医療コンサルタント&温泉ソムリエのブログ

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医療コンサルタント兼温泉ソムリエの佐久間賢一が綴るお役立ちブログです。

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東京、仙台と続き、今回は、千葉でお話しさせていただきました。
あいにくのお天気の中でしたが、大変多くの皆様にご参加いただきありがとうございました。


また、多くの御盛況をいただき、ありがとうございます。
時間の都合もあり、いくつかの事例をご紹介することしかできませんでしたが、
またお話しする機会があれば、色々なお話しをしたいと思います。


次回は、名古屋にお邪魔します。
名古屋にご参加の皆さま、よろしくお願い致します。


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■千葉会場セミナーの様子


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経営が軌道に乗り次のステップを模索
分院展開のタイミングやメリットを知りたい


診療所の場合、一般的に開業してから5-7年ほどで経営が安定してくるといわれている。
主な医療機器のリースが終了し、手元に多くの現金が残るからだ。
自院の発展を考える際、次のステップとして選択肢の一つとなり得るのが分院の開設。
メリットだけでなく、デメリットもきちんと押さえたうえで検討したい。


■今回お悩み診療所
Y内科クリニック
保険診療のほか自由診療で総合医療を実践している関東のないか診療所。
1日100人以上の患者が来院するなど、経営は安定している。
開業から10年経ったのを機に分院を開設しようと考えているものの、メリットがわからず迷っている。


新たな事業を展開する時が分院開設のベストなタイミング

経営が軌道に乗って「分院を展開すべきかどうか悩んでいる」との相談をよく受けます。
歯科や自由診療をメーンとしている診療所などを中心に、分院を展開する診療所が増えていますが、ともすれば本院と共倒れになることがあるので十分な検討が必要です。

「診療所の拡大」や、共同購入による「コスト削減」など、分院展開には様々なメリットがあります。しかし、私は「機能分化」こそ最大のメリットと考えています。

たとえば、外来だけだった内科診療所が新たに在宅専門の診療所をつくる、整形外科で新たに予防のための運動施設を開設する、あるいは眼科で本院の白内障手術患者獲得のためにサテライト機能を持つ分院展開を行うなど、本院とは異なる機能をもった診療所を展開することで組織の発展につながる事例を多く見てきました。

こうした観点から、分院解説のタイミングは新たに事業を始める時がベストといえるでしょう。

ちなみに分院開設は医療法人化していないければできません。
医療法で一人の医師が開設できる診療所の数は一つまでと定められています。
複数の都道府県にまたがって分院を開設したい場合は、広域医療法人の認可を厚生労働省から受けるか、別の医師を理事長とする医療法人化を新たに設立し、グループ化することが必要となります。


診療方針の違いに目をつぶり給与体系に工夫を

分院展開において、私は今まで多くの失敗例を見てきました。
理由は、分院運営が非常に難しいからです。成功するためのポイントと考えられるのは次の3点です。


【1】信頼できる医師の確保
分院の院長を任せるわけですから、信頼できる医師を確保しなければなりません。
信頼できる人材確保は、やはり人脈を頼って探すのが一番いい方法でしょう。
出身医局が同じであれば医療方針などの差も少ないと思われます。注意しなければならないのは紹介会社の活用で、人柄も診療方針もわかりません。職場を転々としている医師もなかにはいると聞きます。
そのような場合には時間をかけて見極めることが大切です。


【2】分院院長のモチベーション向上
分院展開が失敗する多くが、分院院長のモチベーションの低下です。
最終的に退職してしまい、分院が閉院に追い込まれたケースも数多くあります。
モチベーションを下げてしまう要因として2つ挙げられます。一つは「医療行為に対する意見の相違」。医師といっても、出身大学などによって医療行為に対する考え方が異なります。
本院の院長が少しでも自分と考え方が違うと、分院院長にあれこれ意見してしまい、分院院長のモチベーションを下げてしまうのです。
実際に、ある首都圏郊外の健診専門診療所が、患者数が安定してきたことから規模拡大を狙って都内の一等地に分院を設立しました。
しかし、分院院長に対してあらゆる面で高いレベルを求めすぎたため、その院長が退職。
本院院長が分院でも診療するはめになり、最終的には本院、分院ともに大幅な赤字で危機的状況に陥った例がありました。もう一つの要因は、「給与体系」です。一定額の給与と決まっていると、分院院長は「給与が一定なら、がんばってもがんばらなくても…」と思ってしまい、モチベーション低下に繋がっていくというわけです。

対策としては、前者では「分院長とのコミュニケーションを図り、ある程度は目をつぶる」こと。お互いの考え方を話し合い、尊重する意味でもあまり口出しをしない。
借金を背負ってキャリアを積んできた本院院長と、雇われ院長とで意識に差があるのは当然のこと。「山の頂上と5合目では見る景色が違う」くらいに考えていないと、ストレスを抱えてしまいます。
後者ではインセンティブをつけるなど、給与体系に何らかの工夫を施すことをおすすめします。私が知っている例では、レセプト1枚あたりの単価を決めて出来高払いを一定額プラスして支給しているところもあります。良いかどうかは一概に言えませんが、モチベーションを上げる手段にはなっています。

ほかにも開設する際の借金の連帯保証人にするといった、”縛り”をつけることも効果があります。


【3】本院カルチャーの共有化
分院に独自のカルチャーができてしまうと、組織として成り立たなくなります。本院のカルチャーを定着させるために、スタート時から本院のスタッフをある程度配置させたり、本院院長が適度に顔を出すといったことが必要です。
本院から文書で指示が回ってくるよりも、直接顔をあわせるほうが、言葉以上のものが伝わります。さらに両院のスタッフを交流させればマンネリ防止化にもつながるでしょう。こうした観点から、あまり遠隔地に分院をつくることは避けるべきです。

分院展開の効果は、診療所の数による単純な足し引きで現れるものではありません。何倍もの相乗効果が得られる半面、マイナス効果につながる恐れもあります。
資金面だけでなく、こうした対策ができるかどうかを含めて慎重に検討することが肝要です。

駅近で開業したが、患者数が一向に増えない汗
場所を移転したほうがいい?


開業しても患者数がちっとも増えない。
その最終的な対応策の一つが移転である。


ただ、軽率な判断は禁物。

移転を決断する前に、何をする必要があるのか?

移転して成功するには、どんなポイントがあるのか。

今回は、移転に関する留意点を提示する。


病院今月のお悩み診療所病院
S内科クリニック
都心から少し離れた住宅街にあるS内科クリニック。
駅から近い商業ビルの一角で開業したものの、患者数がさっぱり増えない。
患者数を伸ばすためにも、移転すべきかどうか迷っている。


診療圏調査の甘さが露呈し、患者数が伸び悩む

開業して2年くらいたっても患者数が伸びないと、移転を考える院長も決して少なくありません。

つい最近も、開業して1年半の院長から「患者数が1日20人程度で、移転すべきかどうか迷っている」との相談を受けました。

1日当たりの患者数が伸び悩んでいると、つい「場所が悪いのでは」と立地のせいにして移転を考えがちですが、
まずは十分に現状を分析し、そのうえで移転を検討することをおすすめします。
移転するとなれば当然資金が必要になり、開業した際の借金が残っているとダブルコストとして負担が大きくなるからです。
過去に、生活にまで支障が出て、泣く泣く勤務医に戻ったケースを知っています。
検討すべきポイントの一つは、立地は事前の診療圏調査が本当に適正だったかどうかということです。
私が相談を受けた前出の診療所のケースでも実際に調べてみると事前の診療圏調査が実に甘いことがわかりました。
同院の近くには、古くから開業している同じ診療科の先生がおり、数多くの患者さんが来院していました。
しかし、その1か所しかないことを理由に、開業支援業者から「開業すれば、半数の患者さんの来院が見込める」と言われたそうです。
また、「バスターミナルのある駅から近い」と紹介され入居したビルは、確かに駅から近いものの、1本裏道にあり駅からは見えない場所。バスターミナルの乗降客の流れもビルの前ではなかったのです。
診療所は、飲食店などのように駅前の路面店である必要性はありませんが、アクセスは重要。こうした明らかな立地の選定ミスが生じないよう、事前に冷静に見極めることが必要です。



自分自身の姿勢をチェックし移転の必要性を再考する

検証すべきもう一つのポイントは、医師の姿勢です。
患者数が伸びない原因には、「患者さんの話を聞かない」「患者さんの目の前でスタッフを怒鳴る」など、院長の問題行動があることも少なくありません。良かれと思ってとっている普段の行動が実は患者さんの不満に繋がっている可能性もあります。
患者さんに対してアンケート調査を実施するなど、どういう評価を受けているのか、客観的に気づく”機会”を作るといいでしょう。
知人のある大学医師は、開業したいと言う後輩の医師にこんなことを忠告するそうです。
「君の前任の先生より患者さんが増えたか?一緒に働く看護師からも評価を得ているか。まず、それを確認すべき。そこで評価されていない医師が開業しても、成功しない。」と。
診療所は、院長が”商品”ともいえます。治療や診断の技術はもちろん、患者さんが話しやすいかなど、今一度、自己チェックすべきです。
「自分の人柄が伝わっていない」というのであれば、院内勉強会を開催するなど、診療以外に患者さんと触れ合う機会を設けてみるといいでしょう。
改善点を見つけても修正したり、あるいは修正する努力ができなければ、移転しても同じように失敗する可能性が高いと思われます。
立地は重要ですが、それが全てではありません。「場所さえ変われば患者数が増える」と思うのは幻想。
繰り返しますが、全てやり切ったかどうかを確認してから、移転を検討すべきです。



競合診療所の調査や口コミ発生などが成功のカギ
最後に、移転で成功を収めるための秘訣を3つ提示します。


1 きちんと診療圏調査を行うこと


診療圏調査を他人任せにする院長をよく見かけますが、企業などは「サポート」をしてくれても”お膳立て”まではしてくれません。院長自ら候補地に赴き、患者さんになった時のことを想定して、アクセスの良し悪しを自分の目で確認すべきです。競合の診療所があるのならば、インターネットをうまく活用して、その診療所の雰囲気や院長の経歴・専門分野を調べる他、医薬品・医療機器メーカーや卸の担当者に評判などをそれとなく聞いてみるといいでしょう。



2 クリニックモールの活用

複数の診療所が1か所に集まっているクリニックモールに移転すれば、ほかの診療所からの紹介や、多様なニーズの患者さんが集まるため、単体で診療所を運営するよりも自院が患者さんの目に触れる機会が増えることが期待できます。ただし、クリニックモールでは院長の性格が重要になります。
他科の医師との連携・協働が必要なため、個性的すぎたり我の強い院長だとうまくやっていけないケースもあります。協調性が求められます。



3 口コミ発生への取り組み

WEB上のサイトを含めて、口コミは患者数を伸ばすために不可欠な要素です。特に地方や都市郊外は口コミ文化の影響が大きい傾向にあるので、口コミが発生するような仕掛けを心がけるべきです。町内会や老人会の”顔役”といえる人などに院長自ら挨拶に行ったり、内覧会を開催して招待するといった工夫が考えられます。影響力が大きい人に自院を知ってもらうことで、口コミが早く発生・拡大していくことが期待できます。
知人からの紹介が多いか少ないかは、診療所の人気のパロメーター。ファンが増えない限り、移転先でも評価は得られません。

職員による犯罪編【3】


Q.スタッフが当院の患者情報やノウハウを漏洩!?
先日、ある患者さんから「個人情報が漏れているのではないか」と間かれました。ネットワークのセキュリティーも講じていますし、カルテ棚の施錠もしており、心当たりがありません。可能性があるとすれば、スタッフによる情報漏洩しか考えられないのですが…。


A.最近、報道されたソニーの個人情報流出のケースを見てもわかるように、まず組織の責任が問われます。

カルテの管理体制はもちろん、職員への教育も重要。入職時に患者情報を合む個人情報などに関する守秘義務の誓約書などを書かせたり、情報漏洩に基づいて使用者が第三者に損害賠償義務を負担した場合には、情報を漏洩させた職員に対して使用者が賠償責任を追及することがあり得ることなどを周知することが必要でしょう。
なお、使用者から職員への賠償請求によって、必ずしも使用者に生じたすべての損害が補填されるとは限りません。種々の事情で職員に問える責任の範囲なども異なります。その意味でも、情報の管理体制の徹底は重要です。

職員による犯罪編【2】


Q.医薬品をスタッフが持ち出しているのでは…
最近、医薬品の在庫と使用量か合わないことがあります。気のせいかと思っていたのですが、経時的に確認していくと、特定の職員がシフトに入っているときに医薬品がなくなっているようで。確たる証拠はないうえ、幸いなことに睡限薬や向精神薬のような犯菲につながるようなものではないので内々に片づけてしまいたぃと思うのですが。何かいいアイデアはありませんか。


A.医薬品に限らず、院内にある備品を無断で院外に持ち出すことは「窃盜罪」に該当します。

しかし、この場合、窃盜罪を立証するのが難しい側面もあります。たとえば、ある職員が備品がを持ち出そうとしていても、 院外に出た瞬間を取り押さえた場合は別として、「他の場所に移そうとしていた」「今から元の場所に戻そうと考えていたところ」などと言い逃れをされてしまう可能性があるからです。
ただ、医薬品の場合は、更衣室などの治療行為と関係ない場所に持ち出す必要性は乏しいでしょうから、院外に持ち出さなくてもスタッフルームや更表室に持ち込んだ時点で窃盗罪に問える可能性はあるものと考えます。
さて、ご相談の件ですが、内々に片づけるのであれば、まずはその職員に言い訳ができないように、現場を押さえるなど、窃盗行為を確定させたうえで、懲戒解雇処分とする対処が考えられます。この際後に、「盗っていないのに、盗ったとして解雇された」などのケチをつけられないように、当該職員に自己の行為を書面に記載させておくことも事後の紛争回避としては有益です。
また、職員の窃取によって損害が生じていれば、これに対する賠償も請求できます。さらに、今後の防止を考えるのであれば、医薬品を無断で持ち出すことは「犯罪」となりうる旨を全員に伝えることが有効でしょう。
このほかの対策としては、やはり医薬品の在庫管理の徹底です。 管理者を決めて、院長とともにこまめにチェックする。スキがないと思えば、最初から誰も持ち出そうなどいう気を起さないはずです

職員による犯罪編【1】


Q.スタッフが日々の売上金を横領しているように感じる
当院には、スタッフが7人います。シフト制にしており、日々の掃除や売上金はスタッフ同士で話し合うことで任せています。
しかし、 最近になってレジの売上と小銭が合わないことが多くなってきました。スタッフを疑いたくはないのですが、それまではきちんと1円単位まで合っていたので、「もしや…」と不安です。横領を防ぐ方法を教えてください。


A.刑事事件になる可能性がありますし、同時に民事で賠償金を請求することも可能

まず、金銭を搾取していた場合は、「業務上横領罪」や「窃盗罪」に該当して、刑事事件になる可能性がありますし、同時に民事で賠償金を請求することも可能です。ただし、暴行や傷害、恐喝などに多く見られる″部外者〟による犯罪と比べて、″身内〟による犯罪は立証しづらい側面があります。
証拠の有無はもちろん、行為者を特定することに因難を伴うケースが多いからです。
対策としては、現金を管理する担当者を1人決めることです。今回のケースのように、担当者が決まっていなければ責任の所在があいまいで、行為者の特定がより困難になる場合が考えられます。
刑事事件にするためではなく、管理を徹底して犯罪を防ぐためにも、特定の管理者を置くことです。
併せて、院長自らも確認することが必要です。私の経験では、日々の現金チェックを行う院長は少ないように思います。 日々の診療で1日の診療間が終了する頃には疲れてしまい、ついスタッフに任せきりにしてしまいがちですが、一般的に身内による横領などのケースは少額から始まり、次第に大きな金額へとごまかすようになっていく。それを防ぐためにも、院長自ら小額でも日々のチェックを怠らないことが肝要です。

患者による犯罪編【4】

Q.突然、押し込み強盗が入った…金銭を渡したほうがいい?
「金を出せ」。受付で凶器のようなものを持った男に脅されました。受付スタッフも自分も突然のことで混乱してしまい、結局、相手の言われるままに、素直に金を出してしまいました。 今から考えると相手が持つていたのは、おそらく黒い傘か棒。何もできなった自分が悔しいやら情けないやらで。こうした強盗被害を防ぐための方法や、強盗に押し入られた時にはどのような対応を行うべきなのでしょうか。



A.悔しいかもしれませんが、素直に金を渡すことが得策です。

「診療所に押し込み強盗なんてないだろう」と思われがちですが、実際にこのようなケースは存在します。一昨年に行われた事業仕分けでも「開業医の年収は高すぎる」という指摘がありましたが、世間には「医師=お金もち」というイメージが根強く残っているようです。
そのため、戸建ての診療所の場合は住居部分に長入される恐れもありますので、住居の安全確保も重要になります。
ご相談の件ですが、強盗に入られてしまった場合には、 悔しいかもしれませんが、素直に金を渡すことが得策です。
たとえ腕に自信があろうとも素人が武器を持っている相手と対時するのは非常に危険ですし、下手に刺激を与えると、患者さんに危害が及ぶ恐れもあるからです。
もちろん、警察に通報することを考えて、強盗の特微などを確認しておく必要はあります。
こうした強盗対策としては防犯カメラやブザーなどを設置し、その旨を告示しておくことが有効です。同じ診療所であれば逮捕されるリスクの低い診療所を組うでしょうから、防犯対策を行っているとアピールすることは抑止効果を期待できます。
逆に強盗に入られやすいのは、逃走に時間のかからない1階部分にあり、受付スタッフも少ない診療所。そのため受付スタッフをできるだけ1人にしないという配慮も必要です。どうしても1人しか配置できない場合は、受付と診察室など、離れたスペースでも非常事態を共有できるよう、防犯ブザーを設置するといった工夫も考えてください。

患者による犯罪編【3】


Q.受診したにもかかわらず患者が費用を支払わない
長く通院してくださっている患者さんが、先日、日帰り手術を受けました。費用がいつもより高額だったせいか、当日は所持金が少なく、後日支払ってもらうことにしました。
しかし、その後も通院の度に伝えても、支払う様子がありません。未収金については、決定的な対策がなく、知人の開業医に聞いても明確な回答は得られませんでした。内容証明付きの郵便を送ろうと思っているのですが、通院患者さんということもあり、気が引けます。


A.未収金には請求をかけるしか方法はありません
方法はさまざまですが、請求する姿勢を強く見せるためには、郵便、内容証明付き郵便、支払い催促、少額訴訟などの方法も効果的です。
通院患者さんということで、まずは郵使による催促でいいでしょう。それでも支払ってもらえなぃ場合は、「支払督促」をおすすめします。内容証明付き郵使は、相手にプレッシャーを与える効果はあっても、法的な拘束力はありません。郵使局が送付した書面の内容を証明するだけで、手紙と変わらないのです。 受け取った側に無視されれば、それで終わりです。
これに対して、支払督促は、裁判所を利用した手統きになり、書類審査のみで結論が裁判所書記官によって支払いをするように督促が出してもらえます。法延に出る必要がありませんし、費用も通常の訴訟の半額と利用しやすくなっています。
相手が支払督促を無視した場合は、通常の裁判での判決と同様に強制執行を行うことも可能となります。
ただし、受け取った側が異議を中し立てると請求額に応じて地方裁判所または簡場裁判所の民事訴訟の手続に移行しますので、この場合は法延への出延が必要となります。
このほか、60万円以下の金銭の支払いを求める場合には、「少額訴訟」という制度を利用することも可能です。これは、1回の口頭弁論で審理を行うもので、費用も請求金額によって異なりますが、5000円くらいからと利用しやすくなっています。
さらに、この少額訴公は簡易裁判所で行うことになりますので、院長が多忙であれば事務長などの職員に任せることもできます。自分が主張したいことの証拠などが揃ってさえいれば、裁判所書記官がサポートしてくれるため、裁判官の指揮に従って訴訟を進めればよく、特別な知識がなくても十分利用できます。 最高裁判所のホームページにもわかりやすく説明されています。

なお、高齢者の場合、お子さんなどに支払いを求めるケースがありますが、法律上はお子さん達に支払い義務はありません。家族から任意に支払いを受けることは問題ありませんが、その際に、逆に、患者情報の秘密義務を犯すことがないように注意が必要です。

患者による犯罪編【2】


Q.患者から「訴えてやる」とお金を要求されたのですが…
治療効果に不満だったのか、患者さんから「このままでは、インターネットに悪評を流す。それが嫌ならお金で誠意をみせてほしい」と言われました。
その患者さんは、治療以外のことでこれまでにもたびたび着情を
言ってくる″クレーマー患者″です。もちろん、お金は渡せないので、きちんと説明することで解決しようと試みたのですが、今度は「対応できないのなら、この場に居座る」と言い出しました。納得してもらえるように、いるいろな方法を言ってみるものの動こうとしません。一体どう対応すればよいのでしょうか?


A.事例のうち、前半の金品を要求している点は、「恐喝罪」に相当する可能性があります。

法的には、「社会通念上、相手方を畏怖させる程度の脅迫または暴行を用いて、 相手方を畏怖させて、財産または財産上の利益を行為者または第三者に得させること」を言いますが、ここにいう「脅迫」とは、相手方もしくは相手方の親族の生命や名誉、財産などに害を与えることを告知する行為を意味します。
この「脅迫行為」があったかどうかが力ギとなりますが、どんな言業を'言われたかが重要となりますので、できるだけ第三者の目が入る場所で対応することが肝要です。
この点は、暴行の事例と同じです。 実際に金銭を渡した場合には、その交付の事実を立証するために、受付カウンター付近に防犯カメラを設置するのもいいでしょう。
居座ってしまった点については、 恐喝至るケースよりも診療所では多いケースではないかと思います。対策は「第三者に介入し
てもらう」ことです。
怒りの矛先である当事者が対応しても、相手を刺激したり、納得してもらうまでに時間がかかり、次第に感情が高ぶって傷害に発展するケースもあります。 警察や弁護士を呼んで第三者を介入させるべきです。
なお、用法第130条後段には「不退去罪」という罪があります。
これは、繰り返し「出て行ってほしい」と言っても属座り続けるような場合を指します。したがって、正当な理由がないにもかかわらず、退去を求めているにもかかわらず居座られてしまうような場合には、 設裏Jに連絡をして対処をしてもらうことも選択肢に入れて対処すべきでしょう。

カメラを含めた“目”が防止のカキ
自分たちで対応せず110番を


実際に診療所で考えられる犯罪はどんなことがあるのだるうか。
また、防ぐためにはどんな対策が必要なのか。
ここではQ&Aで解説する。
診療所顧間弁護士を務め、それ以外にも開業医から数多くの相談を寄せられるTGSパートナーズ法律事務所の弁護士・佐藤仁良氏に答えてもらった。


医療コンサルタント&温泉ソムリエのブログ-佐藤弁護士 佐藤仁良(さとうまさふみ)1980年福島県福島市出身


■経歴

2003年、早稲田大学法学部卒業後

2004年、最高裁判所司法研修所入所。
2005年、司法研修終了後、弁護士登録(第一東京弁護士会所属)を行い

都内の法律事務所で勤務。

2008年6月に現事務所を共同で開所。


患者による犯罪編【1】

Q.「治療の仕方が悪い」と逆恨みで患者さんから暴行を受けた!
先日、患者さんが治療の翌日に来院し、「治療法が悪かったのではないか」と言って、受付スタッフに苦情を言いました。 診察中だったため、そのスタッフが「先生は今、診察中なのでおかけになってお待ちください」と対応したものの、「待てない」の一点張り。そのうち感情が高ぶり、スタッフの胸ぐらをつかみ、突き飛ばしたのです。これは犯罪なのでしょうか。また、どのように対応すればよいのでしょうか。


A.事例は「暴行罪」に該当します。

暴行罪の場合、刑事事件としては警察への刑事告訴が可能であり、民事事件としては暴行を受けたスタッフから患者に対して慰謝料の請求が可能となります。 暴力行為は法的には「有形力の行使」をいい、 殴打や蹴り飛ばすといつた行為はもちろん、胸ぐらをつかまれた、ちょっと押されたなど、実際に傷書を受けなくても法律では暴行と認められます。
ただし、暴行罪は傷害罪とは異なって「傷」が残りませんので立証が難しい犯罪といえます。立証するには、①目撃者がいること、②警察をすぐに呼んでその場で対応することが重要になります。①では、当事者同士だけだと暴力を振るったかどうか水掛け論になる可能性がありますし、けがをしていない場合には、暴行行為の存在が客観的に明らかになりにくいところでもあります。
第三者が証言してくれれば、 暴行行為があったことが立証し得ますので、トラブルがあった時にはできるだけ第三者がいる場所で対応することが重要です。診療所の場合は、あえて待合に出ていったり、個室で対応するにしてもスタッフを同席させるといった工夫をするといいでしょう。
また、防犯カメラで録画できる体制を備えることも有効です。

②では、たとえばトラブルの翌日に「やっばり訴えよう」と思っても、一度患者さんを帰宅させた後に時間が経つほど、相手に言い分を考える隙を与えることになりますし、第三者の証言があったとしても直後よりも立証は難しくなるといえるでしょう。
すぐに警察を呼び、対応することがカギです。
近くに交番に電話したほうが早く駆けつけてくれる場合もあります。


次回へ続く