あれから、数ヶ月後――――・・・。
私たちは、2年生に進級した。
あの時から、捺騎君とは一度も話さないまま――――・・・。
「あ、私1組。」
「え~!卯月、1組なの?私、4組~。」
あ、ついに芽美とは離れちゃったんだ。
あーあ、ちょっと憂鬱だなぁ。
「でも芽美、恵太君と一緒だよ。」
「あ、本当だ。でもな~、嫌味しか言わないじゃん、あいつ。」
いつのまに『あいつ』とか呼べる仲になったんだろ・・・。
「私は・・・あっ・・・。」
私、一瞬で言葉を失った。
2年1組31番、藤田捺騎・・・。
一緒なんだ・・・。
これから、1年間・・・。
「卯月?どうしたの?」
芽美は、気づいてないみたい。
「ううん、何でもないよ。行こ。」
「うん。」
捺騎君――――・・・。
本当は、あれからずっと話しかけたかった。
でも、また捺騎君を傷つけてしまうのが怖くて――――・・・。
それに、芽美にも止められてたし。
そう、話さなくなってから、2ヶ月が過ぎようとしていた。
ガラッ。
教室のドアを開けると、まず一番に目に飛び込んできたのは捺騎君だった。
「あ、卯月・・・。」
捺騎君が、何かを言い掛ける。
「・・・ごめんね。」
それを払いのけるように、私は自分の席に足早と向かっていった。
・・・私、最低だ。
こんなことをしても、捺騎君が傷つくだけだって分かってる。
でも・・・話したって、どうせ傷つけるだけだもんね。
本当に・・・ごめんなさい、捺騎君。
「卯月ちゃん、次移動だよー。」
2年生になってから、初めて出来たお友達。
絹川沙羅(きぬかわさら)ちゃん。通称、にゅうちゃん。
どうしてにゅうちゃんかっていうと、絹川の絹をとって、絹といえば豆腐。豆腐→豆乳→乳→にゅうちゃん。
すっごく可愛い顔立ちで、クラスでも結構目立つ方。
美咲ちゃんと張り合えるの、にゅうちゃんくらいじゃないかな。
「ごめんね、にゅうちゃん。」
「ううん、全然平気っ♪」
にゅうちゃんは、ついでに優しい。
美術部所属で、その才能は天才的。
美術部の中でも、何度も最優秀賞取ってるんだ。
本当すごいよね。憧れちゃう。
「ふう。」
私は、ため息をひとつつく。
何だかね、にゅうちゃんがいてくれるのに、毎日が充実してないの。
もちろん、今のままでも楽しいんだけど。
やっぱり、あの頃が一番楽しかった・・・。
「?どうかした?卯月ちゃん。」
ぼーっとしてる私に気づいたのか、にゅうちゃんが声をかけてくれる。
「あ、ううん、だいじょぶだよ。行こ。」
心配かけたくないから、私は笑顔で答えた。
このすぐ後に、
さらに関係は壊れ始めた。