「遅っせーよ、この馬鹿リオナ!」
「えぇっ、私!?」
ラスティアル城前に着いてすぐ、ルーが私たちの姿を確認して怒鳴った。
先にここへ来たルーは相当待ちくたびれたみたいで、周りにはルーが蹴ったであろう小石が散乱している。
うぅ、何で私だけ怒られるの・・・。この数いる中で私だけ遅れたことを責められたのは、私がとろいから?
「ルー、そんなに怒んなくたって・・・・・・僕らも遅れたし。」
平和主義のメルが、柔らかい口調で私をフォローしてくれる。それでもルーは、
「うっさいな、お前もだよメルワーズ!どんだけ待ったと思ってんだよ。」
怒りの矛先をメルに向け、更に激怒するだけだった。
メルは、思ってもいなかった展開に、半泣きの状態で一歩下がった。その隣では、ウィノが頭を抱えて溜め息をついている。
あーあ、もうルーは誰にも止められない・・・。本当、初めて会った時が懐かしいよ。
と、思ったら。
「ルー、メルワーズのこと・・・いじめちゃ、駄目。」
ぽかん!とその場に爽快な音が響いた。
一瞬、何が起こったのか理解出来なくなる。
サ、ティ・・・・・・?
サティが・・・、ルーの頭を殴ったっ!
しかも、結構痛そうなんですけど・・・・・・。
「いってぇ!何すんだよ、サティ!」
ルーが、叩かれた部分を押さえながら、涙目でサティに訴える。ルーが涙目になるなんて、本当に痛いんだなぁ・・・。
一方サティはといえば、そんなルーを不思議そうに見つめ、首を傾げながら言った。
「だって・・・ルーが、みんないじめるから。」
「いじめてねぇよ!っていうか、お前が一番いじめてるんだよ!」
ルーは、納得いかないというように喚いたけど、サティには全く通じてないみたい。
首を傾げる姿は、自分の何がいけないのかと言う風だった。
どうやら、ルーの言葉の意味を理解していないらしい。
サティって、ある意味最強かも・・・・・・。
「もういい!サティなんて大っ嫌いだ!」
ルーは、半ば自虐的に叫ぶ。もう、何が何だかよく分かんない。ルーが、すごく子供っぽく見えた。
それでもサティは、平然として言う。
「大嫌い・・・?嘘、でしょ・・・・・・だって、大嫌いって言っても一緒にいる・・・・・・。」
「う、うるさい!しょうがないだろ、一緒に旅してんだから!」
慌ててるルーを見て、私は堪えきれず吹き出した。また怒られると嫌だから、ずっと我慢してたんだけど。
こうやってルーを見てると、普通の“人間”と変わらない。
いつもは無邪気な部分なんて見せないけど、慌てたり照れたり、子供みたいに喚いたり・・・・・・私たち人間と、何ら変わりない態度。
“人間”と“古代の民”っていう隔たりはあっても、やっぱり私たちは『同じ』だ。
2つの種族に、争う理由なんてない。
同じ神から生まれ、同じ心を持ち、同じ感情を抱き、同じ世界に生きる“ヒト”だから――――・・・。
「と、とにかく、ラスティアル城の中に入るぞ。リオナ、もう笑うな!夕飯抜くぞ!」
「えぇ~!やだ!」
ルーは頬を赤くしたまま私をひと睨みし、さっさと1人でお城の門を潜り抜けた。