むかぁし、西法寺ぃおもしろか寺男んおらいたそうですたい。御院主様ん鶴(苓北町)の、城河原(五和町)のんて行きなすときゃ、お供してちいて行きよらいたそうですたい。
晩ちいっと遅(オス)うなれば、えっとおとろっせぇしよらいて
「御院主様、こげん時ゃ刀もっとれば、えらい気強う御座すばって」て言わるけん、御院主様ん
「本当(ホント)ん刀は、武士じゃからんば差されんけん、木刀ば購うてくりゅうだん」て、木刀ば購うて貰うて、差してさるきよらいたそうですたい。
いつじゃいろう、鶴戻りん山ん中で、ばったり、だりじゃいろう出て来(コ)らいたそうですたい。ほうしたりゃ、寺男んびっくりして、木刀ばひき抜いて、うう声で
「汝は生あるものか、生無きものか」て言わいたりゃ、びっくりして逃げてはってかいたそうですたい。
「生あるもの、生無きもの・・・。のう、こんたもなかなか学のあるのう。何でも知っとろのう」て言いなしたりゃ
「わしも、学ちゅうほどは御座っせんばって、ほんくれんこたぁ、知っとるとで御座す。」て、えらい喜(ヨ)りくうで、暇んときゃ木刀ば一生懸命磨きよらいたそうですたい。
何時じゃいろう、晩飯んとき、御院主様ん
「えらいきつかどぉばって、明日鎮道寺(苓北町)まで言って貰おうごたるとん、良かどかのう」て尋ねらしたりゃ
「へい、良かどころじゃ御座っせん。なるだけ早ういて、早う戻って来やっしゅう」て言わいたそうですたい。
なんさま、ほん頃ん坊守さまぁ鎮道寺から来とんなしたけん、ちょいちょい用事の出来ても、たいげぇ約僧さんの行きよらしたけん、寺男は初めて行かるとじゃったそうですたい。
あくる朝、女(オナ)ごしん早う起けて寺男んおじぃん部屋ぇ行てみたりゃ、寺男んおじぃん寝床は蛻(モヌケ)ん殻(カレ)ぇで、もうおられんじゃったそうですたい。
日暮れに、寺男ん
「鎮道寺ぃ、行ってきやした」て戻って来らいたけん、御院主様ん
「ほう、行って来てくれたのう。鎮道寺じゃ皆元気ぃしとったろうかのう」て聞かいたりゃ
「へい、そうよう達しょうしとんなしたとで御座す。えらいみぞぉがって、昼飯にゃ、刺身まで御馳走してくれなしたとで御座す」て言わるけん、御院主様ん
「鎮道寺ん、御院主様ぁ、何て言わしたのう」て、聞きなしたりゃ
「早うから、よう来てくれたのう。せっかく来てくるっとに、用事ば聞いて来てくるれば、まぁだ良かったとにのう・・・て言うてくれなしたとで御座す」て言わいたそうですたい。
あんまり張り切って、用事ゃ聞かでんはってぇとらいたそうですたい。
*ちいて→従って *えっとおとろっせぇ→とても恐ろしそうに *うう声→大声 *はってかいた→去っていかれた *こんた→あなた *そうよう達しょう→みんな達者に *みぞぉがって→可愛がって