その日は晴れていた。
土曜日の朝。気が重い? そこまででもない。
決して落ち込んではいないのは確かだった。
予想していたことが,はっきりする。
その後の道が見える,どこかそんな期待があったのかもしれない。
そんな私をパートナーはどんなふうに見ていたのだろう。
彼女の態度はいつものとおりだった。
会社での出来事だとか,日常の何気ない出来事だとか
いつものように話をしてくれた。
普通だった。
しかし,これから行く先はこれまで経験したことがない
非日常的な場所なのだ。
「こっちの出口を出て,昇ってすぐだから」
駅の改札を出て,いくつかある出入り口の一つを指差しながら,そう言った。
階段を登り,眩しい光が目に飛び込んできた。
クリニックのある建物は,階段を登ってすぐの場所にあった。
事前に,パートナーが予約をしてくれていたので,
受付はスムーズだった。
すでに待合室には数人待ったいた。
少し緊張している自分に気がついた。
ここは心療内科のあるクリニック。
これから起こることの結末に不安が出てきたのか,
それともただ単に,慣れないことへの緊張感なのだろうか。
椅子に腰を下ろし,じっと黙って待つことにした。
しばらくして,名前を呼ばれた。
「こちらへどうぞ」
医師と思われる人の後について,診察室を通り過ぎ,
一番奥まった部屋に一人で入った。
部屋の大きさは4畳半くらいというところだろうか。
小さな机が置いてあり,椅子が置かれたいた。
「どうそお座りください」
私は慌てて
「はい」
と答えて,その椅子に座った。
その医師らしき服装の女性は,かなり年配の方。
「この用紙に記入してくださいね」
指定された紙を見ると,十数問の質問からなる問診票だった。
よく見ると,それはうつの症状が中心の質問内容だった。
それを一問一問読みながら記入していったのだが,
いくつか理解できないことに気がついた。
言葉としては読めるのだが,しかし頭の中に入ってこないのだ。
これはやばい,何かがおかしい,それに気がついた。
それはここ数日起こっていることと同じなのだ。
いつもなら理解できることが,頭の中に入ってこない,理解しきれない。
それが今起こっている。
それでもなんとか理解する努力をしながら,書いた。
緊張そして焦り。
たったこの程度の文章が完全に理解しきれないのは,
なぜだ?
