有馬とデート中に白金に遭遇
手渡された封筒には、二枚のチケットが……

期間限定☆有馬とナイトサファリ！

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「志信さん待ってるかな……っ」

定時を少し過ぎたころ、ようやく私の仕事が終わった
急いで帰る準備を整え、オフィスを後にした

「はぁ……っ、15分も遅くなっちゃった」

約束をした場所まで駆け足で行く
帰宅途中の人並みに逆らうように、志信さんが待つカフェの前へ急ぐ

「マリア！」

カフェ付近へ差し掛かると、志信さんがこちらに向かい手を上げた
すぐ側には愛車が停めてあり、笑顔で私を迎えてくれた

「ごめんなさい、志信さん…遅れてしまって……っ」

深呼吸を繰り返しながら、志信さんに頭を下げる

「気にするな、オレもちょうど今来たところだ」

駆け寄った私の頭に手を乗せ、志信さんは優しく微笑んだ

「……志信さん」

離れていく指先に手を伸ばし、ギュッと握りしめた

「マリア、腹減ってないか？」

志信さんは私の手を握り返し、瞳を細めた
視線が混じり合い、自然と頬が緩む

「少しだけ…」

「それじゃ美味しいものを食べに行こうか」

「はいっ」

改めて指先に力を込め、大きく頷いた
そんな私を見つめ、志信さんは静かに笑った

×　　×　　×　　×

志信さんの運転で、おしゃれなカフェレストランへとやってきた

「ここ……」

「マリアが一度来てみたいと言ってただろう？」

些細な会話の一言でも、覚えていてくれた事が何よりも嬉しい

「お待ちしておりました、オーナー」

お店に入れば、すぐに店員さんが頭を下げた
何を隠そう、このお店も志信さんが経営しているお店の一つだ

「個室を用意しましたのでどうぞ……」

「いや、いい」

「で、ですが……」

店員さんの言葉を遮り、志信さんは笑顔で続けた

「今日は普通にお客として来たんだ、通常のテーブルに案内してくれ」
「マリアもそれでいいよな？」

戸惑う店員さんを余所に、志信さんは私へと同意を求めた

「もちろんです」

笑みを浮かべて同意を示せば、志信さんも口元を緩めた

「妻もそう言っているんだ、普通にしてくれよ？」

そうして店員さんに案内されたのは、窓際の広めの席だった

「わぁ……！」
「街並みが綺麗ですね！」

窓の外から見える景色に声を上げれば、志信さんが可笑しそうに笑う

「これより綺麗な夜景も見てるのに、ここでも感動するのか？」

柔らかい表情を見せる志信さんに、笑顔で頷く

「だって、綺麗なものは綺麗ですから」

「そうか…」

「はいっ」

素直に応えれば、志信さんは瞳を細めた
その眼差しに少し恥ずかしくなり、目線を外し店内を見回した

「……あれ？」

「どうした、何かあったか？」

見覚えのある横顔が見え、思わずじっと見つめた

「マリア？」

再度志信さんに声を掛けられ、ゆっくりと向き直した

「あの……、あそこに居るのって……白金さんじゃないですか？」

まだ定かではないが、ほぼそうだと思う
スーツを着こなした男性の後ろ姿へ視線を向け、志信さんへ小さく声を掛けた

「え、総司？」

「はい、横顔がすごく似ていたので……」

同じように店内へ視線を向けた志信さんは、確認するように言葉を続けた

「……ああ、グレーのスーツを着た奴か？」

上品なグレーのスーツを着こなす背中を見つめ、数回頷いた

「そうです、白金さんじゃないですか？」

再度視線を志信さんに戻せば、静かに椅子から立ち上がった

「え？」

唐突な事に驚く私へ振り向くと、志信さんは楽しそうに笑みを浮かべた

「ああ、あれは総司だ、ちょっと行ってくる」

「総司！」

静かなＢＧＭをかき消すように、志信さんは声を上げた

②へつづく…

【イケない契約結婚】～ナイトサファリ～有馬志信①