好きになった人の口から出てくるのは、自分の名前じゃない、別の女の子の名前。
「なーなー。田村ー」
クラスが同じで、同じ教室の中だけならまだ我慢ができる。
でも、
部活中でも、宮崎くんはそのこの名前を口にする。
「お前、もう告っちゃえよ」
「そんなんじゃないんっす」
はそう言ってるけど、全然まんざらじゃなさそう。
当の本人の田村さんは鈍感すぎて、全然気が付いてなさそうだからいいけど。
「別にさ、宮崎じゃなくてさ」
そう、聞こえてきた声に、私は耳をダンボにした。
「じゃ、なに?誰でもいいの?好きな人いないの」
愛子ちゃんが実花ちゃんにそう言っているとき、このチャンスを逃しちゃいけない、そう思った。
「実花ちゃんには、長嶺先輩ってかんじ」
長嶺先輩なら、宮崎くんよりは人気がないけど同じくらいかっこいいから、いいでしょ。
だから、宮崎くんのこと、好きにならないでほしい。
「長嶺先輩?」
けど、実花ちゃんは長嶺先輩にもピンと来ないのか、きょとんとした顔をしていた。
でも、安心できない。
興味がない、って顔をしてる子が一番、油断がならないんだから!
私は、部活の合間
長嶺先輩が一人きりのところを狙って、話しかけた。
「田村さんて、長嶺先輩が好きなんですよ」
長嶺先輩の浮いた話は聞いたことがないけど、
私はそうやって長嶺先輩に嘘を教えた。
その後、効果は全然なくってがっかりした。