[4756]マンガ『ヤマノススメ』②…しろ

 
「ひなたちゃんは多分景色より、人と触れ合うことのほうが大事なんだと思う…」

 上記は中岳であおいに披露した、ほのかちゃんによる分析。だかんらひなたの「山への誘い」も、山を含めた自然に触れさせたいとともに、山関連を切っ掛けにしてあおいに広い社会を知ってもらうのが目的だったと憶測できる。しかしひなたを導き手に体験していく「外の世界」に対し、あおいは素直に喜びと苦しみを受け止めていき、一瞬一瞬を大切にしているみたい。多分、天覧山に初めて登ったときの見晴らしと、ひなたと一緒の食事が原点。だから初対面のかえでさんに勇気を持った発言ができ、メル友にもなれた。
 一瞬一瞬を大切にする気持ちに自信がついたのは多分、難儀した三つ峠山。

(ふと視界が開けた。ああ…そうだ。いままで何で歩いてきたのか思い出した。こんな景色を見るためだったんだ)

 あるいは幅30cmほどの道での以下の決意で。

「よし…行こう。いける…! あと…少し…!」

 だからひなたが示してくれた富士山のパノラマに、

「ひなた、ありがとう」

と素直な喜び。
 そして頂上に着いた時の感慨に。

(ああ…着いた。自分の足だけで。ああなんて充実感。なんて空気が美味しいんだろう。これが…これが登山――)

 だから星空が見れなかった中岳のテン場で、せめて朝日をと早起きを。そしたら手前に見える木曾駒ケ岳の影も見ることが出来、雄大さに驚く。多分ほのかちゃんと話したかったようだけど写真撮影に夢中だったので気を使い、自分は寝っ転ぶ。

(目を閉じていてもまぶしい…。あ―…体があったかい…。ぽかぽかする)
「なんか…きもちいーなぁー」

 多分登山で全身を使って登ることを覚えたから、目を閉じた全身で太陽の温もりと地面のざらつきを味わえたのだと思う。つまりあおいはひなたの目論見とは若干ずれるが、外の世界に心を開けていると考えられ。一人ぼっちを決め込んだ入学当初とは大幅の差。
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