東京・初台 #新国立劇場オープン20周年記念プログラム開幕作品 舞台 #トロイ戦争は起こらない 絶賛公演中でございます!

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@新国立劇場


21公演中、3分の2の14公演が終わり、本日10/18から今週日曜の10/22日曜まで、残すところ 東京公演あと7公演になりました( T_T)\(^-^ )


連日観劇しており、エクトールに、ジロドゥの世界に、この舞台にどっぷり浸り、惚れ込んでしまっているので、公演が終わってしまうことが、既に 大変さみしく名残惜しい気持ちで いっぱいでございます T T


そんな中、先日、10/15日曜日、昼公演終演後、夕方17時より、新国立劇場マンスリー・プロジェクト10月の #演劇講座 #ジャンジロドゥの世界 が昼公演の感動と熱気、歓声が聞こえてくるような ぬくもり残る同じ会場 中劇場で、講師の間瀬幸江(ませゆきえ)先生をお迎えした講演がありました。

本公演台本のために岩切正一郎さんが訳された 「ジャン・ジロドゥ 1.トロイ戦争は起こらない」(ハヤカワ演劇文庫、著者 ジャン・ジロドゥ、訳者 岩切正一郎、早川書房発行)を2度読んで、舞台をみて、再び読み込んで、の貴重な機会。フランス人ジロドゥの美しくウィットに富んだ言葉、表現、その言葉の裏側に隠されたジロドゥの世界を、本公演を2度観劇なさった先生が、どんな切り口でお話くださるのか、楽しみで楽しみで、メモのためのノート、筆記用具持参で、参加してまいりました。その様子、お伝えします。

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(この文庫本、新国立劇場 中劇場ホールの関連書籍売場で販売され、連日完売が続いています。先日10/16に販売の方に伺うと、本日10/18入荷の予定とのお話でした。到着時間未定とのことですので、確実にお求めになりたい方は、書店でお求めくださいませ。)


間瀬先生、ユーモアも交え、お話くださった80分間。少し難しい専門的なお話もありましたが、先生ご自身がジロドゥ作品に強く惹かれてから30年もの間、研究し続けてこられていること、そして、いまもなお

「まだ明確な答えが出ないんですよね」

と。ジロドゥへの深い尊敬と愛情がこもったお話、その気持ちも一緒に受け取って、とても豊かな時間になりました。ジロドゥさんも、空の上で、喜んでおられるやろうなぁと思いました。

このような機会を作ってくださり、新国立劇場の関係者の方々にも、お礼をお伝えしたいです。ありがとうございます。

では、はじまります〜😊⭐️


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まずは、講師の方のご紹介から。


宮城学院女子大学准教授 間瀬幸江(ませ ゆきえ)さん。


間瀬先生は、現在49歳。大学3年 20歳の頃に、諏訪正 著書「ジュヴェの肖像」(芸立出版、1989年)を読み、ジャン・ジロドゥの世界に惹きこまれた。このジュヴェとは、1935年にフランスで初演大ヒットとなった 舞台トロイ戦争は起こらない でエクトール役を演じた俳優 ルイ・ジュヴェのこと。先生は、ジュヴェの俳優教育の特異性にも強い関心を持ち、その時から30年間、ジャン・ジロドゥの世界を研究し続けておられる方。会場で配られた先生のプロフィールによると

『現在は、大学で学生達にに"外国語としてのフランス語"を教える傍ら、異文化との接触に起因する学習者の主体性と俳優の"演技" "役作り"の構造的類似を念頭においた実践研究を始めている。』

とのことです。(むむむ難しい。。後半部分、脳みそがついていけません😅高尚です。大丈夫か?この脳みそ、ついていけるかな?😅そんな気持ちで講義に入りました。)

著書に『小説から演劇へ ジャン・ジロドゥ話法の変遷』(早稲田大学出版部、2010年)が出版中です。


なお、以下本文は、先生がお話くださった内容の中から、エクトールに話を絞って、文章を少し噛み砕く形で整えることを心がけました。多岐に渡りお話くださったので、一度にまとめてですと長くなりますし、読む側も大変かと思いますので、エクトールに話を絞って、こちらでまとめてお伝えする形をとり構成しました。できるだけネタバレは避けたかったのですが、お話の内容が、ネタバレを避けては伝わる内容ではなかったので、かなり具体的なネタバレもそこまま載せていますので、ネタバレが困る方は、この先はお読みになることはお控えください。よろしくお願いします。

また先生のお話の中に(括弧)で登場する文章は、ご参考まで、の意味で補足させていただいています。


それから、今回の公演 トロイ戦争は起こらないパンフレット(有料1000円)に掲載されているジャン・ジロドゥの略年譜も下段に載せますので、よろしければ、ご参考になさってくださいね。

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🔹新国立劇場マンスリープロジェクト10月
・演劇講座 ジャン・ジロドゥの世界
・講師: 間瀬幸江 先生(宮城学院女子大学准教授)

・日時: 2017年10月15日 日曜日 午後17時より
・場所: 新国立劇場 中劇場にて

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間瀬先生ご登壇。拍手。

はじめに、本日は有難い機会をくださって、新国立劇場、トロイ戦争は起こらないの上演、プロダクション、製作関係者の皆様に、お礼を申し上げたい。そしてお集まりくださった皆さんありがとうございます。

ジャン・ジロドゥの世界を研究して30年。この機会が、恩返しになればこんな有難いことはないと思い、お受けしました。

私がジャン・ジロドゥ作品との出会ったのは、20歳の頃。若い頃。1989年に(フランス俳優 ルイ・)『ジュヴェの肖像』を読んで、おぉー面白いと。そのときからジロドゥ作品の研究しています。


今日は、トロイ戦争は起こらない の どんな男をも虜にする美女エレーヌと、夫一筋の貞淑な妻アンドロマック。戦争に魅入られる男エクトール。この2人の女性との三角関係に着目しながら、演劇作品 トロイ戦争は起こらない の魅力を考えます。(ここではエクトールの話を中心にお伝えします。ご了承ください。)


実際に本舞台を2回 観劇しました。それでも、何度聞いても、ジロドゥ何言ってんの?と、ジロドゥの言葉の不可解さ、ロジックズレてない?が気になって、感情移入できなかったところもあります。


ご覧になった方はお分かりになると思いますが、戦争が確定した トロイ戦争は起こる とエクトールが言うシーンでも、鈴木杏さん演じるアンドロマックが、戦争がはじまるはじまろうとする恐怖で耳を塞いでいるのに、エクトールはアンドロマックが塞ぐ手を引っ張って離そうとする。あれ、ひどくないですか?😅(会場から笑い声)

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エクトールもアンドロマックも、実際に台本にも書いてある通り演じられてるんですけど、ジロドゥの作品には、言葉のロジックだけでなく、こういう理解できない不可解さもあるんですよね。そこも魅力の1つと思います。

話が逸れましたが、まずは、トロイ戦争は起こらないを書いた作家であり外交官のジャン・ジロドゥについて。どんな人なのかを写真から考察します。

誰しも1枚の写真だけでは、その人のことを表せないし、伝わらない。そこで、3枚の写真をご用意しました。

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↑3枚の写真を見ていただく限り、ジロドゥの表情も、こちらが受けるイメージも違います。

写真は、若い時のもの、年取ったもの、人となりがわかるような写真、何枚かある方が望ましいと思うんです。なぜなら、人間の成長は、1枚の写真だけでは、定義し難いものだから。

ジロドゥの写真を比べても、違いがあります。写真①②に比べると、写真③は表情が豊かですよね。犬を抱いて笑っています。(小説を書きながら、外務省に勤め、のちに外交官から情報局の総裁まで務めたジロドゥですが)犬好きなジロドゥの優しい一面もみることができます。

写真②は、1917年のもので、フランスの軍服を着ています。(1914年〜)第一次世界大戦に兵士として従軍していたときの写真です。世界の国々あげての総力戦だった第一次世界大戦は、肉体壊し合う塹壕戦。戦地に兵士として赴き、ドイツ語が堪能だった兵士としても通訳もやっていた。

戦地の通訳がどんなものか、想像してみてください。

今でこそ、ヘッドホンをつけ、机上で通訳しますが、戦地には、机上はありません。戦地でジロドゥは、捕虜にされた人の生死に関わる現場で通訳をしていたー。(つまり戦地では、最前線で体を張って戦う人だけが兵士でないということ。それも塹壕戦の現場だということ。想像するだけで言葉を失います。。)

ジロドゥは、戦に行って、生死に直結するまさに戦場の真ん中にいた。そして自らもこの写真が撮影される前、1914年に榴散弾で負傷している。

ジロドゥは、ドイツが大好きだったんです。生涯を通して、ドイツとフランス、仲良くなって欲しかったんだと思います。

そして、この トロイ戦争は起こらない が書かれたのは1935年。第一次世界大戦と第二次世界大戦の間。ジロドゥが自身が戦場の後ろにいながらも、自分も負傷し傷つき、隣国の兵士たちが肉弾戦で命を落とし、傷ついている姿を見ている。どうにかして、もう2度と戦争を起こすまい と強く誓ったに違いありません。。。

ジロドゥは、戦争を何としても起こすまい と、鈴木亮平さん演じるエクトールに、想いを投影したことは言うまでもありません。

ジロドゥは、エクトールに想いを託したといえば、こんな話もあります。

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ジロドゥだけではなかったんですね。本公演の初演でエクトール役を演じたルイ・ジュヴェも、エクトールに自分の想いを託しました。

ジロドゥもジュヴェも第一次世界大戦を大変よく知ってるんです。

ジロドゥの話は先ほどお伝えしましたが、ジュヴェは家族から役者になることを反対されていたんです。この資格をとったら「役者をやっていいよ」と家族にいわれ奮起、取得したのが薬剤師。

戦争中、ジロドゥもジュヴェも、その能力のうえに、戦地で(痛みを伴うことになり)厳しさも記憶してる2人。


この2人が出会い、

戦争を起こしたくない想いを直結していった

のが、この舞台 トロイ戦争は起こらない なのです。

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本公演の初演は、1935年にフランス パリで行われました。(間瀬先生が最初にジロドゥに心惹かれた書籍「ジュヴェの肖像」の )ルイ・ジュヴェがエクトール役を演じ、演出も担当しました。

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↑間瀬先生から配られた講演資料より。



このとき、ジロドゥの作品を元に、演出していく中で、ジロドゥとジュヴェは、同じシーンをカットしたかった。

エクトールが、死者へ、戦没者へ演説するシーンがありますよね?あのシーンです。


1つの演説が、ひとつひとつの死に向き合うことができるのか?と。
  

死者達への追悼演説は、フィクションになりにくい。しかも(このエクトールが語りかける死者達とは、ジロドゥも兵士として従軍した第一次大戦での死者に向けての言葉だった。その第一次世界大戦は)総力戦だった。それだけに、観客の中に戦地に行った人、戦場で自分の近しい人を亡くした家族も来るかもしれない。


それでも、カットせずに現在に至っているのは、ジロドゥとジュヴェ、そして初演時、ジュヴェとともに舞台に立ったエレーヌ役 マドレーヌ・エズレイが、ジュヴェが抱える戦地から戻ってもなお続く戦災で受けた深い心の傷、痛みに寄り添った言葉があったからなのです。

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↑写真左端がエレーヌ役 マドレーヌ・オズレイ。間瀬先生からの配布資料より。



オズレイがジュヴェにこういった。


「これはあなたがいつも本当に考えていることでしょう」


そして


「この演説は あなたの苦しみをちゃんと代弁できている言葉」


とも。



このオズレイの言葉でジュヴェが折れた形で、エクトールの演説シーンはカットされることなく、1935年アテネ座で初上演されました。"象徴"になることを畏れたジロドゥとジュヴェでしたが、初演が大ヒット、2年後の1937年には再演もされるほどの作品になりました。



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そのときから80年後の2017年。ジロドゥ、ジュヴェ、オズレイの想いを受け取って、戯曲として語り継がれてきました。
そして、いま、この舞台が日本で上演され、鈴木亮平さん演じるエクトールが、今日も舞台で、この演説をします。


ジロドゥとジュヴェが戦地で受けた深い心と体の傷。ジュヴェの痛みに寄り添ったオズレイ。

ジロドゥが本作を戯曲に書いた1935年から82年の時を経てもなお、世界のどこかでいまも戦争は起きています。この瞬間も。。


そして、今日も再び、新国立劇場から戦没者への祈りが 捧げられます。


平和を願うバトンが今日も過去から未来へとつながっていく。。。




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↑鈴木亮平さん演じるエクトール 演説シーン。



講演内容はここまで。。
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※なお、今回載せた内容を、ジャン・ジロドゥの世界 で講師をしてくださった 間瀬幸江先生が読んでくださり、直々にツイッターにコメントをくださいました😭一部内容を加筆修正しましたことをお伝えするとともに、この場を借りて、あらためて先生にお詫びとお礼 申し上げます。間瀬先生、ご指摘くださりありがとうございます。またご丁寧にお返事くださり感謝しております。まさか間瀬先生から直接コメントをいただけるとは思ってもいなかったので、そのお気持ち とてもうれしく、ありがたく受け取りました。この場をお借りして、御礼申しあげます。ありがとうございます。

また、先生がこのページを読んでくださり、他の内容には修正加筆部分ないとのことですので、どうぞご安心くださいませ。では、よろしくお願いします。

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講演に参加して。



まだまだ先生のお話は続きました。その中で、私はこのお話を、何よりもお伝えしたかったのです。

あーだから あのエクトールの演説シーンがあんなにも心にグワングワン響く言葉なんだと、涙が止まらなくなるんだと思いました。

先生から、ジロドゥだけでなく、もう1人ルイじ・ジュヴェという方がおられたことも、このお話をきっかけに知りました。

作家であり外交官でもあったジャン・ジロドゥと、薬剤師から役者の道に進んだ俳優ルイ・ジュヴェ。

2人が塹壕戦だった第一次世界大戦で従軍し、その壮絶な体験から、もう2度と戦争は起こすまいと、このトロイ戦争は起こらないの舞台に、このシーンに平和への祈りが強く込められている。この話に触れてから作品を見ると、俳優 鈴木亮平さん演じるエクトールの演説がより深く心に突き刺ささり、伝わり、立ち上がれなくなるくらい震えてしまいます。

作品が作られた背景、心情を知ることで、役者たちが舞台で発する台詞の裏に、どんな願いが込められているのかを掴むきっかけとしても、今回の間瀬先生の講演は、すでにハマっている私にとっても、ジロドゥの世界を掘り下げていく新たな出会いのひとときにもなりました。間瀬先生ありがとうございます。

そして、いまは亡き、戦没者の方々、ジロドゥ、ジュヴェの祈りが、時代を超えて、俳優 鈴木亮平さんをはじめ、キャストの皆さんの演技によって、舞台を通して、未来へつなぐ歴史の1ページになって、未来への平和へのバトンを受け取っているように感じて、とても尊く、清らかな時間を過ごしています。そして、その観客席に今日も座って、その想いを受け止める機会を与えてくださった機会に、深く感謝する想いでいっぱいです。

私自身、天災とはいえ、震災で命が助かったことへの自責の念がずっとあるので、この作品に出会って、毎回強いエールをいただいています。壮絶な戦災PTSDを抱え、苦しみ悶えながらも、絶望しちゃだめだ!と叫び、愛する人を全身全霊で守ろうと、戦争を起こすまいと邁進するエクトールの姿が、地元 西宮が震災で傷つき 手を取り合い、立ち上がってきた地元の姿と重なり、毎回深い感動とエールをもらっています。ありがとう。心から。

ミサイルが飛んでくるかもしれない今、対岸の火事ではなく、この作品が偶然にもいま上演されることも、意味があってのことと思わずにはいられません。

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この舞台を東京で観劇できるのも、残すところ、あと7回、あと5日間です。

ジロドゥ、ジュヴェの想いに、役者たちに会いに会場にお越しになりませんか?

歴史がわからなくても、大丈夫。戦争が起こるかもしれない、戦争は止められるの?戦争は起こるの?と、ずーっと戦争の話ばかりしていますが(笑)骨太なベースがしっかりあって、ユーモアもあって、泣いて、笑って、楽しめます。

衣装も、舞台も、音楽も、ヴァイオリ二スト金子飛鳥さんの演奏だけ。驚くほどシンプルです。それだけに、役者たちの演技がまっすぐ直球で心に届きます。

1階席でなくても、a階席もあります。二回席最後尾でも、ステージ全体がよく見えるし、前の人の頭が視界を遮ることもありません。

そして、ステージから離れていれば離れているほど、不思議と、演じてる役者さんたちの熱い想いが近く感じるほどの物凄い演技バトルが観れます。震えます。胸熱くなります。三回ものスタンディングオベーションが起き、拍手も鳴り止まないほどの素晴らしい舞台です。

お時間の許す方、ぜひ、会場へお運びください。

チケットは、インターネットからでも、直接、会場でも購入できます。



熱く語りましたが、そろそろ本日の公演に向かいます。今日からのラストスパートも、無事に、思いの丈を存分にぶつけられる客席に届く舞台になりますように。

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では、勇者エクトール、ジロドゥのせかいに会いに、いってきます!さいごまでお読みいただきありがとうございました。


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↑ジャン・ジロドゥ略年譜(舞台トロイ戦争は起こらないプログラムより抜粋。)