いつもの学校、それも充分楽しい。

でもね、何よりも楽しいのは、放課後の部活。

私、如月神子(きさらぎみこ)は、吹奏楽部、クラリネットパート所属。

中学2年生で、最近先輩になったばかり。

1年生の頃も楽しかったけど、今はもっと充実してる。

「神子ー!さっさとしてよー。」

「ごめんって、麻紀。」

親友で、同じく吹奏楽部クラリネットパート所属、城田麻紀(しろたまき)。

しっかり者で、結構気が強い、かな。

「部活、始まっちゃうでしょ。」

「ごめん。行こう!」

私は麻紀と一緒に、音楽室へと走り出した。


「こんにちはー!」

部室―――音楽室のドアを開ける。

「あ、神子。遅いよー。」

「啓明先輩!何ですか、たまに自分の方が早く来たからって。」

つんと、そっぽを向く。

「え、神子、怒んないでよ。」

トロンボーンパートの三谷啓明(みたにひろあき)先輩が、困った顔をする。

いつもはクールな先輩が私だけにそういう表情を見せてくれるのが嬉しくて、ついからかっちゃうんだよね。

「冗談ですよ、怒ってないです。」

からかった後は、いつも満面の笑顔で返す。

「何だ、神子に嫌われたかと思った。」

ドキン・・・。

先輩、気づいてますか?

そういう先輩の何気ない一言が、私の心を動かしてるのを。

私が、先輩に恋をしてることを――――・・・。


私が先輩に出会ったのは、小学校6年生の時だった。

小学校の依頼演奏で、富谷中吹奏楽部の演奏があった。

体育館で聞いた後、その場から帰ろうとした私と制服姿の誰かがぶつかった。

「すみませんっ!」

そう言って顔を上げると、そこにはちょっと大人しめの男子が立っていた。

決して陰気ではないんだけど、周りのうるさい男子に比べたらよっぽど大人。

「ごめんね。急いでるから。」

そう言って、その人は足早に去っていってしまった。

私はどうしても気になって、当時中学3年生で吹奏楽部だったお姉ちゃんに聞いてみたんだ。

「三谷君のこと?」

その”三谷君”という人にことを聞いて、憧れのお姉ちゃんと同じ吹奏楽部に入ろうという気持ちは、もっともっと大きくなっていった。

それが、啓明先輩との出会いであり、吹奏楽部に入ったきっかけなんだ。