『セリアへ
元気?私は、みんなと元気にやってます。
もう、高校3年生だね。高校生活は、何だかんだでとても楽しいよ。
私ね、やっと、セリアの言っていたことが分かった。
私って、捺騎君が好きなんだね。
セリアに言われてからもう3年が経つけど、私って、本当に鈍感。自分で痛感した・・・。
そして芽美には、彼氏が出来たんだよ!
セリアは知らないと思うけど、捺騎君の友達で、芽美にべたぼれ。
セリアがいつか日本に帰って来た時に、紹介します。
その時まで、私たち、ずっと待ってるから。
芽美も、雅君も、捺騎君も、――――もちろん、私も。
元気でね。また。
本田卯月』
――――高校3年生になった。
前に来たセリアからの手紙に書いてあった住所に、手紙を送った。
セリアに、届くかな?
今年、私たち4人は、見事同じクラスになった。
3年生は修学旅行もあるし、来年には卒業旅行もあるし・・・。楽しみだな。
「卯月、何笑ってるの?」
捺騎君が、私の顔を覗き込む。
「え?私、笑ってる?」
変だなぁ・・・。そんなつもりないのに。
最近、嬉しいことばかりなのは確かだけど。
「芽美たち、良かったね。幸せそうで。」
「うん。」
恵太君も一目惚れだったみたいで、バレンタインの日、速攻でOKされた。
って、芽美が幸せそうに言ってたっけ。
「あ、そうだ。もうすぐ、修学旅行じゃん?」
捺騎君が、話を振ってくる。
「うん。」
「あの自由班って、男女3人ずつの6人だよね?」
え?
もしかして・・・。
「一緒の班にならない?」
「わぁ。本当?楽しそう。」
あれ?でも、あのメンバーだと、2人足りなくない?
「平気だよ。男子はもう、呼んであるし。後は、女子1人かな。」
私、よく顔に出やすいって言われるんだけど、不思議そうな顔をしていたからか、捺騎君は私の心の中の疑問に答える。
「あ、じゃあ、にゅうちゃん呼んでもいい?」
「にゅうちゃん?」
捺騎君が、不思議そうな顔をする。
そりゃそうだよね。にゅうちゃんってニックネームは、仲の良い人の間でしか分からないから、よく「誰?」って顔される。
「絹川沙羅ちゃん。ほら、クラスにいるでしょ?すっごく可愛らしい子。」
「ああ・・・。あの、小さい子?」
「うん、その子。いい?」
私がもう一度問いかけると、捺騎君は笑顔で、
「いいよ。」
って言ってくれた。
じゃあ、にゅうちゃん誘おっかな。
「にゅうちゃん~!」
「あ、卯月ちゃん。どうしたの?何だか、ご機嫌だね。」
あ、にゅうちゃんにも分かっちゃうんだ・・・。
「あのね、修学旅行の自由班、一緒にどうかなって。」
「え!?卯月ちゃんは、芽美ちゃんたちとなるんじゃないの?お邪魔じゃない?」
にゅうちゃん、すっごく驚いた顔してる。
思わず、笑っちゃった。
「平気だよ~。私たち4人と、にゅうちゃんと男子もう1人でぴったりだから。・・・駄目かな?」
にゅうちゃんにも、事情はあるもんね。
でも、意外とあっさりOKしてくれた。というか、喜んでくれた。
「嬉しい!ありがと、卯月ちゃん。私、どうしようかと思ってたんだぁ。」
「そうなの?じゃあ、良かった。一緒に行こ♪」
「うん!約束!」
私とにゅうちゃんは、いつもみたいに指きりげんまんをした。
まさかこれが、にゅうちゃんとする最後の指きりだなんて知らずに―――――・・・。