主治医たちはミーティングの最後に、私たち家族の疑問を聞く時間を作ってくれました。


1.糖原病患者に出会うことはあるのか。

 何も気にせず、普通に生活していると出会うことはないと思う。

そもそも、糖原病だと気付かない場合もあり、患者が見つかりにくい病気であること。なかなか同世代で近くに住んでいて、同じ学校に通うなんてことは確率的に少ない。という返答でした。

私はこれを聞いて、いかに糖原病が珍しくて、世間での認知度の低い病気なのかを理解して生活していくことになりました。

実際に息子が糖原病だと知ってネットで検索した際も、糖原病に関する医学的なページはいくつか見つかりましたが、患者さんやその家族の情報はこのアメブロで数個見つけたのと、Instagramでも数アカウント見つけたものと。

その少なさに驚きながらも情報の貴重さを心に噛み締めて読ませていただきました。

そして、糖原病を知るためには、もっと息子と家族の生活をより良いものにするには、自分で動いて糖原病の情報を見つけなければ、そして自分も落ち着いたらこの生活の情報をブログに書こうと思ったのです。


2.糖原病の為の通院は一生なのか。治療終了という形はあるのか。

 主治医の回答としては、糖原病の通院は一生ではない。というものでした。

 今まで見てきた9型糖原病の事例としては、患者本人がある程度の年齢になって自分で目標にした身長まで伸びたら治療を完了する、または自分で食事を管理出来る年齢になった上で肝臓の数値が安定すると治療完了という形が多いようです。

 身長を伸ばすためには頻回食やコーンスターチの摂取が必要となるのですが、学校に通うようになると10時や14時に食事をとるのは環境的に難しくなり、コーンスターチを飲む形になります。ただ、コーンスターチはあまり美味しいものではなく、患者本人が飲むのを辞めたいと申し出る事もあるそうです。

 そして糖原病は本当に個体差があり、今までに、身長は目標まで伸びたが肝臓の数値は悪いまま。身長は目標に届かなかったが肝臓の数値は良好。身長も肝臓の数値も目標通り。身長も肝臓の数値もまだ見守り必要。と患者本人や家族の頑張りとは関係なく個人の結果はそれぞれだったとのことです。

そして、大体の患者が身長の伸びがひと段落する中学生辺りで治療完了を考えるらしく、そこから先は患者自身がきちんと食事療法を続けて生活することを求められるとのことでした。


3.息子本人への病気の告知について。

 この9型糖原病は遺伝する病気であり、患者本人の食事に関して気をつける点が多い為、この時まだ幼い息子を前に、将来どうやって息子に病気を説明すればよいのか親として悩んでいました。

 そのことを伝えると、主治医は移行期医療という存在を教えてくれました。詳しくは皆さんそれぞれネットで調べていただきたいのですが、特にうちの息子に関わりがあるのは、この糖原病の影響でぽっこり出たお腹や、同年代よりも低い身長に関して、親や主治医に悩みを言いにくい年齢や環境になった時の相談先、この糖原病に関して親や主治医とは違う立場から説明して寄り添ってくれる存在であると理解しました。

 この時、まだ2歳に満たない息子は糖原病だということはもちろん理解していませんでしたが、3歳をすぎて幼稚園に通う頃には、自分は食事の間隔を空けなければいけないこと、コーンスターチを就寝前に飲むことは身長を伸ばす為という事はきちんと理解して自ら実践していました。

 また、主治医からも9型糖原病は次世代への遺伝の問題もあるし、急に腫瘍ができたりすることもあるから、小児にかかる期間を過ぎても見守りが必要な為、今まで見てきた患者さんにも皆んな移行期医療チームとの関わりをお勧めしてきたからね。と説明されました。

 このブログを書いている今はまだ移行期医療の方にはお世話になっていませんが、今後息子自身の病気への理解が深まる中で、お世話になりたいと思っています。


こうして、私たち家族の疑問にも答えていただいた後、最後に主治医から大切なメッセージを貰うことができました。

主治医は、「この糖原病は非常に症例が少なく、個人差の大きい病気です。向き合う時間も長いし、ポジティブに捉えるか深刻に捉えるかは家族によるけど、我々医療者は息子さんとご家族にハッピーな人生を過ごしてほしいと治療方針を考えています。確かに家庭で頑張る比重の大きい病ではありますが、ちょっとでも楽に頑張れるように色んな提案や相談、アドバイスをしながら医療チームも頑張りますので、ご両親も、もっと長い目で我々を頼ってください。」と言ってくれました。


この時、私は息子のまだ予想もつかない将来の事ばかりを心配していたし、食事療法の内容も方法もきちんと理解せずにただただ不安にかられていました。でも、この主治医からの言葉と話し合いに同席してくれた看護師さん、保育士さん、管理栄養士さんたちの表情を見て、息子の病気にこれから携わるのは親だけではないこと、本当に本気で皆んなでチームだということに気が付きました。

確かにこの時まで、これなら家でもできそう?という問いかけはたくさんありましたが、これをやってください、これをやらなきゃダメですなんて言われ方をしたことはありませんでした。この糖原病は本人と家庭と医療とみんなで向き合い続ける病。この時、これを理解できました。