【おとん】
僕は父親のことを『おとん』と呼んでいる。
父と母は僕が7歳くらいだから37年くらい前に離婚しているのだが。
僕はおとんが好きだったから離婚後もたまに会っていたし、少しヤンチャだった僕を母がおとんに預けた時期もあったし、母とサロンをやってからは年に2.3回は髪を切りにも来ていた。
普段一緒に暮らしてないが、自分の人生の大事な時におとんはいつも支えてくれた。
そんなおとんの話は色々あるが、最近で言うと母が少し体調を崩して入院した時の事だ。
病気知らずの母が入院だと言う事もあり、一応おとんにも一報入れた。するとおとんからメールが来た。
「そうか、大変だな。入院費の事は心配するな。個室にでも入れてやれ。お母さんの事よろしくな。」
そんなメールが来た。しばらくすると「入院費はわかったか?治療費はわかったか?」そんなメールが来た。
どこまで甘えていいものか、あまり遠慮するのもかえって悪いものか?例えば10万○○12円みたいに細かいのもなんだし、今回は10万だったと報告すると後日「ダメじゃないか、10万じゃ、○○12円足りないだろ」そう言ってキッチリ治療費、入院費を払ってくれた。(ちなみにほぼ同時期におとんも入院して治療を受けている。幸いおとんはすぐに回復はしたが、人の心配している場合じゃなかったはずだが。)
離婚して40年近くになるのに、別れた女の為にキッチリ面倒を見てくれる。そんなに裕福に暮らしているようにも思えないのに。惜しみなく援助をしてくれる。
最近、病室におとんが見舞いに来た。
「大丈夫」が口癖みたいな母は僕や家族が何かを聞いても「大丈夫」と言うばかり。
でも…おとんが「どうだ?」と聞くと「ダメ…」そう苦笑う母。
ちょっと嬉しそうに弱音を吐く母。「そうか」と優しく応えるおとん。なんだか美しい2人に見えた。
「おとん、俺仕事だから戻るね」そう言うと「あぁ」と言って軽く手を挙げるおとん。
その顔は「あとは俺に任せとけ」そう言っているように見えて病室を出た。
なぜ2人は離婚したのかはわからないし、今となれば知りたいとも思わないが、俺のおとんは最高の父親だと胸を張って言えるし、男として最高にカッコイイ男だと思っている。
なんだ…最高のカップルじゃねぇか。
