華奢な身体を包む黒いレースのワンピース、湿気で少し巻きが取れてしまった長い黒髪、軽い足取りの洒落たレインブーツを履いた足元、そのひとつひとつが、僕を狂わせる。おかしくさせる。





「お嬢様、お身体が冷えますよ。そろそろ屋敷に入りましょう。」

「……いや」


相変わらず我儘でいらっしゃる。まぁそこが可愛いんだげど。

かれこれ雨の中で薔薇を眺め始めて早一時間半、

ずっと立ちっぱなしだし、雨は先程より酷くなってきた。


「後でローズティーと薔薇のジャムを使ったマカロンをお出ししますよ。いかがですか?」

「っ!入る!」

「ふふ、分かればよろしいのです。」


この通り、僕の自慢のお嬢様は薔薇がお好きだ。

だけど僕は…薔薇なんかよりも、お嬢様の方が大好きだ。




「お嬢様、どうぞ。」

「ありがとう!」


午後3時のティータイム、お約束通りにローズティーとマカロン、ついでに薔薇のジャムと一緒にスコーンもお出しすると、色素の薄い瞳にダイヤモンドの様な光を宿すお嬢様。

よかった。ご機嫌になってくださった様で何より。


「ねえ、XX XX」

「はい?」


不意に名前を呼ばれ、少し拍子抜けた声が出てしまった。

お嬢様の方を振り向くと、少し怯えた様な、でも何かを期待している様な、そんな目をしてこちらを見ていらっしゃる。


「っ、どうされましたか?」

「…ごめん、やっぱり何でも無いの。」


どこか諦めた様な表情を見せたお嬢様に、また胸が痛くなる。

嗚呼、貴女はどこまで僕を虜にしておかしくさせれば気が済むんですか…。

やっぱり、どこまでもお嬢様には敵わないなぁ。


「何でもおっしゃってください、どうなさいました?」


ちょっぴり、誘惑の意味も込めてそういうと、少し間をおいてお嬢様は口を開いた。


「こんな事言ったらお父様に叱られるだろうけど、この先もずっと、私の為だけに美味しいローズティーを淹れて、私の言う事だけに従って、私だけを甘やかして、私だけを見てくれる?」


全く、ずるいお方だ。


「勿論、僕のお嬢様は貴女様だけですよ。ですから…」

知っていますか、僕は貴女が思っているよりも欲深いんですよ。

「ちゃんとお嬢様も、僕だけを見ていて下さいね。」



あとがき


記念すべき冬熹の初めての短編小説ですニヤリいかがだったでしょうか?

うん、まあ、下手ですがこんな感じで描いていこうと思ってまーす。

今回は恋愛系ですが、また全然違うジャンルも描いたりしたいと考えてるんで楽しみにしてて下さい。

それではさようなら👋