お久しぶりです。今夜は坂口安吾『白痴』より『母の上京』を。

簡単にご紹介。
主人公の夏川。隣の家のお好み焼きやの女とその娘。その部屋に居候している女形のヒロシ。
題名にもなっている夏川の母。
場面は夏川が戦後故郷へ音信不通になっているところ、母が夏川の居場所を突き止めて部屋にいる、という出だしから夏川自身の話になっています。

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 1番好きなせりふ
「十八という年齢が人生の女王であり、そして、それ故、彼女は無自覚な、最も傍若無人な女王であった。」
 私ももうじき十八歳になろうかという年頃ですのでこの言葉は素直に胸に入ってきました。好き放題やりたい放題、人目もはばからずに振る舞うのは十八歳の特権ですよね。この小説の戦後という時代背景とは全然環境が違いますけど、いつの時代だって十八歳はそうして生きてきたんです。

 次にこの本の好きなところはやっぱりラストシーンです。身ぐるみ剥がされてすごすご家に帰る男2人、突然むらむらして相手を襲おうと組み敷いたところに自分のお母さんがいて「ヤア、いらっしゃい」、なんて。
 途中までお母さんが出てこないもんだから夏川とヒロシはこのまま逃げちゃうんじゃないかなぁ…とハラハラしていた私でしたがこのラストにはくすりとさせられました。しかも成り行きとはいえきちんと心の中で久闊を詫びる夏川には好感度急上昇ですよ。先に読んだ白痴とは終わり方が180度違ってすごく印象的でした。





 また、性に奔放な花柳界の娘と、性に貪欲な母、性に品格のある女形。 対比がはっきりしていてそれもまた見どころではないでしょうか。み〜んなまとめて愛しいです。

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