前回は医療における意思表示についてブログを書きました。
今回は、財産管理等事務委任についてブログを書きます。
財産管理等事務委任契約とは、自分自身の財産管理を第3者へ委任する契約です。
この第3者には、恋人やパートナーも含まれます。
財産管理とは、主に金銭や預貯金の管理や入出金等のことをさします。
財産管理等委任契約では全ての財産の管理を委任する必要は無く、特定の金融機関の通帳やキャッシュカードを預け、恋人やパートナーに財産管理を委任することができます。
突然の不慮の事故や急な入院、身体が自由にならず自分自身で財産管理が出来ない状況となってしまった際に、恋人やパートナーに金融機関での振込や入出金等をお願いすることができます。
財産管理等委任事務契約を行っていると、恋人やパートナーは委任者の代理人として手続きを行うことができます。
逆に言うと、しっかりと財産管理等委任事務契約を行っていない状態で例え恋人やパートナーの頼みであったとしても『他人名義』の預貯金通帳やキャッシュカードを使って入出金等を行ってしまうと、他人のお金を動かしているということで最悪の場合には窃盗罪で逮捕される可能性もあります。
そのようにならないためにも、恋人やパートナーに委任する可能性がある方は契約書というしっかりとした書面での契約を行うことが必要でしょう。
財産管理等事務委任の内容や開始時期などは自由に決めることができます。
自分の持っている預貯金口座の一部のこの口座の管理を任せたい・・・
もし、急な入院や体が不自由になり自分で財産管理を行えなくなった時に初めて効力が発生するようにしたい・・・
それぞれご自身の状況で、依頼する相手(恋人やパートナー)と話し合った上で内容や開始時期の条件などを決めて契約書を作成することができます。
また、財産管理以外の役所の手続きや保険金の請求、介護や医療の契約など日常生活に関する事務もこの財産管理等事務委任契約の中で委任することができます。
預貯金等をはじめとした財産管理は、任意後見契約と同様の効果があります。
任意後見契約は本人の判断能力が低下(認知症など)の状態になり、家庭裁判所に任意後見監督人の申立てを行ってからしか効力は発生しません。
しかし、財産管理等事務委任契約の場合は、本人の判断能力がある状態でも契約の効果発生時期をしっかりと記載することで、効力を持たせることができます。
もし自分が不慮の事故にあってしまったら・・・
もし自分が突然倒れて病院に搬送されるようなことになってしまったら・・・
もし自分の身体が不自由になってしまったら・・・
このような時に備えて、恋人やパートナーと将来の対策としてお互いに財産管理等事務委任契約を締結しておくのは非常に良いことであると思います。
人間は今は元気でもある日突然脳卒中や心疾患で倒れてしまったり、不慮の事故や災害に巻き込まれるかもしれません。
『絶対に大丈夫』ということは無いのです。
口頭で「何かあった時はお願いね!」と依頼をしていても契約書などの書面で証明するものが無ければ、いくら口頭で依頼されていてもそれを証明することは難しいでしょう。
ここで弊所でお手伝いをさせて頂いた財産管理等事務委任のお話をさせて頂きます。
高齢のある方(ここではAさんとします)がお身内がいなくお独りで生活をされていました。
そのAさんのご近所には長年のご友人のBさんという方がいらっしゃり、Aさんが高齢で独り暮らしをされていたことを心配してAさんの生活のお手伝いをされていらっしゃいました。(普段のお買い物の代理やご飯のお世話など)
ある日BさんがいつものようにAさんの自宅に伺い家の鍵を開けると、なんとAさんが自宅の中で倒れられていたそうです。
Bさんは驚き慌てて隣人の方に声をかけて救急車を呼びAさんを病院へ搬送しました。
Aさんは病院に運ばれたものの、状態が非常に悪く自らの意思で動くこともままならず声を発するのも十分にできる状態ではありませんでした。
どうしていいかわからなかったBさんは病院でどうすれば良いか相談をしたところ
「あなたがお世話をされているなら、あなたが代わりに契約をしたり、お金のことに関してもキャッシュカードを預かってATMで入出金をすればいいのでは?」
このように言われたそうです。
これには非常に大きな問題があったのです。
①財産管理等事務委任の契約書も無く、何も代理権を与えられていないBさんが勝手にAさんの名前で契約行為を行うこと
②財産管理等事務委任の契約書も無い状態で、BさんがAさんのキャッシュカードを利用してお金を引き出せば良いと考えたこと
特に②に関しては前述しましたように、BさんがAさんのキャッシュカードを所持している理由を証明できなければ最悪の場合にはBさんは窃盗罪で逮捕される危険性もあるのです。
Bさんがこのような状況になったことを少しお知り合いの方に話されたようで、その話をお聞きになった方が「状況が状況だとしても、他人名義のキャッシュカードを使って入出金等をするのはまずいのではないか?」と思われ、一度相談をしてみた方が良いのではないか?ということで弊所をご紹介頂き、Bさんからご相談をお受けしました。
Bさんには現状のままであるとAさんに対する親切心で行った行為でも、法律的には他人が勝手に契約を締結することは法律的な問題が生じる可能性があること、最悪の場合Bさんが逮捕される可能性があること等をお伝えさせて頂きました。
それまではBさんは法律的なことは何も知らず、病院でアドバイスを受けた通りにすれば良いと思っていたと仰っていました。
私の説明に対しBさんはリスクについても十分に理解され、Aさんに財産管理等事務委任の契約書作成のお話をされ、Aさんはかつて法律に少し関わる分野もあるお仕事をされていた経験もあったようでBさんからの提案を理解され、弊所で財産管理等事務委任の契約書とAさんがお亡くなりになった後のことをBさんに依頼する死後事務委任契約書の作成を行わせて頂きました。
弊所で財産管理等事務委任契約書を作成させて頂いた後はBさんは堂々と契約書に基づきAさんの財産管理や事務委任を行うことが出来るようになりました。
今回のお話の中で病院の方からのアドバイスは法的にリスクのある内容でしたが、病院の職員さんは残念ながら法律を勉強したプロでは無いので仕方ない部分があったと思いますが、もしBさんに何かあった場合でも病院の職員さんが責任をとってくれることはありません・・・
財産管理等事務委任契約書はご自身でも作成することは可能ですが、公正証書で作成することも可能です。
※金融機関によっては私文書での契約書の場合は追加で身分証明書を提出することを求めらる場合もあるようですので、事前に金融機関に問い合わせをしておいた方が良い場合もあるようです。
財産管理等事務委任契約書を作成される場合は、契約書の作成だけにかかわらず契約書の内容についてもご相談頂きましたら行政書士がアドバイスをさせて頂きます。
恋人やパートナーとの将来を考えられる方はこれを機に財産管理等事務委任についてお二人で話し合って契約書の作成を検討されてみてはいかがでしょうか?
行政書士MK法務事務所
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