自分は学生時代エストニアに旅行したことがある。日本人が観光で訪れることがよほど珍しかったのか、ガイドさんは現地で日本語を学んだエストニア人女性なのだが、そのかたの大学の先生も同行させてくださいという。

 

先生は大学で日本語を教えつつ、ご自身では平家物語を研究なさっているという。先生が「日本語の本は字を読むのが難しいですね。なかなかたいへんです」という。大学で日本語を教えるようなひとが字を読むのが難しいとは、初学者のようなことを言われるなと思ったが、それは口には出さなかった。

 

日本帰国後、自分の大学の教授にそう言ってみた。すると教授「それは君、原書で読んでおられるんだよ」。ええ? 平家物語を原書で読むとは、どれどれ、

 

 

こういうことか。これは「字を読むのが難しい」わけだ。汗顔しきりで、自分にもしこの知識(原書で日本の書物を読むと字を読むのがたいへん)があったら、そのあと先生ともっと話題を続けてあげれたのにと思った。現代の出版社が活字にしたものを読むだけが書物を読むということではない。大反省。

 

エストニアのことばは対岸のフィンランドと同じウラルアルタイ系でピッコロポッコロとかわいい響きである。エストニアの首都タリンは中世の街がそのまま保存されているようという意味ではドイツのハイデルベルグ以上かも。日本との関わりでは外交官杉原千畝さんが1939年から赴任していたのがこの地。

 

序に書くと今の日本人は漱石や鴎外の作品も書かれたままを読んではおらず、出版社が現代仮名遣いに改めたものを読んでるわけだ。