~第11章~



アルバイトは、美咲の予想より少し早めに終わった。




p>「空男さん、すみません。結構、まちましたよね?」




 空男さんは、午後からは外の席に座って、何か鉛筆を紙に走らせていた。




「その・・・話って・・・」




 空男さんは、一瞬固まると思いだしたように手をたたいた。




(この様子からすると、そこまで重要じゃないわね)




 美咲は内心で察した。





「そうそう、君に直接コレを渡したくてね~」




 そう言うと、空男さんは美咲に封筒を渡した。封を開けるとそこにはチケットらしきものが一枚入っていた。




「これは?」




 空男さんは、ニッコリと笑った。




(あっ・・・神田くんそっくりだ・・・)




 美咲は不意に、真琴の笑顔を思い出した。





「これは、私の絵の展覧会のチケットだ。もしよけえばと、思ってね~」




 美咲は、改めてチケットを見た。




「それと、真琴の絵もあるよ」




 美咲は、バッとチケットから顔を上げた。そんな美咲に空男さんは、クスクスと笑った。美咲も、自分がした行為に気づき赤くなった。




「やっぱり、美咲ちゃんは、そうやって感情を表に出したほうがイイよ」




 美咲は、首をかしげた。




「感情を出した美咲ちゃんの方が可愛いってこと」




 空男さんは、さらりと言った。そんな一言に、みさきは体が熱くなるのを感じた。




「それじゃあ、来れたらで良いから来てね」




 空男さんは、そう言うと美咲に背を向けて歩いた。





「あっ、あの!」





 空男さんは、美咲の方を振り返った。美咲は、空男さんと目が会い、封筒を握り締めた。




「何だい?」




 美咲も、特に用もなく呼び止めてしまったため、うつむいてしまった。だが、言葉が見つかると空男さんと向き直った。




「絶対に行きます」




「うん、来るの楽しみにしているよ」




 そう言って、美咲に手を振った。美咲も降り返してくれた。


 そして、角を曲がったところで空男さんは呟いた。




「笑った顔なんて、めっちゃ可愛いじゃん」




 そんな独り言は、もちろん美咲には聞こえていなっかた。





「あっ、今日の夕日は綺麗だ・・・」




 美咲は、夕日を見ながら昨日の真琴の笑顔を思い出していた。


 




                        


                    ~続く~