場合でも,自分と反対の見解を考慮して,という指定がある場合があります。その場合には,反論を踏まえて検討する必要があります。このような問題の場合には,ごく簡単に反論の内容を書いて,自分の考え方がよりふさわしいことを論じる必要があります。

 反対の見解を考慮して論じる,という指定がない場合でも,配点割合や問題文中の事実によっては,深い考察が求められる場合があります。その場合には,反対の見解も考慮しつつ書くということになるでしょう。もっとも,何でもかんでも反対の見解を書けばいいわけではなく,メリハリが最重要です。問題文中の事実が少なく,特に争いにならなそうな部分は,さっと済ませる必要があります。

 

 書き方としては,憲法とその他の科目で,相当に異なると思われます。

 

 憲法(平成27年司法試験)は,主張:反論:私見=4:1:5の配点割合です。ですから,主張を相当厚く書いていく必要があります。

 原告の主張段階で,違憲の結論が導ける程度の書き方をする必要があります。具体的には,保護される権利→権利の制約→制約が許容されないこと,を書いていくのが通常でしょう。制約の許容性の段階では,「不利に見える事実も拾う」ことと,「それに対して,原告に有利な評価をする」ことを心がけると良いと思います。この段階では,「こういう点で不利な事情とも思えるが」ということは記載不要です。それを書くと,反論と私見で書くことがなくなります。例えば,デモの騒音が問題となっている場合には,「デモで騒音が発生したとの苦情はあるが(不利な事情),騒音はデモに当然伴って発生する以上,これを不利益に考慮すべきでない(有利な評価)。」という書き方ができるでしょう。

 被告の反論段階では,「争点を明らかにする」という意識を持つと良いでしょう。ですから,何でもかんでも反論すれば良いわけではなく,深く書くべきポイントを書きます。そして,重要なのは,反論の結論だけを書けばいいわけではなく,理由を簡単に述べる必要があります。

 例えば,「本件では,権利の制約はないと反論する。」,「本件では,裁量の逸脱,濫用はないと反論する。」,「本件では,法◯条◯項は合憲であると反論する。」などと書いても,これでは議論になっていません。

 理由を長く述べる必要はありませんが,一言は書きましょう。「本件では,◯◯という表現行為そのものが禁止されたわけではなく,表現の自由に対する制約はない。」,「本件では,◯◯の事実を考慮することは,周辺住民の生命・身体を保護するのに重要であるから,裁量の逸脱,濫用はない。」,「法◯条◯項は,◯◯の危害を防止し,周辺住民の生命・身体を保護するのに必要やむを得ない制約であるから,合憲である。」くらいの記述は,あっても良いのではないかと思います。

 私見のところでは,「被告の反論を踏まえて,どこまでの規制が許されるのか?」という視点で書くと良いでしょう。原告の主張の繰り返しや,被告の反論の繰り返しだけでは,もったいないと思います。

 原告,被告それぞれに守りたいものがあります。原告の側は,自分自身の権利を守ること,被告の側は,公益を守ることが最重要課題なのです。原告の主張の繰り返しになるということは,「権利は守られるべきだ。だから違憲!」という話だけしかできていないのですね。私見を書く際には,「守りたい公益のことも考えると,どこまでの規制が許されるのか?(逆に,どこからの規制が許されないのか)」を,しっかりと詰める必要があります。大層なことのように思いますが,怖がる必要はありません。何か答えがある問題ではありませんから,憲法の条文や判例を思い浮かべながら,「この規制は,やり過ぎではないかな?」という目で考えていけば良いでしょう。

 実は,この発想は,行政法でも非常に有効なのです。処分の適法性を考える問題では,処分によって失われる私人の権利があり,処分によって得られる公益があることが多いのです。処分の根拠規定などの解釈や,事実の評価などに当たっては,私人の利益と公共の利益の両者に目を配って論述すると,極めて良い答案ということになるでしょう。

 

 憲法以外の科目では,特段の指定がない限り,主張と反論は軽めに済ませて,私見をしっかり書けば良いと思います。

 法律構成レベルでの問題となる場合には,請求原因・抗弁型の書き方があります。平成27年司法試験の民法の設問1(1),3では,この書き方によるのが良かったと思われます。

 例えば設問1(1)では,主張としては「原告の所有,被告の占有」を書いておいて,反論としては「即時取得」を書いていく,ということになると思います。なお,主張立証責任は,考慮するのが望ましいですが,必ずしもこだわり過ぎないほうが良いようです。例えば,抗弁に対する再抗弁の事実を,主張と反論のどちらで書けばいいのか,という話になってしまい,混乱する場合があるからです。

 その他,解釈レベル,事実の評価レベル,金額レベルでの争いなど,色々なパターンがあると思います。そのような問題の場合には,主張・反論では,「◯◯からすると,◯◯といえるから,◯◯と考えるべきだ。」くらいの書き方をすれば良いと思います。私見では,どちらがより妥当か,という観点で書くと良さそうです。

 ただ,主張と反論のどちらも正しいという気になる場合も多いと思います(むしろ,そうであるべきです。それが,最大限の主張・反論を考えることができた証でしょう。)。そういう場合に私見を書く際には,「法の規定や趣旨,重要な原理・原則などから,何を判断において重視して考えるのか」という判断基準(判断の軸足)を立てると良いでしょう。

 

 この判断の軸足という話は,答案を書く際には,極めて重要です。「私見のところで,どちらかの主張を繰り返して書いてしまう」,「プラスの事情とマイナスの事情の両方があるときに,どう結論を出すのか分からない」といった悩みを抱えている人は,判断の軸足を定めていないことが多いのです。その軸足を固めておくことで,主張を丸写しにせずに,自分の考える結論を明らかにすることができるわけです。

 判例の射程問題が苦手な人は一定数いると思います。

 しかし,判例の射程問題を避けるわけにはいきません。「判例の射程を検討してください」という明示的な問題ばかりとは限りません。判例と似た事案が出てくれば,当該判例との差異を意識し,結論を導き出してくれ,という出題者のメッセージが込められています。そのような黙示の判例の射程問題もあるわけです。

 

 もちろん,当該問題に対処するためには,判例に対する一定の理解は必要です。そこが不完全という人は,勉強するほかありません。

 もっとも,判例の射程問題の書き方が分からない,苦手意識がある,という人も多いかと思います。

 そのような方は,以下のような点を検討すれば良いと思います。

 

 判例の判示について,(1)どの要件・原理等についての話をしているのかを的確に位置づけ,(2)事案との関係で,(3)どのような理由で当該判示がされるに至ったかを考える必要があります。その上で,(4)本件事案についても,同様の理由が妥当するか,(5)本件事案では,結論が変わるのかどうかを指摘すると良いでしょう。