「いや~、しかし、卯月の変わり様には驚いたねぇ。」
恵太君が言う。
「うん、オレも初めて会った時驚いたもん。世界に、こんなやつがいたんだなって。」
うう・・・雅君にまで言われた・・・。
恵太君と雅君、すっかり意気投合してるんだよ!
「そんな言わないでよ。卯月は卯月でしょ。二重人格が、卯月らしさなんだから。」
捺騎君が、2人に向かって笑顔で言う。
そうだよね!何だか、捺騎君に言われると落ち着ける。
「何だか・・・卯月と捺騎の天然さを、改めて痛感したよ。」
芽美がつぶやく。
?何が?
・・・それよりも。
「セリア・・・だいじょぶかな?」
だんだん、心配になってきた。
あの時は、その場の勢いで帰っちゃったけど・・・。
セリア、また辛い目にあってないかな?
「まあ、セリアなら大丈夫でしょ。もともとは、強い子だし。それに、あの時の卯月の言葉、結構ガツンときた。かっこよかったよ。」
「そう?ありがと。」
正直、二重人格の私が言ったことだから・・・あまり、実感はしてないけど。
でも、記憶ははっきりしてる。
私、あの時、セリアを助けたい一心で・・・。
「・・・そういえば、卯月。捺騎に告った?」
芽美から、急に聞かれる。
「ほえ?告ったって・・・コクーンの仲間?」
「はぁ?何で、話がコクーンに飛ぶのよ?」
「・・・だって。」
告った→コクッタ→コクーン・・・みたいな。
「はぁ・・・あんたの天然度には、心底呆れたよ。」
芽美が、ため息をつく。
でも、じゃあ、何のこと?『告った』って。
「あのね・・・告白した?ってこと。好きって思い、伝えたの?」
???
・・・ああ、そっか!
略語かぁ、なるほど~。
日本の人って、すごいねぇ。
「・・・って、そんなわけないでしょ。今はそれどこじゃないし、そもそも私、まだ気持ちを実感してないから・・・。」
「ぐずぐずしてると、どうしようもなく離れたところに行っちゃうかもよ。・・・セリアも、そうだったように。」
そっか、セリアのイギリスの親友には・・・もう二度と、会えないんだっけ。
セリアは、それで後悔してるって言ってた。
・・・私は、どうなの?
確かに私、捺騎君が好きだよ。
でも、まさか・・・会えなくなる、なんて・・・ないよね。
「いつか言うよ。」
「卯月の『いつか』は、不安なんですけど。・・・後悔だけは、しないでね。」
芽美が、私の心配をしてくれてるのがよく分かって、胸にしみた。
ありがとう、芽美。
私、後悔はしないように、精一杯頑張るから。
だから、もう少しだけ――――時間をください。
「セリア!」
次の日、セリアは私の家に来た。
「卯月、本当にありがとうございます。・・・お父さん、考えなおしてくれたんです。だからお母さんも、別居を取り消すって。私、あんなに家庭が温かいものだと思わなかった・・・。」
何だか、何がなんなのか詳しくは聞けなかったけど・・・。
とりあえず、良かった。
家族なのにうまくいかないなんて、悲しすぎるもの。
「で、日本に残るの?」
「それなんですけど・・・。」
セリアは言葉を濁らせる。
「家族は一緒にいようってなったんです。私、それはとても嬉しかった。でも・・・とりあえず夏休み中は日本にいますけど、そこで話し合ってイギリス行きか日本に残るか決まります。だから、もしかしたら今度こそ本当の最後になってしまうかも・・・。」
え・・・。
ガン!
頭を金槌で殴られたような、強い衝撃が走った。
嘘・・・でしょ?
今度こそ、セリアがいなくなる?
「・・・まだ、決まったわけじゃありませんから。」
呆然としている私に対して、セリアは言ってくれたけど。
そんなの、もう耳に入らない。
もちろん、セリアには今までの分も家族と仲良く過ごしてほしい。
それは、本心だよ。
でも・・・そうしたら、私たちが会えない・・・。
どうしよう。
私、セリアの決断の最後を・・・快く、見送れるのかな。
何だか、悲しいよ・・・。
大切な友達なのに、大切な友達が幸せを手に入れようとしてるのに。
こんなにも、醜い気持ちになっちゃうんだ・・・。
私、どうしたらいいの―――――・・・?