小学生の時にバレエのコンクールで賞を取った時、「やったー!」とうれしくなったのも一瞬のことで、心の底から「私ってすごい!」といった自己肯定感を感じていたわけではなかった。
バレエは「自分が本当にやりたい」ということではなく「親から押し付けられていた」からなのだろう。
いつの頃からか「親から押し付けられた価値観」を「自分が本当にやりたいこと」と錯覚していたのだとSは過去を振り返って私に語った。
就活をきっかけに自己を掘り下げ、いままでの人生に「自分」という主人公がいなかったことを悔やみ、そのように導いた母を心底憎んだ。
少し酔いが回り始めたS子は、憎い母に対して汚い言葉で罵り、そのあまりに汚い言葉に斜め左のテーブルにいたカップルが驚いてこちらを向いた。
「就活もやめて、大学も中退して、海外放浪の旅にでも出ようかな。」冗談とも本心とも聞こえるような気持ちを私に打ち明けるのだった。
「今までは、今まで。そんな自分に気づいたんだったら、就職を機に『自分が主人公になる』人生を歩み始めればいいんじゃない?」S子の苦しさも理解できていない私は無責任に言った。
「そんな急に、自分を変えることなんかできるのかなぁ~。」
心の整理がまだできていない様子のS子はお気に入りのグレープフルーツサワーを飲み干した。
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